異分野と異文化

秋分の日も過ぎて朝晩は肌寒く感じることも多くなりました。 皆さま、風邪などひかれてはいらっしゃらないでしょうか。

さて、ここ最近は、皆さまへ、より良いサービスや開発体験への理解を深めようと思い、そういった系統の資料を入手して読んだり、社内のチームから話を聞いたりといったことをしています。もちろん、これまで様々なお客さまからお聞かせいただいた、ご要望やご苦労といったものを、どのように体系化して、さらに製品を改善していくのかという日頃の活動の一環なのですが、私どもの場合は国際化の観点から、文化や言葉の違いを乗り越えて情報や目的を共有する必要性があります。

そういったなかで、偶然の成り行きだったのですが、昨年、弊社でユーザビリティの調査をしているSteven Clarkと会う機会がありました。Stevenは、元々はレドモンドのCLRチームに在籍し、基本クラス ライブラリのAPIのユーザビリティを指導していたのですが、いまは開発者や開発ツール全般の使用体験を考慮するチームのメンバーとなり英国のケンブリッジに在住しています。すでにいくつかの社内の成果をDr. Dobb'sやACMの学会誌などに発表している、その道の人ですので、私は入門者に近い形でOffice Communicator使っていろいろとアドバイスを受けています。先日、帳票に対する要件のような、いわゆる「日本での特殊事情」と考えられていることを話すと、意外にも共感してくれ、どのように調査をしていけば上手く説明できる可能性があるかといったガイダンスをくれたりします。国際化の範疇に括られていては上手く解決や説明ができなかった問題に対して、少し別な方向性が見えてきたりするので面白いものです。

彼に会うまでは、ユーザビリティやユーザー エクスペリエンスというと、なにかビジュアルなUIのことであったり、画面のデザインであったりといった固定観念が私にはありましたが、彼のリサーチの成果は、認知心理学や認知工学の要素をAPI設計に応用して評価するといったアプローチです。当人はコンピューター科学の博士号を持っていますが、自分自身でもこのキャリアは意外だったと私に話します。「日本やアジアの文化や、そこでのソフトウェア開発は私にはまったく分からないけれど」と話すなかで、こういった別な分野での応用や情報の共有が面白い成果を生み出すのかもしれません。