ユーザー インターフェイス: Windows を管理するウィンドウ

これまでにこのブログでは、 コンピューターのブート、画面の表示、プログラムの起動についてお話してきました。次は、グラフィカルユーザーインターフェイスの主な役割についての、かなり複雑なトピックを取り上げます。それは、ウィンドウの管理ということです。 Dave Matthews は、 Core User Experienceチームのプログラムマネージャーで、今回はWindows 7 に関わるいくつかのデータと考察を提供します。 --Steven

Windows 製品ラインの別名はシンプルに「ウィンドウ」です。ウィンドウは、関連する情報およびコントロールを画面上に整理する UI 概念です。このポストでは、この十分に確立されている UI 機能を更新する計画のバックグラウンドと「PM哲学」を取り上げます。

UI を整理するためにウィンドウを使用するという基本コンセプトは新しくありません。それは、 聞くところによると、40 年以上前に Stanford でグラフィカル ユーザー インターフェイスを使った初めての実験にさかのぼります。コンテンツを提示するのに役立つ方法であるため、それは結局今でも引き続き使用されており、ユーザーは画面のスペースの使用方法をコントロールできるのを好ましく思っています。「移動可能なウィンドウ」機能は、オペレーティング システムで絶対に必要だとは限りません。ほとんどの携帯電話やメディア センター タイプのデバイスでは、一度に 1 ページだけの UI を示します。ただし、その機能は、マルチタスキングまたは 2 つ以上のアプリケーションで作業する場合に役立ちます。Windows 2.0 は、移動し重ねられるウィンドウが可能になった初めてのリリースでした (Windows 2.0 では、タイルのように並べて配置できるだけで、重ねられませんでした)。この「並べて表示 vs オーバーラップ」論争では、双方に有名な提案者がいました。一方には Bill Gates、もう一方にはCharles Simonyi がいたのです。さらに、Windows にはマルチ ドキュメント インターフェイス(MDI) という固有の概念もあります。それにより、1 つのウィンドウ フレーム内に、複数のウィンドウを整理できます。これはある程度、Web ブラウザーにおいて普及しているタブ インターフェイスの前身といえます。

主題から逸れますが、初期の Windows プロジェクトで「並べて表示 vs オーバーラップ」議論に伴う初期の論争の一つは、画面の上部に 1 つのメニュー バーを持たせるか、または、各ウィンドウ (または、ドキュメントやアプリケーション) ごとにメニュー バーを持たせるかという問題でした。これについては当初大きな討論がありましたが、それは、画面の解像度が制限されていたので (VGA、640x480)、メニュー バーの冗長性はスペースの消費に関わる問題であったためです。今日の大きなスケール モニターでは、この冗長性は表示スペース以上の問題となっています。マウスを使ってUI 要素にアクセスできると、つまり視覚的に要素を識別できると、マウスの移動が著しく少なくて済むからです。次の図をご覧ください!

  
Windows 2.0 から Vista へ

私が注目している領域は、システムの「ウィンドウ管理」部分、特に画面上でのウィンドウの移動や整列に伴う機能です (これらはタスク バー、およびアルト タブのようなウィンドウ切り替え コントロールとは異なりますが、非常に関連があります)。一般に、ユーザーは、移動、サイズ変更、最大化、最小化が可能であるウィンドウを期待します。さらに、使用中のウィンドウを前面に配置しながら、各ウィンドウを自由に並べ、重ねたいと思っています。これらの変換およびサポート ツール (キャプション ボタン、サイズ変更バーなど) は、ユーザーが好きなように作業領域を並べ変えて整理するための基本機能を構成します。

このような機能領域を向上させるため、私たちは現行のシステムを注意深く見て、何が存在するのか、そして何が機能しているかを確認しています。これは、ソフトウェア メーカーによって市場でどのように使用されているか、そしてユーザーによってどのように使用され理解されているかを確認することです。

 
キャプションボタンは、最小化、最大化、および閉じるためのシンプルな方法です。サイズ変更可能なウィンドウは、 4 辺のどれからも調節可能です。

実際の使用方法に関するデータ

以前、タスク バーについてのポストで指摘しましたが、平均的なユーザーはセッション中に 6 から9 のウィンドウを開いています。しかし、顧客のデータを見ると、所定時間のほとんどの時間で実際に画面上に見えているのは 1 つまたは 2 つのウィンドウだけです。さまざまに開いたウィンドウ間を切り替えるのは一般的ですが、多くの場合、2、3 のウィンドウだけが同時に見えるようになっています。


Windows フィードバック回答者のデータ

私たちは製品プランニングの一環として、ユーザーがウィンドウを移動し、サイズを変更するためにどの程度時間とエネルギーを費やすかについて調査しました。この調査により、現行のシステムでは何が機能しているか、また何を向上できるのかが理解できます。

たとえば、1 つのウィンドウの作業領域を最適化し、かつ容易に別のウィンドウに切り替えられるので、最大化は広く使用されている機能であることが分っています。ユーザーはその概念に応え、それを理解しています。通常、ユーザーは 1 つのウィンドウに注目するので、最大化機能は非常によく使用されることになります。多くのアプリケーションで、ユーザーが画素のすべてを読み取みとりたいという要望があることを私たちは知っています (例えばスプレッドシートでは、見難い画素は欄外の行に表示されます)。この要望により、最大化を超える「全画面表示」機能が一般的になり、日常の生産性を上げています。

タスク バーについて最近投稿したのと同じ頃、Vista での最大化機能について耳にした問題点は、ウィンドウが最大化される場合、ウィンドウとタスク バーが暗くなるので、カスタマイズされたグラス カラーがあまり見えなくなってしまう、ということです (Vista では、グラス ウィンドウ カラーをカスタマイズできます。また、セッションの 29% で、カスタム カラーが設定されていました)。より暗い外観は、ウィンドウが特別な最大限の状態にあることを明確にするのに役立ちます。ウィンドウが最大化されているのに気付かなければ移動しようとしても何も起こらず、フラストレーションと混乱の原因になるので、この外観は重要です。Windows 7 においては、ウィンドウが最大化されている場合でも、カスタマイズされたカラーを示すことができるように、別のアプローチを考えています。

興味深いことに、ユーザーは一度に 1 つのウィンドウを使用している場合でも、必ずしもウィンドウを最大化していません。1 つの重要な理由は、ウィンドウをあまり広げ過ぎずにテキスト ドキュメントを読む方が、しばしば快適であるということだと思います。画面いっぱいに電子メールの文章を20 インチ以上表示してしまうような場合、最大化するという考えは、広いモニター上ではあまり有用ではありません。テキストを読むには、4 から 5 インチの幅の方が快適なものです。大きなデスクトップ モニターがより一般的になっていて、ワイド画面のモニターはラップトップでさえ人気があるので、この件は重要です。Windows にはこのような読書用拡大モードがないので、ユーザーは手動でできる限り縦を拡大し、幅をいくぶん広げることになります。これは、システムが現行のハードウェアでのシナリオ用に最適化されていないため、ドキュメントを読むような一般的タスクで、ウィンドウのサイズに関して余計な操作をしなくてはいけないという1つの例です。


分析データは、 ワイドモニターが標準になることを示唆しています

2 つのウィンドウを並べて表示するのも間違いなく共通のニーズです。そうする必要がある理由はさまざまで、2 つのドキュメントを対照する、1 つのドキュメントから別のドキュメトを参照する、1 つのドキュメントまたはフォルダーからもう 1 つにコピーするなどです。2 つのドキュメントを並べるには、2 つのドキュメントがそれぞれ画面のおおよそ半分になるよう配置して調整するために、マウスを何度も移動する必要があり、これは、ワードプロセッサのドキュメントを、ポータブルリーダーフォーマットの同じドキュメントと比較するなど、2 つのアプリケーションを使用する際にしばしば見られます。

マルチモニターを使用しているユーザーは、2 つ以上のウィンドウを一度に使用するケースのために最適化されているため、一般的にタスクの効率が向上します。たとえば、効率的に画面スペースを使用するために、簡単に各モニター上のウィンドウを最大化することができます。マルチタスクに関するMicrosoft Research のstudy により、マルチモニターを所有する参加者は、タスクバーを使用するよりも、ウィンドウ上を直接クリックしてウィンドウを切り替える場合が多いことが分かりました。切り替え先のウィンドウが既に見えているためと考えられます。さらに興味深いことに、マルチモニターを所有する参加者は、ウィンドウ間の切り替え回数が少なめでした。タスクの効率性からいうと、ベストなクリックとはクリックの数が減るということです。


MSR 調査 レポート

シングル モニター コンピューターは、マルチ モニター コンピターより一般的ですが、ウィンドウ管理機能は、一つのモニターで複数のウィンドウを表示するために最適化されていません。タスクバーのメニューには、上下に並べて表示、重ねて表示、および左右並べて表示の選択肢がありますが、それらはよく理解されておらず、広く使用されているようには思えません。そのため、多くのユーザーは 2 つのウィンドウを左右に並べて表示するときはいつでも、手動でウィンドウのサイズを変えて移動させています。

興味深いマルチウィンドウシナリオは、そのうちの1つのウィンドウがまさにデスクトップである場合です。デスクトップは今も、一般的に重要あるいは最新のファイル用の保存フォルダーとして使用されており、ユーザーはかなりしばしばデスクトップとエクスプローラ ウィンドウ、電子メール、またはドキュメント間をドラッグ アンド ドロップする必要があると考えられます。「デスクトップの表示」機能は、デスクトップへの迅速なアクセスを可能にしますが、使用するウィンドウも閉じてしまいます。つまり、元のウィンドウを探して開くか、デスクトップの表示機能は使用せずに手動ですべてのウィンドウを縮小するかのどちらかを行う必要があるということです。単純なタスクを完了するためにウィンドウを管理するときにユーザーが多くの時間や努力を費やすという、このようなシナリオを知るのはたいへん興味深いです。このようなエクスペリエンスは、複雑なシナリオが繰り返される場合、テレメトリーで観察されます。これらが一般的なエラーのためか、ユーザーがマルチ ステップ タスクを完了させようとしているためなのかを知るには、さらなる調査が必要です。

設計の進化

ウィンドウ管理システムで成功を収める設計を見つけるために、私たちはユーザーの生産性を最も上げるためにどちらの方向に進めばよいか、多くの方向性を調査します。過度のマルチ タスクから集中的なシングル アイテムにいたるまで、スケール化しつつ最も共通な使用法に対して最適化されているソリューションを探しています。多数の異なるウィンドウを使用する際に役立つ仮想デスクトップ (特にそれらのウィンドウが関連するセットにクラスター化されている場合)、または Visual Studio などの先進アプリケーションで見られるような効果的にスペースを配置するのに役立つドッキング パレットなどの既存のアプローチを考えています。可能にしようとしているシナリオ用に特別に作成される革新的なソリューションも考えています。

システムがサポートする必要のあるさまざまなアプリケーションについても考える必要があります。SDI (シングル ドキュメント インターフェイス) アプリケーションは、オペレーション システムにほとんど依存してウィンドウ管理機能を提供していますが、MDI (マルチ ドキュメント インターフェイス) アプリケーションでは、ウィンドウ管理コントロールのいくつかを自らが提供しています (タブ UI は MDI アプリケーションで最近人気が高まっています)。いくつかのアプリケーケーションでは、カスタム アプローチまたビヘービアを得るための、それ固有のウィンドウ サイズ変更コントロールやウィンドウ キャプション コントロールを提供しています。これらのすべてのアプリケーションは価値があり、システムに何らかの変更点をもたらす際には異なったアプリケーション スタイルを配慮する必要があります。

Window 7 での私たちのゴールは、一般的なアクティビティを行う際に必要なクリックの回数および厳密な動きを減らすことです。ユーザーからのデータとフィードバックに基づいて、設計での重要な考慮事項として多くのシナリオを取り上げています。私たちが話題にしているすべての設計と同様に重要なのは、共通の使用シナリオを最も重視し、もっとも広く一般的な使用パターンについて明確な決定をくだし、新しい「あいまいなニーズ」に対処し、私たちの「コントロールする」ことに関する考え方を確実に維持することです。トップに上がってきたシナリオのいくつかは次のとおりです。

  • 2つのウィンドウを最小の設定によって、すぐに効率的に表示する。
  • 縦は画面の最大、横は読むために快適な幅で簡単にドキュメントを表示する。
  • ウィンドウをデスクトップ上に迅速かつ容易に表示する。
  • 最も一般的なアクションでは必要な操作は最小限にする。最小限の厳密なマウス操作によって、迅速にウィンドウを最大化あるいは元に戻す。
  • マウス操作に代わるキーボードのショートカットが上級者向けにいつでも使用できる。
  • 便利で、すぐ理解でき、効率的なウィンドウ オプションが、さまざまなディスプレイ (小型ラップトップから30インチ以上の画面、さらにシングルモニターからマルチモニターまで) 対応している。
  • マウス、キーボード、トラックボール、ペン、またはタッチスクリーンなどのさまざまな入力方法を簡単に使用できる。
  • カスタマイズされたウィンドウの色は、最大化された時にも見分けられる。
  • ユーザーは全体にわたって「コントロールしている」と感じることができ、システムが迅速に反応することで結果的にユーザーは簡単に仕事を行っていると感じられる。

この最後のポイントは重要です。応答性とコントロールについてどう感じるかは、設計がユーザーによる実際の使用方法と一致しているかどうかを測るための、主要なテストだからです。私たちは、ユーザーがどのように反応するかを見るために、設計したものとモックアップをユーザビリティラボに運び入れテストします。ユーザーが楽しそうに、しかも簡単にタスクの実行に成功していたら、私たちは正しい方向に進んでいるのだと言えます。設計の段階においては、操作がとても自然に感じられ、操作のステップがユーザーの記憶に強く残ることを、最終的に目指しています。それは、ユーザーが使い慣れたツールをマスターできたと感じ、ユーザーがコンピューターを思い通りに動作させていると感じる、ということです。

このポストでは、ウィンドウ管理、および非常に基本的 UI の設計の進化に関して、いくつかの背景を取り上げました。私たちは皆さんからのフィードバックや反応を楽しみにしています。特に、Windows 7 ビルドを皆さんが手にされる時がさらに楽しみです。

- Dave