ソリューション提案の導入

完了

ソリューションの提案は、プロジェクトにおける次の論理的フェーズです。 このステージでは、通常、長期的な要件を計画するための詳細事項が十分に詰められていません。 ただし、概念実証や、いくつかの概念実証アプリケーションの作成を検討することは可能です。

ソリューションを検討する際には、既に導入されていて、今後も変更が行われないシステムやアプリがないかどうかを考慮するようにしてください。 また、回避策を考える必要がある制約事項や、排除できないレガシー システム、さらに、遵守しなければならない規制などが存在していないかどうかも確認する必要があります。

カスタマイズと拡張

プリセールス ステージでは、顧客の要求に応じて複数のカスタマイズや拡張を加えたソリューションを作成することができます。 ただし、カスタマイズや拡張機能が多いと、それらが技術的負債になる可能性があります。そうなった場合、後でその埋め合わせをしなければならなくなったり、それによって顧客の不満が生じることも少なくありません。 カスタマイズを行うと TCO が増加するため、このステージでは、前提条件を設定し、
"実質的コスト" を示したうえで、特定の要件を満たすための方法を顧客が合理的に選択できるように支援する準備があることを、明確に示すことが重要となります。 通常、非常に単純な (安価な) アプローチを説明すると、そのわかりやすさが顧客に評価されます。 カスタマイズの追加に関する決定プロセスについて、いくつかのルールを作成することもできます。 たとえば、構成に 3 日以上かかる機能がある場合や、コードの記述が必要な機能がある場合には、その機能について CTO の承認を得る必要があります。 このようなアプローチをとることで、顧客との信頼関係を強化することができます。

ソリューション アーキテクトは、顧客要件の文書化を主導する (または、少なくともそれに参加する) 場合があります。 この文書化は、プロセスの早期段階で開始する必要があります。 必要となるドキュメントの 1 つに、ソリューション ブループリントがあります。 ブループリントでは、ソリューションの仕様に応じて、そのソリューションのさまざまな側面を設計します。 たとえば、典型的な建設プロジェクトでは、建築物の電気系統、配管系統、荷重、およびその他のさまざまな側面に対応するブループリントが作成されます。 Dynamics 365 のソリューション アーキテクチャには、顧客に最適なソリューションを提供するうえで欠かせない、重要なブループリントのセットも含まれています。

ソリューション アーキテクトは、調査フェーズで取得した情報を処理し、一連のチャートやアーキテクチャ アサーションを用意しながら、ソリューション ブループリントの作成にかなりの時間を費やすことになります。 これらのチャートとアサーションの組み合わせによって、今後提供されるソリューションのブループリントが形成されます。

次の図に示すように、このブループリントには、顧客のニーズに関連するアーキテクチャを含める必要があります。

関連するアーキテクチャの種類の一覧 (プロセス、アプリケーション、データ、統合、インテリジェンス、セキュリティ、継続的な更新、およびプラットフォーム)。

このモジュールの残りの部分では、次のトピックについて説明します。

  • ソリューション コンポーネントを特定する

  • 概念実証を開発し、検証する

  • 必要となる可能性があるサードパーティ コンポーネントを特定する

  • ソリューションの強みと弱点を認識する

顧客の導入

このモジュールでは、Woodgrove Bank という顧客について紹介します。このレッスンに含まれている演習やディスカッションでは、この顧客を想定したうえで、顧客を支援する方法を考えていきます。

Woodgrove Bank は、米国に 14 のオフィスを構えるほか、イギリスとドイツにもオフィスを構えています。 Woodgrove Bank は、商業融資と投資に重点を置いた、大手グローバル金融サービス プロバイダーです。 管理ユーザーはオフィスで就業し、モバイルでの活動は行いません。 ただし、すべての中間層マネージャーについては、クライアントを使用して自宅オフィスや現地での業務を遂行できるようにする必要があります。 Woodgrove のチームは、複数のシステムが分離された現状に不便を感じています。そのため、それらのデータを接続するソリューションによって、財務上の成功と顧客満足度を促進できるようにすることを希望しています。 社内用の環境については、規制に関する懸案事項はそれほど多くありません。ただし、Woodgrove Bank の各チーム内には、それぞれ固有の担当職務があります。

次の表は、Woodgrove Bank の顧客対応チームについて説明したものです。

チーム 説明
ビジネス成長および資産管理 年間取引が 10 億ドル未満の当座預金を担当します。 ここで言う成長とは、会社の再投資に使用されるローンのことを指します。 これらの顧客は、同じアカウント管理者グループによって管理されます。顧客ごとに個別の管理者が割り当てられることはありません。
Fortune 500 このチームが担当する各顧客には、すべての銀行業務の基本連絡先として、シニア アカウント マネージャーが割り当てられます。 このチームに割り当てられた会社は、Fortune 500 から除外された場合でも、引き続きこのチームによって管理されることになります。
グループ ポートフォリオ管理 このチームは、共通の傘下に複数の組織を持つ会社について、取引先企業の親会社/子会社を管理します。
新規ビジネス開発 このチームは、主に新規ビジネスに向けたマーケティングを担当します。 取引先企業が見込みありと評価されて有効になると、その取引先企業は適切な管理チームへと受け渡されます。
公的機関/官公庁/高等教育 Woodgrove は、世界中のさまざまな国の政府機関や民間大学において、優先的に使用されている金融業者です。 このチームは、同行がサービスを提供している、一部の大口の非利益組織も担当しています。
消費者金融 Woodgrove では企業向けの商品に重点を置いているので、このチームは最も小規模なチームとなっています。 ただし、大口の消費者向けサービスもケース・バイ・ケースで提供されています。 このチームでは、外部の見込顧客に対しては営業を打っておらず、多くの場合は、企業顧客の経営幹部向けにサービスを提供しています。
リレーションシップ マネージャー このチームは、他の各チームのメンバーによって構成されています。これにより、取引先企業の担当チームが変更され、顧客とのやり取りの方法が変わった場合にも、一貫したエクスペリエンスが維持されるようになっています。 このチームは、ユーザーのベスト プラクティスの策定も担当しています。
エスカレーション コール センター 同行では、年中無休 24 時間対応のコール センターを運営しています。 シカゴとフランクフルトにそれぞれ 5 人体制のチーム (1 人のマネージャーと 4 人の顧客サービス担当者) を配置すると共に、マニラ (フィリピン) の委託コール センターに 2 つのチームを配置して、APAC 地域を昼夜シフト体制でカバーしています。

これらのチームに加えて、Woodgrove Bank には、銀行の全体的な運営を管理し、必要に応じて各チームを支援する、Cスイートの幹部陣が存在します。

Woodgrove Bank は、新しいシステムをパイロット フェーズで導入し、CEO が 4 か月後の年次総会 (AGM) で初期成果を発表できるようにしたいと希望しています。