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保護レベルの理解

ProtectionLevel プロパティは、ServiceContractAttribute クラス、OperationContractAttribute クラスなど、多くのクラスで使用されています。このプロパティは、メッセージの一部または全体を保護する方法を制御します。このトピックでは、Windows Communication Foundation (WCF) の機能と動作について説明します。

保護レベルの設定手順については、「方法 : ProtectionLevel プロパティを設定する」を参照してください。

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保護レベルは構成ではなく、コードでのみ設定できます。

基本

保護レベル機能には、次の基本的な原則が適用されます。

  • メッセージのどの部分の保護にも、3 つの基本レベルがあります。このプロパティは、必ず、ProtectionLevel 列挙値の 1 つに設定されます。以下に、これらの値を保護の弱いものから順に示します。

    • None

    • Sign。保護された部分はデジタル署名されます。これによって、保護されたメッセージ部分に対する改ざんが確実に検出されます。

    • EncryptAndSign。メッセージ部分は、署名される前に機密性を保証するために暗号化されます。

  • この機能を使用して、アプリケーション データ専用の保護要件を設定することができます。たとえば、WS-Addressing ヘッダーは、インフラストラクチャ データであるため、ProtectionLevel の影響を受けません。

  • セキュリティ モードが Transport に設定されている場合は、メッセージ全体がトランスポート メカニズムで保護されます。したがって、メッセージの異なる部分に別々の保護レベルを設定しても効果はありません。

  • ProtectionLevel を使用すると、開発者は、バインドで順守する必要のある最低レベルを設定できます。サービスの展開時に、構成内で指定されている実際のバインドは、最低レベルをサポートしている場合もあれば、サポートしていない場合もあります。たとえば、BasicHttpBinding クラスは既定の設定ではセキュリティを提供しません (提供するように設定することもできます)。そのため、None 以外に設定したコントラクトとこのバインドを使用すると、例外がスローされます。

  • サービスで、すべてのメッセージに対して最低限の ProtectionLevelSign に設定することが求められる場合、(WCF 以外の手法で作成された可能性のある) クライアントでは、すべてのメッセージを暗号化し、署名することができます (要求された最低レベルを満たします)。この場合、クライアントが最低レベル以上の処理を実行するため、WCF は例外をスローしません。ただし、WCF アプリケーション (サービスまたはクライアント) では、可能な場合でもメッセージ部分を過剰に保護することはなく、最低レベルが順守されることに注意してください。また、セキュリティ モードとして Transport を使用すると、トランスポートをより詳細なレベルで保護できないため、メッセージ ストリームを過剰に保護する可能性があることに注意してください。

  • ProtectionLevel を明示的に SignEncryptAndSign のいずれかに設定する場合、セキュリティを有効にしたバインドを使用する必要があります。使用しない場合は、例外がスローされます。

  • セキュリティを有効にしたバインドを選択し、コントラクト上のどこにも ProtectionLevel プロパティを設定しない場合は、すべてのアプリケーション データが暗号化および署名されます。

  • セキュリティを無効にしたバインド (たとえば、BasicHttpBinding クラスは既定でセキュリティが無効に設定されています) を選択し、ProtectionLevel を明示的に設定しない場合は、どのアプリケーション データも保護されません。

  • トランスポート レベルでセキュリティを適用するバインドを使用している場合、すべてのアプリケーション データは、トランスポートの機能に準じてセキュリティ保護されます。

  • メッセージ レベルでセキュリティを適用するバインドを使用している場合、アプリケーション データは、コントラクトに設定された保護レベルに準じてセキュリティ保護されます。保護レベルを指定しない場合、メッセージ内のすべてのアプリケーション データが暗号化および署名されます。

  • ProtectionLevel は、異なるスコープ レベルに設定することができます。スコープが関連付けられている階層構造については、次のセクションで説明します。

スコープ

ProtectionLevel を最上位の API に設定すると、その下位のすべての階層がそのレベルに設定されます。より下位の階層で ProtectionLevel を別の値に設定すると、それ以下の階層のすべての API が新しいレベルにリセットされます (それより上位の階層の API は、引き続き最上位での設定に従います)。階層を次に示します。同じレベルの属性は、同等です。

ServiceContractAttribute

      OperationContractAttribute

            FaultContractAttribute

            MessageContractAttribute

                     MessageHeaderAttribute

                     MessageBodyMemberAttribute

ProtectionLevel のプログラミング

階層内のいずれかの位置で ProtectionLevel をプログラムするには、属性の適用時にこのプロパティを適切な値に設定します。例については、「方法 : ProtectionLevel プロパティを設定する」を参照してください。

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フォールトおよびメッセージ コントラクトにプロパティを設定するには、これらの機能を理解する必要があります。詳細については、次のトピックを参照してください。、「方法 : ProtectionLevel プロパティを設定する」および「メッセージ コントラクトの使用」を参照してください。

WS-Addressing の依存関係

ServiceModel メタデータ ユーティリティ ツール (Svcutil.exe) を使用してクライアントを生成すると、ほとんどの場合、クライアント コントラクトとサービス コントラクトが同じになります。ただし、同じように見えるコントラクトによって、クライアントから例外がスローされる場合があります。これが発生するのは、バインディングが WS-Addressing 仕様をサポートせず、コントラクトで複数レベルの保護が指定されている場合です。たとえば、BasicHttpBinding クラスはこの仕様をサポートしておらず、また WS-Addressing をサポートしないカスタム バインディングが作成されている場合もあります。ProtectionLevel 機能は、WS-Addressing 仕様に依存して 1 つのコントラクトでさまざまな保護レベルを有効にします。バインディングが WS-Addressing 仕様をサポートしない場合は、すべてのレベルが同一の保護レベルに設定されます。コントラクトのすべてのスコープに対して有効な保護レベルは、コントラクトで使用されている最も強力な保護レベルに設定されます。

これにより、一見するとデバッグが困難な問題が発生する場合があります。複数のサービスに適合するメソッドを含むクライアント コントラクト (インターフェイス) を作成できます。つまり、同一のインターフェイスを使用して、多くのサービスと通信するクライアントを作成し、この 1 つのインターフェイスに、すべてのサービスに適合するメソッドを格納します。このまれなシナリオでは、特定のサービスに適合するメソッドだけを呼び出すように注意する必要があります。バインディングが BasicHttpBinding クラスの場合は、複数の保護レベルはサポートされません。ただし、クライアントに応答するサービスは、必要な保護レベルよりも低い保護レベルを使用してクライアントに応答する場合もあります。この場合、クライアントは、より高い保護レベルを求めているため例外をスローします。

この問題をコード例で示します。次の例は、サービスとクライアント コントラクトを示しています。バインディングが <basicHttpBinding> 要素であると想定します。したがって、コントラクトでのすべての操作に同一の保護レベルが割り当てられます。この同一の保護レベルは、すべての操作での最大保護レベルとして決定されます。

サービス コントラクトは次のとおりです。

<ServiceContract()> _
Public Interface IPurchaseOrder
    <OperationContract(ProtectionLevel := ProtectionLevel.Sign)> _
    Function Price() As Integer
End Interface
[ServiceContract()]
public interface IPurchaseOrder
{
    [OperationContract(ProtectionLevel = ProtectionLevel.Sign)]
    int Price();
}

次のコードは、クライアント コントラクト インターフェイスを示しています。このコードには、別のサービスで使用するための Tax メソッドが含まれることに注意してください。

<ServiceContract()> _
Public Interface IPurchaseOrder
    <OperationContract()> _
    Function Tax() As Integer

    <OperationContract(ProtectionLevel := ProtectionLevel.Sign)> _
    Function Price() As Integer
End Interface
[ServiceContract()]
public interface IPurchaseOrder
{
    [OperationContract()]
    int Tax();

    [OperationContract(ProtectionLevel = ProtectionLevel.Sign)]
    int Price();
}

クライアントが Price メソッドを呼び出し、サービスから応答を受け取ると、例外をスローします。例外をスローするのは、クライアントが ServiceContractAttributeProtectionLevel を指定していないため、Price メソッドを含むすべてのメソッドに既定値 (EncryptAndSign) を使用するからです。ただし、保護レベルが Sign に設定された 1 つのメソッドがサービス コントラクトで定義されているため、サービスは、Sign レベルを使用して値を返します。この場合、クライアントは、サービスからの応答を検証するときにエラーをスローします。

参照

処理手順

方法 : ProtectionLevel プロパティを設定する

リファレンス

ServiceContractAttribute
OperationContractAttribute
FaultContractAttribute
MessageContractAttribute
MessageHeaderAttribute
MessageBodyMemberAttribute
ProtectionLevel

概念

サービスのセキュリティ保護
コントラクトおよびサービスのエラーの指定と処理
メッセージ コントラクトの使用