1. はじめに

Windows 7 は、ユーザーエクスペリエンスやセキュリティの向上のため、革新的な機能が多数導入され、既存の機能も改善されています。同時に、全体的には高い互換性も実現しており、Windows XP や Windows Vista など、以前の Windows 用に作成されたアプリケーションの多くは、今までと同じように利用することができます。しかし、Windows Vista および Windows 7 では優れた新機能、高いセキュリティ、信頼性などを優先させたことで、互換性が保てない部分があることも確かです。

このドキュメントでは、互換性に関する既知の問題点について検証・回避・対応する方法を紹介します。

  • 1.1 アプリケーション互換性への Microsoft の取り組み
  • 1.2 アプリケーション互換性テクノロジ

1.1 アプリケーション互換性への Microsoft の取り組み

新しい OS を導入する際には、これまでのアプリケーションやハードウェアが使用できるかどうかが重要な決定要因の 1 つになります。Microsoft では、Windows 7 をリリースするにあたり、ユーザーや開発者が互換性問題の解決にかかる時間やコストを削減できるよう、さまざまなツールや情報、リソースを提供しています。

  • 問題回避のためのアプリケーション互換性テクノロジ

    Windows 7 では、既存のアプリケーションが動作するよう Windows 95 や Windows XP、Windows Vista など、これまでの OS のエミュレーション機能を用意しています。どの OS のエミュレータを使用してアプリケーションを実行するかは、各ユーザーが設定することもできますし、管理者が組織のコンピューターにまとめて設定するためのツールを使用することもできます。

    詳細は「1.2 アプリケーション互換性テクノロジ」を参照してください。

  • 検証ガイドの提供

    さまざまなソフトウェアや情報を開発者向けに提供することで、Windows 7 の早期採用を支援しています。

  • アプリケーション開発ガイドラインの提供

    Windows SDK や MSDN、Windows デベロッパー センターなどを通じ、アプリケーション開発ガイドラインを提供しています。また、互換性に関しては「Windows 互換性情報サイト」 において、アプリケーションの互換性テストを実施する際のノウハウや、アプリケーション開発者向けの情報などを公開しています。

  • 互換性の高いアプリケーションを認定

    Microsoft では、技術要件を満たしたアプリケーションを認定しています。このロゴ プログラムに合格することで、製品にロゴを付けることができます。これにより、他製品との差別化が図れ、互換性や信頼性、セキュリティなどの品質を顧客に提示することができます。デバイスやソフトウェアは「Compatible with Windows 7」ロゴを、PC は「Windows 7」ロゴを取得することができます。

    図 1 : Compatible wirh Windows 7 ロゴ

    図 1 : Compatible wirh Windows 7 ロゴ

  • OS 展開時の互換性問題の回避や軽減をサポート

    Windows 7 でのアプリケーションの互換性に関する検証やテストをスムーズにおこなえるよう、Application Compatibility Toolkit (ACT) を提供しています。ACT については、「5. Application Compatibility Toolkit」を参照してください。

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1.2 アプリケーション互換性テクノロジ

「アプリケーション互換性テクノロジ」とは、Windows のバージョンアップに伴い発生するアプリケーションの互換性問題を、回避したり、軽減したりするために開発されたテクノロジです。具体的には、以下のようなソリューションを提供しています。

  • 互換フィックス (Compatibility Fixes)

    アプリケーションが問題のある関数を呼び出している場合、以前の OS と互換性のある関数の呼び出しに置き換えて、アプリケーションが期待する結果を OS が返すようにします。たとえば、古いアプリケーションに対し、以前の OS のバージョン番号を返すことで、そのアプリケーションが正しく実行できるようにしたりします。

  • 互換モード (Compatibility Modes)

    特定の OS 環境をエミュレートするための互換フィックスの集まりです。たとえば、「Windows 95 互換モード」には、69 個の互換フィックスが含まれ、Windows 95 用に設計されたアプリケーションが Windows 7 上で動作できるようにします。

  • アプリケーション ヘルプ

    互換フィックスや互換モードが利用できない状況で、互換性のないアプリケーションを実行・インストールしようとした時に、表示されるヘルプメッセージです。このヘルプメッセージダイアログで、アプリケーションの実行を許可もしくは、禁止することができます。また、これらのソリューションをより簡単に適用するためのツールも提供されています。

    互換フィックスや互換モードのなかでよく使われるものについては、プログラムのプロパティ ダイアログを通じて比較的容易に設定・変更することができます。

  • 「互換性」タブ

    プログラムのプロパティで、[互換性] タブをクリックすると、アプリケーションの実行環境を変更することができます。この設定はユーザーが各コンピューターで操作することができるため、手軽に設定することができます。

    図 2 : 互換性タブ
    図 2 : 互換性タブ

  • 「互換モード」

    「互換性」タブの中で互換モードを指定し、特定の OS 環境をエミュレートできます。互換モードは、互換性フィックスの集合体であるため、OS を選択すると、内部的には複数の互換性フィックスが適用されることになります。

  • 「管理者としてこのプログラムを実行する」

    Windows 7 では、既定でアプリケーションは標準ユーザーで実行されます。管理者権限が必要なアプリケーションは、このオプションを有効にすることで、常に Administrators 権限で実行することができます。

    図 3 : 管理者として実行
    図 3 : 管理者として実行

  • Compatibility Administrator ツール

    組織内の多数のコンピューターで、同じアプリケーションを動作させたい場合、各コンピューターで「互換性」タブを使用して同じ設定をおこなうのは手間がかかります。また、互換モードは、いくつもの互換性フィックスの組み合わせであるため、実際はアプリケーションに必要ないものまで適用している可能性もあります。

    そこで、Application Compatibility Toolkit に含まれる Compatibility Administrator ツールを使用すると、アプリケーションに必要な互換性フィックスの組み合わせを 1 つずつ定義することができるので、互換モードを使用するよりも、細やかな設定をすることができます。また、その組み合わせをデータベースとして保存しておいて、組織内のすべてのコンピューターに適用することも簡単にできます。

    Compatibility Administrator の使用方法は、「5.2 Compatibility Administrator の利用」を参照してください。

    図 4 : Compatibility Administrator
    図 4 : Compatibility Administrator

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