電子情報開示の管理

最終更新日: 2010年10月7日

適用対象: SharePoint Server 2010

この記事の内容
すべての場所での電子情報開示
電子情報開示プログラミング モデル
保留レポート
電子情報開示の検索
保留コンテンツを非保留コンテンツから分離する

電子情報開示 (eDiscovery) は、企業が特定の裁判事件に関連する文書を検索、保持、および保管する過程です。これは、保留リスト機能と呼ばれることもあります。Microsoft SharePoint Server 2010 では、電子情報開示をどのサイト上でもサイト機能としてアクティブにすることができます。サイト コレクション全体で使用される電子情報開示のために保留するアイテムを追加するときに、電子情報開示機能を使用します。また、この機能を、保留リストを管理し、複数のサイト コレクションに関わるリポジトリで使用されるコンテンツを検索するために使用することができます。検索クエリを指定して、保留リストに追加するすべてのアイテムをスケジュール設定するか、それぞれのアイテムを保留リストに個別に追加することができます。

すべての場所での電子情報開示

いくつかの裁判事件ではさまざまな場所での検索機能が必要となりますが、レコード センターは長期的なアーカイブではありません。結果として、すべての重要な文書を保存するためにレコード センターを使用する場合でも、グループ作業領域のためにユーザー設定サイト テンプレートを使用することができます。そして、グループ作業領域で電子情報開示を使用することができます。複数の場所で複数のソリューションを使用してレコードを管理する場合、企業のどこからでもレコードを検索できる電子情報開示ソリューション、つまり "すべての場所での電子情報開示" が必要になります。すべての場所での電子情報開示は、内部保留リスト インフラストラクチャ機能によって可能になります。

内部保留リスト インフラストラクチャ機能は、すべての SharePoint Server 2010 サイトで、既定でアクティブ化されています。アクティブ化されると、サイト上のすべての機能に対して、サイト内のアイテムのために保留状態にされる準備が行われます。以下のアイテムは、保留リストに関連する特定のアクションを行うことができます。

  • 検索およびプロセス ジョブは、保留リストにアイテムを追加することができます。

  • 保留の解除ジョブは、保留リストからアイテムを削除することができます。

  • アイテムに関連する保留リスト データを参照して、保留リストからアイテムを追加あるいは削除することができます。

  • 保留リスト インフラストラクチャ機能は、既定ですべての場所で有効なため、サブ Web の Hold 機能をアクティブ化せずに、サイト コレクション全体を検索して、保留された結果を挿入できます。

  • Hold 機能は、その機能が有効な Web で、保留リストを定義および管理できるようにします。

電子情報開示プログラミング モデル

ほとんどの電子情報開示開発のために使用される API は、Microsoft.Office.RecordsManagement.Holds 名前空間にあります。

保留レポート

保留レポートは、Microsoft.Office.RecordsManagement.Reporting 名前空間のクラスとメンバーによって作成および管理されます。保留リスト Report オブジェクトは、新しいデータと変更されたデータを示します。それぞれの保留リストは複数のレポートに関連付けられるため、マルチサイト コレクション リポジトリ内のサイト コレクションごとに 1 つのレポートがあります。多くのアイテムが保留されている場合、レポートを複数の要素に分割する必要があります。

コピー先の保留レポートには、コピー元で実行された検索の結果が含まれます。search and send to another site 操作がタイマー ジョブによって処理されると、その操作は、Web サービスを呼び出して、それが実行したクエリについてのデータ (検索したサイト、実行したクエリ、クエリが実行された日付など) を渡します。対外向け保留リスト機能は、サイト レベルで機能します。これは、ユーザーにサイト コレクション (SPSiteCollection オブジェクト) 内の複数の階層的な保留リストを作成できるようにします。リストが作成された後で、この機能は、サイトの親チェーンのすべての保留リストからデータを取得します。

選択された保留リストに内容がない場合も、保留リスト Report オブジェクトは生成されます。レポートに内容が含まれない場合、SharePoint Server 2010 は、ReportEmptyException の例外をスローします。

電子情報開示の検索

電子情報開示シナリオでは、日付などのリスト アイテム プロパティに基づく検索が一般的です。たとえば、特定の日付の前に契約されたすべての契約書を検索したい場合があります。さらに、SharePoint Server 2010 でのコンテンツ配布シナリオは、コンテンツがそれほど集約的でなく分散している場合もサポートされます。この場合は、電子情報開示検索のための的確なクエリと範囲の指定が、より重要になります。電子情報開示の検索は、範囲、規模の調整、拡張性、クエリ再利用、複数のサイト コレクションにわたる検索などの機能に対応しています。以下のことを行えます。

  • 特定のサイトに対して電子情報開示検索を範囲設定する。

  • 対象への規模調整: 10,000 のアイテム検索結果を保留する。

  • 電子情報開示検索を実行するために、FAST などの、SharePoint Server 検索以外の検索エンジンを使用する。

  • 特定の保留リストのために実行される検索クエリのリストにアクセスする。

  • 読みやすいクエリ。クエリは、人間が直接読むことができる形式であり、簡単に再現できます。

検索は、複数のサイト コレクションにわたることがあります。これには、検索に含まれるすべてのサイト コレクションの保留リストから 1 つのリストを定義する機能、保留リストに複数のサイト コレクションにわたる検索結果を追加する機能、マルチサイト コレクション リポジトリ内の 1 つのサイト コレクションに検索範囲を指定する機能が含まれます。

保留コンテンツを非保留コンテンツから分離する

電子情報開示および保留リストには、保留コンテンツと保留されないコンテンツを分離する機能が含まれます。レコード センターに検索結果をコピーして、適切な場所にルーティングして、その他のレコードとともに保存することができます。また、レコード センターに検索結果をコピーして、それらを既存のレコードとは分離して保存するように機能を設定することもできます。

保留されないコンテンツから保留コンテンツを分離するために、電子情報開示専用の、個別のレコード センターを設定することができます。あるいは、受け取った保留リストのプロパティを確認して、次にそれらをプロパティ値に基づいて特別なライブラリにルーティングする、カスタム ルーターを作成することができます。

電子情報開示専用の個別のレコード センターを作成することで、保留コンテンツを企業のレコードから適切に分離できますが、この場合、コンテンツは、その保留に基づいて特別な場所にルーティングはされません。さらに、この方法では、分離するプロパティのすべての種類のために個別のレコード センターを必要とするという短所もあります。

マルチサイト コレクション リポジトリ

一般的なインフラストラクチャ機能として、SharePoint Server 2010 には、複数のサイト コレクションを購読としてグループ化する方法が含まれます。電子情報開示に関して、購読は、グループ化されたサイト コレクションのほとんどの要件を満たしますが、すべての要件を満たすことはできません。このため、購読と共通の機能を持ちつつ、電子情報開示が必要とする固有の機能を提供する、マルチサイト コレクション リポジトリと呼ばれる購読のサブタイプが作られました。

マルチサイト コレクション リポジトリには、サイト コレクションを列挙するための API、マルチサイト コレクション リポジトリ全体の設定をするためのサイト、複数のグループ間で共有される分割可能なサービスにグループ ID を渡す方法、マルチサイト コレクション リポジトリと (ホストされる環境など) その他の理由によりグループ化された複数のサイト コレクションを区別する方法が含まれます。

[Web 購読の設定] ページには、現在の購読のための保留と電子情報開示を設定するページである [検出と保留リスト設定] へのリンクが含まれます。電子情報開示をサポートするために、ドキュメントとレコード センターが複数のサイト コレクションにわたる場合は、単一のリポジトリにすべてのサイト コレクションをグループ化します。すべてのサイト コレクションを単一のリポジトリにまとめることで、1 つの集約的な保留リスト、1 つのレポート ライブラリ、購読全体のための検索ページを使用できます。また以下のことを指定することができます。

  • 購読全体を検索するか

  • マスター保留リストがあるサイト コレクション

  • 検索のプレビュー表示をするための、登録済み検索サービスの範囲

サイトのグループをマルチサイト コレクション リポジトリとして割り当て、ハブの保留リストを有効にすると、マルチサイト コレクション リポジトリの設定は完了です。

マルチサイト コレクション リポジトリのために電子情報開示を拡張する

複数のサイトにわたる検索と保留リスト操作をサポートするように、電子情報開示を拡張することができます。すべての使用可能なサイト コレクションを検索し、その範囲に対してクエリを実行し、複数のサイト コレクション範囲からすべての検索結果を保留するように指定することができます。

複数のサイト コレクションを対象にするために、SharePoint Server 2010 は、マルチサイト コレクション リポジトリのそれぞれのサイト コレクションに、非同期作業項目を作成し、次にこれらの作業項目に検索クエリと保留リストを渡します。それぞれのサイト コレクションが個別に保留リスト要求を処理して、範囲内のそれぞれのサイト コレクションに対する結果を含む個別のメール メッセージを送信します。

レポート アーキテクチャも、同様に機能します。それぞれのサイト コレクションが、そのサイト コレクションで保留されているアイテムについて Report オブジェクトを生成します。これらのレポートは、中央ハブの保留レポートのコレクションにそれぞれ保存されます。

マルチサイト コレクション リポジトリでの電子情報開示検索を有効にするために、すべてのサイトで、それがマルチサイト コレクションの一部であるかどうかが認識されます。さらに、マルチサイト コレクション リポジトリ内の保留ページの検索と追加のそれぞれで、その中のすべてのサイト コレクションのリストと、その中のすべての保留リストが認識され、マルチサイト コレクション リポジトリでの結果プレビューをそれらに制限することができます。

マルチサイト コレクション リポジトリでの検索

前述のように、SharePoint Server 2010 は、サイト コレクション管理者だけがアクセスできるように、[検索と保留リストへの追加] ページに制限をすることができます。範囲が複数のサイト コレクションに拡張されたとき、このレベルのアクセス制御は不十分です。あるサイト コレクションの管理者は、別のサイト コレクションのすべてのコンテンツを表示することができません。テナント管理者がマルチサイト コレクション リポジトリで検索を有効にするように明示的に選択した場合は、権限の昇格は適切です。しかし、SharePoint Server 2010 は、マルチサイト コレクション リポジトリの電子情報開示を有効にしようとするユーザーに、マスター保留リストを持つ、そのサイトのすべてのサイト コレクション管理者が、購読のすべてのアイテムにアクセスできることを警告します。

関連項目

概念

レコードと電子情報開示の管理

情報管理ポリシーの管理