メタデータを管理する

最終更新日: 2011年4月18日

適用対象: SharePoint Server 2010

この記事の内容
管理されたメタデータの概要
管理されたメタデータの使用
管理されたメタデータを使用する利点

管理されたメタデータは、Microsoft SharePoint Server 2010 で定義し、アイテムの属性として使用できる集中管理される用語の階層コレクションです。

ここでは、管理されたメタデータの中核となる概念を説明した後で、管理されたメタデータを使用する方法を説明します。最後のセクションでは、管理されたメタデータを SharePoint Server 2010 ソリューションに組み込むことによって得られる利点について説明します。このトピックには、以下のセクションが含まれています。

  • 管理されたメタデータの概要

  • 管理されたメタデータの使用

  • 管理されたメタデータを使用する利点

管理されたメタデータの概要

ここでは、管理されたメタデータで使用されている複数の主要な概念について説明します。この概念は、開発者がカスタムの管理されたメタデータ ソリューションを作成するときに作成し、管理するオブジェクトの基礎となります。

用語と用語セット

用語は、SharePoint Server 2010 のアイテムと関連付けることができる単語または語句です。用語セットは、関連する用語のコレクションです。SharePoint Server 2010 列には特定の用語セットに含まれる用語を入れる必要があることを指定できます。管理されたメタデータは、用語と用語セットは列とは別に作成し、管理できることを示す方法です。

ローカル用語セットは、サイト コレクションのコンテキスト内で作成されます。たとえば、列をドキュメント ライブラリのリストに追加して、その列をバインドするための新しい用語セットを作成する場合、新しい用語セットは、そのドキュメント ライブラリを含んでいるサイト コレクションに対してローカルです。

グローバル用語セットは、サイト コレクションのコンテキストの外側で作成されます。たとえば、用語ストアの管理者は、Human Resources という名前の用語セット グループを作成し、その用語セット グループを管理する担当者を指名できます。グループの管理者は、役職、支払等級など、Human Resources に関連する用語セットを Human Resources 用語セット グループに作成します。

ユーザーには、グローバル用語セットと、ユーザーのサイト コレクションに対してローカルである用語セットだけが表示されます。

たとえば、会社で RACI モデルを採用したとします。このモデルでは、作成する各ドキュメントに、そのドキュメントに関して Responsible (責任がある)、Accountable (説明責任がある)、Consulted (協議先)、および Informed (内容を通知される) を担当する担当者のリストを追加する必要があります。

これを実装するには、以下の手順を実行します。

  1. 各担当者の名前に基づいて用語を定義します。

  2. 定義した用語を RACI-trained people という名前のグローバル用語セットにグループ化します。

  3. ResponsibleAccountableConsulted、および Informed の 4 つの新しい列を作成します。

  4. 各列の値は、RACI-trained people 用語セットから取り込む必要があることを指定します。

  5. これらの 4 つの列をドキュメントを表すコンテンツ タイプに関連付けます。

この例では、ドキュメントを作成し、SharePoint Server 2010 にアップロードするたびに、ユーザーは、4 つの各ロールについてドキュメントに関連付けられている 1 人以上の担当者を選択する必要があります。新しい従業員を採用した場合、新しい用語を RACI-trained people 用語セットに追加して、その用語が 4 つの列に有効な値として使用できるようにします。

管理された用語、エンタープライズ キーワード、および用語ストア

用語は次の 2 種類に分類できます。

  • 管理された用語。通常は、定義済みであり、適切なアクセス許可を持つユーザーだけが作成できます。多くの場合、階層構造で整理されています。

  • エンタープライズ キーワード。SharePoint Server 2010 のアイテムに追加されている単語または語句です。すべてのエンタープライズ キーワードは、キーワード セットと呼ばれる非階層構造の 1 つの用語セットの一部です。

管理された用語とエンタープライズ キーワードは、使用方法が異なります。詳細については、後の「用語の使用」セクションを参照してください。

注意

ここでは、管理された用語を指すときに文脈上その意味が明らかな場合は、"管理された" という語句を省略している場合があります。

管理された用語とエンタープライズ キーワードは、用語ストアと呼ばれるデータベースに格納されます。

管理されたメタデータの使用

以降のセクションでは、用語の作成方法と使用方法について説明します。

用語の作成

SharePoint Server 2010 には、用語セットを作成し、管理するための用語ストアの管理ツールが用意されています。適切なアクセス許可がある場合は、用語ストアの管理ツールを使用して、以下の作業を行うことができます。

  • 用語セットを作成または削除する。

  • 用語を追加、変更、または削除する。

  • 用語セット内の管理された用語を階層構造で整理する。

  • 類義語を定義する。

  • 用語をインポートする。

  • エンタープライズ キーワードを用語セットに移動して、管理された用語にする。

例:

すべてのドキュメントに RACI 規則を適用するには、まず用語ストアの管理ツールを使用して、いずれかの RACI ロールを担当する可能性がある個人全員を表す用語セットを定義します。次に、同じツールを使用して、用語セットに各個人の用語を追加します。次の用語セットと用語を定義します。

  • RACI 対応の従業員 (用語セット)。

    • Anna Misiec

    • Ben Miller

    • Eli Bowen

    • Eran Shtiegman

    • Eric Gruber

    • Erik Rucker

    • Erlingur Jonsson

    • Eugene Zabokritski

    • Eva Corets

    • Florence Flipo

    • Fred Vidul

    • Gerwald Oberleitner

    • Kathie Flood

    • Manuel Oliveira

    • Mu Han

    • Sunil Uppal

名前が多くなりすぎて、この用語セットは使いにくくなっています。レポート構造に基づいて用語セットを整理し直すことにします。新しい用語セットと用語は、次のような構造になります。

  • RACI 対応の従業員 (用語セット)。

    • Eugene Zabokritski

      • Anna Misiec

      • Ben Miller

      • Eric Gruber

      • Fred Vidul

      • Gerwald Oberleitner

      • Manuel Oliveira

      • Sunil Uppal

    • Florence Flipo

      • Eli Bowen

      • Eran Shtiegman

      • Erik Rucker

      • Erlingur Jonsson

      • Eva Corets

      • Kathie Flood

    • Mu Han

用語の使用

列は、SharePoint Server 2010 のアイテムに関する情報を格納するリスト内の場所です。列を定義するときに、列の名前を指定し、列の種類と列の種類に応じた追加情報を指定します。

SharePoint Server 2010 には、管理されたメタデータという名前の新しい列の種類が導入されています。管理されたメタデータ列を作成するときは、列の値の取り込み元となる用語セットを指定します。ユーザーがリスト アイテム (ドキュメントなど) の情報を入力するときに、その情報に有効な値が用語セットに含まれるようにする場合は、管理されたメタデータ列を使用します。新しいコンテンツ タイプを作成するか、既存のコンテンツ タイプを変更して、管理されたメタデータ列をコンテンツ タイプに追加します。

例:

すべてのドキュメントでは、Responsible (責任がある)、Accountable (説明責任がある)、Consulted (協議先)、および Informed (内容を通知される) を担当する担当者を識別する必要があるので、これらの各属性の列を作成します。Responsible という名前のサイト列を作成します。列の種類として [管理されたメタデータ] を選択し、Responsible 列に値を提供する用語セット [RACI-trained people] を選択し、この列には単一値だけを格納できることを示します。次に、表 1 のガイドラインを使用して残りの 3 つの列を作成します。

表 1. 列のガイドライン

列の名前

用語セット

複数の値を受け入れるかどうか

Accountable

RACI-trained people

いいえ

Consulted

RACI-trained people

はい

Informed

RACI-trained people

はい

列を作成した後、RACI の担当者を指定する必要があるドキュメントを表す新しいコンテンツ タイプを作成します。新しいコンテンツ タイプを作成し、「RACI document」という名前を付け、その親コンテンツ タイプとして [ドキュメント] を選択します。RACI document コンテンツ タイプを変更し、そのコンテンツ タイプに ResponsibleAccountableConsulted、および Informed 列を追加します。

最後に、共有ドキュメント ライブラリを変更し、ライブラリで使用可能なコンテンツ タイプのセットに RACI document を追加します。

用語の入力

ユーザーは、新しい SharePoint Server 2010 アイテムを作成またはアップロードするときに、そのアイテムが値を必要とする列を持つ種類の場合は、値を指定する必要があります。列が管理されたメタデータ列の場合、管理されたメタデータ コントロールが表示され、ユーザーはこのコントロールを操作して値を入力します。

管理されたメタデータ コントロールでは、値を入力するか、列に関連付けられている用語セットの階層構造を移動することによって値を選択できます。ユーザーが値の入力を開始すると、関連付けられた用語セットに存在する、ユーザーが入力した文字で始まるすべての用語が表示されます。用語セットの名前と階層内での用語の位置が用語と共に表示されます。

列の定義で複数の値が許可されている場合、ユーザーは、複数の用語を選択できます。用語セットと列の定義の両方で、新しい用語の追加が許可されている場合、ユーザーは、新しい用語を作成し、その用語を用語セットの階層の適切な場所に挿入できます。

例:

ユーザーは新しい RACI ドキュメントをアップロードする場合、アップロードするドキュメントを指定し、ResponsibleAccountableConsulted、および Informed 列に値を入力する必要があります。

[Responsible] フィールドに、担当者の用語セット内の用語階層を表示し、[Florence Flipo] を展開して [Kathie Flood] を選択します。

説明責任がある担当者のフル ネームを思い出すことができません。説明責任がある担当者の下の名前は Eric または Erik で、報告先は Eugene Zabokritski ですが、彼の名字を思い出すことができません。ここで、「Er」と入力すると、次の用語がオプションとして表示されます。

  • Eran Shtiegman [people: Florence Flipo]

  • Eric Gruber [people: Eugene Zabokritski]

  • Erik Rucker [people: Florence Flipo]

  • Erlingur Jonsson [people: Florence Flipo]

ユーザーは [Eric Gruber] を選択します。

[Consulted] フィールドに、「Fred Vidul; Sunil Uppal」と入力します。

[Informed] フィールドで、用語セットの階層を移動し、[Eugene Zabokritski]、[Florence Flipo]、および [Mu Han] を選択します。

エンタープライズ キーワードの入力

SharePoint Server 2010 には、エンタープライズ キーワードという名前の定義済み列が用意されています。この列はコンテンツ タイプに追加できます。値を [エンタープライズ キーワード] 列に追加するときには、エンタープライズ キーワード コントロールが表示され、ユーザーはこのコントロールを操作して値を入力します。エンタープライズ キーワード コントロールの動作は、管理されたメタデータ コントロールの動作に似ています。ただし、エンタープライズ キーワード コントロールでは、エンタープライズ キーワードと管理された用語を選択できます。

ユーザーが値の入力を開始すると、グローバル用語セットと、ユーザーのサイト コレクションに対してローカルである用語セットに存在する、ユーザーが入力した文字で始まる用語が表示されます。用語が属する用語セットと、その階層内での用語の位置も表示されます。通常は、新しいエンタープライズ キーワードを入力するためのオプションがあります。新しいエンタープライズ キーワードを入力すると、そのエンタープライズ キーワードはキーワード セットに追加されます。

[エンタープライズ キーワード] 列では、既定で複数の値が許可されています。

例:

ユーザーは、新しい RACI ドキュメントを作成し、ResponsibleAccountableConsulted、および Informed 列に値を指定しました。ただし、このドキュメントの作業には、2 人の外部コンサルタントも参加していて、コンサルタントの名前をドキュメントに関連付け、そのコンサルタントの名前を検索したときにドキュメントを見つけることができるようにする必要があります。コンサルタントは、担当者の用語セットのメンバーではないので、ResponsibleAccountableConsultedInformed のいずれかの列に追加することはできません。ユーザーは RACI document コンテンツ タイプに [エンタープライズ キーワード] 列があることに気が付き、コンサルタントの名前をエンタープライズ キーワードとして追加することにしました。

1 人目のコンサルタントの名前 Sunil Kasturi をエンタープライズ キーワードのフィールドに入力し始めます。「Sunil」と入力したところで、次のオプションが表示されます。

  • Sunil Kasturi [エンタープライズ キーワード]

  • Sunil Uppal [people: Eugene Zabokritski]

  • 新規作成

このコンサルタントのエンタープライズ キーワードは既に存在するので、その名前を選択します。

2 人目のコンサルタントの名前 Jan Kotas をエンタープライズ キーワードとして追加するために、「Jan」と入力します。表示されたオプションは [新規作成] だけです。[新規作成] を選択し、エンタープライズ キーワード Jan Kota を作成します。作成したキーワードは、[エンタープライズ キーワード] 列とキーワード セットに追加されます。

管理されたメタデータを使用する利点

このセクションでは、管理されたメタデータを使用する利点について説明します。

用語の一貫性の向上

管理されたメタデータは、用語の使用の一貫性、および SharePoint Server 2010 のアイテムに追加されるエンタープライズ キーワードの使用の一貫性の向上に役立ちます。用語を事前に定義したり、権限のあるユーザーだけが新しい用語を追加できるように設定できます。また、ユーザーがエンタープライズ キーワードをアイテムに追加できないようにしたり、既存のエンタープライズ キーワードを使用するようにユーザーに指示できます。管理されたメタデータでは、ユーザーが値を選択できる正しい用語のリストだけを表示することで正確性を向上できます。エンタープライズ キーワードは管理されたメタデータの一種でもあるので、ユーザーがアイテムに適用するエンタープライズ キーワードの一貫性も向上できます。

使用されるメタデータの一貫性が向上するので、メタデータの正確性に関する信頼も向上します。メタデータを使用して、部門属性の値に基づいてレコード センター内の複数の異なるファイルにドキュメントを配置するなどのビジネス プロセスを自動化するときに、メタデータは権限のあるユーザーが作成し、部門属性の値は必ず有効な値のうちの 1 つであることを確信できます。

検索結果の向上

アイテムの属性に一貫性がある場合、簡易検索の結果をより関連性の高い結果にすることができます。

ユーザーが管理された用語とエンタープライズ キーワードをアイテムに適用するとき、既に使用されている用語に誘導されます。場合によっては、ユーザーは新しい値を入力できないこともあります。ユーザーは用語の特定のセットに焦点を合わせるので、(類義語ではなく) その用語セットに含まれる用語がアイテムに適用される可能性が高くなります。このため、管理された用語またはエンタープライズ キーワードを検索すると、より関連性の高い結果を得られる可能性が高くなります。

動的

前のバージョンの SharePoint Server 2010 では、属性の値を値セットのいずれかの値に制限するには、種類が "選択肢" である列を作成し、有効な値のリストを指定していました。新しい値を選択肢に追加する場合は、同じ値セットを使用するすべての列を変更する必要がありました。

SharePoint Server 2010 では管理されたメタデータを使用することによって、有効な値のセットと、有効な値のセットに含まれる値を使用する必要がある列を分離できるようになりました。新しい値を追加する必要があるときは、用語を用語セットに追加すれば、その用語セットにマップされているすべての列は更新された選択肢のセットを使用するようになります。

用語を使用すれば、ビジネスが変化しても SharePoint Server 2010 のアイテムとビジネスの同期を維持できます。たとえば、会社の新製品に、開発の早い段階からコード ネームがあり、正式名称が製品発売直前に決定したとします。このコード名を用語として "product" 用語セットに追加していて、ユーザーはその用語を使用して製品に関するすべてのドキュメントを見つけていました。製品名が変更されたときに、その用語を編集して名前を製品の正式名称に変更しました。その用語は同じアイテムに引き続き適用されていますが、その名前は更新されています。

関連項目

タスク

[方法] コンテンツ タイプ シンジケートのカスタマイズ

概念

メタデータおよび分類プログラミング モデル

管理されたメタデータ フィールド値に対してクエリを実行する

サンプル: コンテンツ タイプに基づくメタデータ

サンプル: 管理されたメタデータ依存関係を管理する