テレフォニーの概念とコンポーネントの概要

 

適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1, Exchange Server 2007

トピックの最終更新日: 2007-11-14

ネットワーク上への Microsoft Exchange Server 2007 ユニファイド メッセージング (UM) を計画および展開する場合は、ユニファイド メッセージングとテレフォニー ネットワークに関する理解と知識を深める必要があります。ここでは、テレフォニー インフラストラクチャの概念とコンポーネントの概要について説明し、Exchange 2007 ユニファイド メッセージングを実行するサーバーを計画および展開するためのヒントを示します。

概要

以前のバージョンの Microsoft Exchange では、Exchange 管理者の主な責任は電子メール メッセージを管理することと、場合によっては、ネットワーク インフラストラクチャを管理することでした。

しかし、以前のバージョンの Exchange には、ユニファイド メッセージング機能はありませんでした。Exchange Server version 5.5、Exchange 2000 Server、および Exchange Server 2003 の管理者は、Exchange 環境とネットワーク インフラストラクチャにのみ重点を置き、テレフォニー環境とテレフォニー インフラストラクチャの管理についてはテレフォニー コンサルタントに大きく依存していました。

ユニファイド メッセージング サーバーを正しく展開するには、テレフォニーに関する基本的な概念やテレフォニー コンポーネントを十分に理解しておく必要があります。テレフォニーの基本について十分に理解して初めて、Exchange 2007 ユニファイド メッセージングを Exchange 2007 組織に正しく統合することができます。

概念とコンポーネント

Exchange 2007 ユニファイド メッセージング サーバーを Exchange 組織に正しく展開するには、Exchange 管理者は、データ ネットワークの概念およびテレフォニーの用語と概念について十分に理解しておく必要があります。ここでは、ユニファイド メッセージングを理解するうえで知っておく必要のあるネットワークとテレフォニーのコンポーネントおよび概念に関する概要について説明します。これらには次のようなものがあります。

  • 回線交換網とパケット交換網
  • 構内交換機 (PBX)
  • インターネット プロトコル構内交換機 (IP-PBX)
  • ボイスオーバー IP (VoIP)
  • IP ゲートウェイ

回線交換網

公衆交換電話網 (PSTN) などの回線交換網では、複数の呼び出しが同じ転送メディアを経由して転送されます。多くの場合、PSTN に使用されるメディアは銅線です。ただし、光ファイバ ケーブルが使用されることもあります。

回線交換網は、専用接続が存在するネットワークです。専用接続とは、2 つのノード間で通信できるようセットアップされた回線またはチャネルのことです。2 ノード間で呼び出しが確立した後は、接続はこれらの 2 ノード間の専用接続となります。一方のノードが呼び出しを終了すると、接続は取り消されます。

note注 :
PSTN は、世界の公衆回線交換電話網をグループ化したものです。このグループ化は、インターネットが世界の IP ベースの公衆パケット交換網をグループ化した方法と似ています。

回線交換網には基本的に、アナログとデジタルの 2 種類があります。アナログは音声送信用に設計されました。何年もの間、PSTN はアナログ専用でしたが、現在は PSTN などの回線ベースのネットワークはアナログからデジタルへと移行しています。デジタル ネットワークでアナログの音声送信信号をサポートするには、テレフォニー WAN にアナログ送信信号を送る前に、アナログ送信信号をエンコード、つまりデジタル形式に変換しておく必要があります。接続の受信側では、デジタル信号をデコード、つまりアナログ信号形式に変換して戻す必要があります。

回線交換網には、利点と欠点があります。回線交換網には、いくつかの欠点があります。回線交換網は、帯域幅を浪費する場合があるので、比較的効率が低下することがあります。VoIP をパケット交換網で使用する場合は、このようなことはありません。VoIP は、他のすべてのネットワーク アプリケーションと使用可能な帯域幅を共有して、使用可能な帯域幅をより効率的に有効活用します。回線交換網の別の欠点は、ピーク利用時間に必要な電話呼び出しの最大数を準備する必要のある点と、最大呼び出し数をサポートするための回線使用料を支払う必要のある点です。

回線交換には、パケット交換網より非常に優れている利点が 1 つあります。回線交換網で回線を使用する場合、回線の使用中は他のユーザーと競合することなく回線を完全に占有して使用できます。パケット交換網の場合には、このようなことはありません。

note注 :
SDH (Synchronous Digital Hierarchy) は、大部分の PSTN ネットワークの主要な転送プロトコルとなりました。SDH は、光ファイバ ネットワークに適用されています。

パケット交換網

パケット交換とは、データ メッセージをパケットと呼ばれる小さな単位に分割する手法のことです。パケットは、使用可能なルートの中で最善のルートを経由して送信先に送信され、接続の受信側で再構成されてメッセージに戻されます。

インターネットなどのパケット交換網では、パケットは最も効率の良いルートを経由して送信先に送信されますが、たとえ単一のメッセージを分割したパケットであっても、2 つのホスト間で転送されるパケットがすべて同じルートを通過するとは限りません。このため、ほぼ確実に各パケットの到着時間は異なり、到着する順番も異なります。パケット交換網では、パケット (メッセージまたはメッセージの断片) は、他のノードによって共有される可能性のあるデータ リンクを経由してノード間を個別にルーティングされます。パケット交換の場合は、回線交換とは異なり、ネットワーク上の複数のノード接続が使用可能な帯域幅を共有します。

note注 :
回線交換の場合、すべてのパケットは、受信側に順番に単一のパスを経由して送信されます。

パケット交換網は、全世界でインターネット上のデータ通信を可能にするために存在します。公衆データ ネットワークつまりパケット交換網は、PSTN のデータ版です。

パケット交換網は、LAN ネットワークや WAN ネットワークのようなネットワーク環境でも使用されています。WAN パケット交換環境は、電話回線に依存していますが、エンド ポイントとの永続的な接続を保持できるよう回線が用意されています。イーサネット ネットワークの場合のような LAN パケット交換環境では、データ パケットの転送はパケット スイッチ、ルーター、および LAN ケーブルに依存します。LAN では、スイッチは 2 つのセグメント間に、現在のパケットを送信するのにちょうど十分な長さの接続を確立します。受信パケットは一時的なメモリ領域、つまりメモリ バッファに保存されます。イーサネット ベースの LAN では、イーサネット フレームにペイロード、つまりパケットのデータ部分、およびパケットの送信元と送信先に関するメディア アクセス制御 (MAC) アドレス情報を含んだ特殊なヘッダーが含まれます。パケットが送信先に到着すると、パケット アセンブラによって元の順序に戻されます。パケット アセンブラが必要な理由は、パケットが異なるルートを経由する可能性があるからです。

パケット交換網によってインターネットが存在できるようになり、それと同時に、データ ネットワーク、特に LAN ベースの IP ネットワークの利用も増え、普及しました。

PBX

従来の PBX は、テレフォニー、つまり回線交換網で呼び出しを切り替えるためのスイッチの役割を果たすテレフォニー デバイスです。

note注 :
従来の PBX は、IP パケットを渡すことができない PBX です。多くの企業では、従来の PBX は IP PBX に置き換えられています。

PBX は、大部分の中規模企業および大規模企業で使用されているテレフォニー デバイスです。PBX を使用して、PBX のユーザー、つまりサブスクライバは、PBX 外と見なされる電話呼び出しを行うために一定数の外線番号を共有することができます。PBX は、社内の各ユーザーに外線専用回線を割り当てるよりもはるかに安価なソリューションです。受話器に加えて、FAX 電話、モデム、およびその他のさまざまな通信デバイスを PBX に接続できます。

PBX 機器は通常、企業の構内にインストールされ、職場に配置されインストールされた電話どうしの呼び出しを接続します。通常は、トランク回線とも呼ばれる限られた数の外線を使用して、PSTN などの外部ソースから、企業外部との間で呼び出しを行うことができます。

社内から PBX を使用して外線番号を呼び出すには、システムによっては 9 または 0 をダイヤルしてその後に外線番号をダイヤルします。送信トランク回線が自動的に選択されて、呼び出しが行われます。反対に、社内のユーザーを呼び出す場合は通常、特殊なダイヤル番号や外部トランク回線を使用する必要はありません。これは、社内呼び出しでは、PBX に物理的に接続している電話機どうしが PBX によってルーティング、つまり交換されるからです。

中規模企業や大規模企業では、次のような PBX 構成が可能です。

  • 全社をサポートする単一の PBX。
  • 相互にネットワーク化も接続もされていない、複数の PBX のグループ化。
  • 相互に接続されているか、ネットワーク化されている複数の PBX のグループ化。
note注 :
Exchange 2007 ユニファイド メッセージング ダイヤル プランは、複数の PBX と 1 つの IP ゲートウェイに広げることができます。

IP-PBX

IP PBX は、IP プロトコルがイーサネットまたはパケット交換 LAN を使用して電話どうしを接続し、IP パケットでその音声会話を送信できるよう支援する、構内交換機 (PBX) です。ハイブリッド IP PBX は、IP プロトコルが音声会話はパケットで送信するが、従来のアナログやデジタルの回線交換時分割多重方式 (TDM) 電話どうしも接続できるようにサポートします。IP PBX は、電話会社ではなく、民間企業にある電話交換設備です。

一般に、IP PBX では、管理者はインターネット ブラウザや他の IP ベースのユーティリティを使用して IP PBX サービスを簡単に構成できるので、従来の PBX よりも管理が容易です。そのうえ、追加の配線、ケーブル接続、パッチ パネルなどを設置する必要はありません。IP PBX の場合、IP ベースの電話の移動は、電話のプラグを抜いて新しい場所にプラグを差し込むだけの簡単なもので、従来の PBX ベンダからの、電話を移動するためのコストのかかるサービス コールは必要ありません。さらに、IP PBX を所有する企業には、回線交換網とパケット交換網の、2 つの別の交換網を保守および管理するために必要な追加のインフラストラクチャ コストはかかりません。

VoIP

ボイスオーバー IP (VoIP) は、ユーザーが IP ベースのネットワークを電話呼び出しの転送メディアとして利用できるようにするためのハードウェアとソフトウェアを含んだテクノロジです。VoIP では、音声データは、従来の回線転送、つまり PSTN の回線交換電話回線ではなく、IP を使用してパケットで送信されます。IP ネットワークに接続する IP ゲートウェイは、VoIP を使用して Exchange 2007 ユニファイド メッセージング サーバーと PBX システムとの間で音声データ パケットを送信します。

IP ゲートウェイ

IP ゲートウェイは、従来の PBX を自社 LAN に接続する、サード パーティ製のハードウェア デバイスまたはハードウェア製品です。IP ゲートウェイを使用すると、PBX システムは IP を実行している Exchange 2007 ユニファイド メッセージング サーバーと通信することができます。

note注 :
IP ゲートウェイは、PSTN 回線交換プロトコルではなく、VoIP を使用する PBX システムに接続することもできます。

Exchange 2007 ユニファイド メッセージングは、ゲートウェイの機能を使用して、PBX からの ISDN や QSIG などの TDM または電話回線交換型プロトコルを、セッション開始プロトコル (SIP)、リアルタイム転送プロトコル (RTP)、リアルタイム FAX 転送用の T.38 などの、IP または VoIP に基づいたプロトコルに変換します。IP ゲートウェイは、ユニファイド メッセージングの機能と運用にとって不可欠です。

important重要 :
IP ゲートウェイをインストールした後は、IP ゲートウェイを表す IP ゲートウェイ オブジェクトを Active Directory ディレクトリ サービスに作成する必要があります。UM IP ゲートウェイ オブジェクトを作成した後、UM IP ゲートウェイに関連付けられているユニファイド メッセージング サーバーでは、IP ゲートウェイの応答を保証するため、SIP OPTIONS 要求が IP ゲートウェイに送信されます。IP ゲートウェイがユニファイド メッセージング サーバーからの SIP OPTIONS 要求に応答しない場合、ユニファイド メッセージング サーバーは要求が失敗したことを示す、ID 1088 のイベントをログ出力します。この問題を解決するには、IP ゲートウェイが使用可能でオンラインになっており、ユニファイド メッセージングの構成が正しいことを確認します。

IP PBX および PBX の構成の詳細については、「PBX および IP PBX 構成について」を参照してください。

詳細情報

参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。