メッセージ調整の管理

 

適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1, Exchange Server 2007

トピックの最終更新日: 2007-05-08

ここでは、Microsoft Exchange Server 2007 で使用できるメッセージ調整オプションについて説明します。メッセージ調整は、ハブ トランスポート サーバーの役割またはエッジ トランスポート サーバーの役割がインストールされた Exchange 2007 を実行しているコンピュータで処理可能なメッセージ数および接続数に対して設定される制限のグループです。これらの制限により、トランスポート サーバーのシステム リソースに偶然または意図的に過剰な負担がかかるのを防ぐことができます。

メッセージ調整の範囲について

メッセージ調整は、メッセージ処理速度、SMTP (簡易メール転送プロトコル) 接続速度、および SMTP セッション タイムアウトに対するさまざまな制限を含みます。これらの制限を組み合わせて適用することにより、メッセージの受け付けおよび配信によってハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーに過剰な負担がかかるのを防ぐことができます。メッセージ調整の制限を適用すると、処理を待つメッセージおよび接続の大量のバックログが発生しても、トランスポート サーバーはそれらのメッセージや接続を適正な方法で処理できます。

メッセージ調整に加えて、Exchange 2007 では、受信者数、メッセージ ヘッダーのサイズ、個々の添付ファイルのサイズなど、メッセージの個々の要素に対してサイズ制限を設定することもできます。メッセージ サイズの制限の詳細については、「メッセージ サイズの制限の管理」を参照してください。

Exchange 2007 トランスポート サーバーのシステム リソースに過剰な負担がかかるのを防ぐために役立つ Exchange 2007 のもう 1 つの機能は、バック プレッシャです。バック プレッシャは、ハブ トランスポート サーバーおよびエッジ トランスポート サーバーのシステム リソース監視機能です。ハード ディスク ドライブ使用率やメモリ使用率などの監視対象システム リソースが、指定されたしきい値を超えると、Exchange トランスポート サーバーは新しい接続やメッセージの受け付けを停止し、既存のメッセージの配信に集中します。監視対象システム リソースの使用率が標準レベルに戻ると、Exchange トランスポート サーバーは新しい接続やメッセージを受け付けるようになります。バック プレッシャの詳細については、「バック プレッシャについて」を参照してください。

トランスポート サーバーのメッセージ調整オプション

メッセージ調整オプションは、次の場所で設定できます。

  • トランスポート サーバー
  • 送信コネクタ
  • 受信コネクタ

ハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーで使用できるすべてのメッセージ調整オプションは、Exchange 管理シェルで設定できます。また、一部のオプションは、Exchange 管理コンソールのトランスポート サーバーのプロパティを使用して設定することもできます。どちらで設定しても機能的には同じですが、この 2 つの管理インターフェイスでは、使用する用語が少し異なる場合があります。

Exchange 管理シェルを使用したトランスポート サーバーのメッセージ調整の構成

表 1 に、Exchange 管理シェルで設定できるハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーのメッセージ調整オプションを示します。

表 1 Exchange 管理シェルで設定できるメッセージ調整オプション

ソース パラメータ 説明

Set-TransportServer

MaxConcurrentMailboxDeliveries

このパラメータには、メッセージをメールボックスに配信するためにハブ トランスポート サーバーが同時に開くことができる配信スレッドの最大数を指定します。ハブ トランスポート サーバーのストア ドライバは、メールボックス サーバーへのメッセージの配信とメールボックス サーバーからのメッセージの受け付けを行います。この制限は、Exchange 組織内のすべてのメールボックスへのメッセージの配信に適用されます。MaxConcurrentMailboxDeliveries パラメータの既定値は 30 です。

Set-TransportServer

MaxConcurrentMailboxSubmissions

このパラメータには、メールボックスからメッセージを受け付けるためにハブ トランスポート サーバーが同時に開くことができる配信スレッドの最大数を指定します。ハブ トランスポート サーバーのストア ドライバは、メールボックス サーバーへのメッセージの配信とメールボックス サーバーからのメッセージの受け付けを行います。この制限は、Exchange 組織内のすべてのメールボックスからの新しいメッセージの受け付けに適用されます。MaxConcurrentMailboxDeliveries パラメータの既定値は 30 です。

Set-TransportServer

MaxConnectionRatePerMinute

このパラメータには、ハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーに対して開くことができる新しい受信接続の最大数を指定します。これらの接続は、サーバーに存在する任意の受信コネクタに対して開かれます。MaxConnectionRatePerMinute パラメータの既定値は 1 分あたり 1,200 接続です。

Set-TransportServer または

トランスポート サーバーのプロパティ

MaxOutboundConnections

このパラメータには、ハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーが同時に開くことができる同時送信接続の最大数を指定します。送信接続には、サーバーに存在する送信コネクタが使用されます。MaxOutboundConnections パラメータで指定された値は、トランスポート サーバーに存在するすべての送信コネクタに適用されます。MaxOutboundConnections パラメータの既定値は 1,000 です。unlimited という値を入力した場合、送信接続数は制限されません。

Set-TransportServer または

トランスポート サーバーのプロパティ

MaxPerDomainOutboundConnections

このパラメータには、インターネットに直接接続されたハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーが単一のリモート ドメインに対して開くことができる接続の最大数を指定します。リモート ドメインへの送信接続には、サーバーに存在する送信コネクタが使用されます。MaxPerDomainOutboundConnections パラメータの既定値は 20 です。unlimited という値を入力した場合、ドメインごとの送信接続数は制限されません。

Set-TransportServer

PickupDirectoryMaxMessagesPerMinute

このパラメータには、ピックアップ ディレクトリおよび再生ディレクトリの両方のメッセージ処理速度を指定します。各ディレクトリは、PickupDirectoryMaxMessagesPerMinute パラメータによって指定された速度でメッセージ ファイルをそれぞれ処理できます。既定では、ピックアップ ディレクトリは、1 分あたり 100 メッセージを処理できます。またこれと同時に、再生ディレクトリは、1 分あたり 100 メッセージを処理できます。

ピックアップ ディレクトリと再生ディレクトリは、新しいメッセージ ファイルを 5 秒ごとに (つまり 1 分間に 12 回) スキャンします。この 5 秒のポーリング間隔は構成できません。これは、各ポーリング間隔に処理できるメッセージの最大数が PickupDirectoryMaxMessagesPerMinute パラメータに割り当てた値を 12 で割った値 (PickupDirectoryMaxMessagesPerMinute/12) であることを意味します。既定では、最大 8 個を少し超えるメッセージを 5 秒の各ポーリング間隔に処理できます。

詳細については、以下のトピックを参照してください。

Exchange 管理コンソールを使用したトランスポート サーバーのメッセージ調整の構成

次の手順は、Exchange 管理コンソールで設定できるハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーのメッセージ調整オプションを構成する方法を示しています。

Exchange 管理コンソールを使用して、ハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバーのメッセージ調整オプションを構成するには、次の操作を行います。

  1. Exchange 管理コンソールを開きます。次のいずれかの手順を実行します。

    • エッジ トランスポート サーバーの役割がインストールされているコンピュータのコンソール ツリーで、[エッジ トランスポート] を選択し、サーバー名のすぐ下にある [プロパティ] リンクをクリックします。
    • ハブ トランスポート サーバーの役割がインストールされているコンピュータのコンソール ツリーで、[サーバーの構成] を展開し、[ハブ トランスポート] をクリックします。結果ウィンドウで、サーバーを選択します。操作ウィンドウで、サーバー名のすぐ下にある [プロパティ] リンクをクリックします。
  2. [制限] タブをクリックします。[接続の制限] セクションで、メッセージ調整に使用する設定を選択します。次のオプションを利用できます。

    • [最大同時送信接続数]   既定では、このチェック ボックスはオンになっています。このオプションは、Set-TransportServer コマンドレットの MaxOutboundConnections パラメータに対応しています。既定値は 1,000 です。
    • [ドメインあたりの最大同時送信接続数]   既定では、このチェック ボックスはオンになっています。このオプションは、Set-TransportServer コマンドレットの MaxPerDomainOutboundConnections パラメータに対応しています。既定値は 20 です。
  3. [OK] をクリックします。

送信コネクタのメッセージ調整オプション

表 2 に、ハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバー上に構成されている送信コネクタで使用できるメッセージ調整オプションを示します。このオプションを構成するには、Exchange 管理シェルを使用する必要があります。

表 2   送信コネクタで使用できるメッセージ調整オプション

ソース パラメータ 説明

Set-SendConnector

ConnectionInactivityTimeOut

このパラメータには、送信先のメッセージング サーバーとの SMTP 接続をアイドル状態のまま開いておくことができる時間の上限を指定します。この上限に達すると接続は閉じられます。既定値は 10 分です。

詳細については、「Set-SendConnector」を参照してください。

受信コネクタのメッセージ調整オプション

表 3 に、ハブ トランスポート サーバーまたはエッジ トランスポート サーバー上に構成されている受信コネクタで使用できるメッセージ調整オプションを示します。これらのオプションを構成するには、Exchange 管理シェルを使用する必要があります。

表 3   受信コネクタで使用できるメッセージ調整オプション

ソース パラメータ 説明

Set-ReceiveConnector

ConnectionInactivityTimeOut

このパラメータには、送信元のメッセージング サーバーとの SMTP 接続をアイドル状態のまま開いておくことができる時間の上限を指定します。この上限に達すると接続は閉じられます。ハブ トランスポート サーバー上に構成されている受信コネクタの既定値は 5 分です。エッジ トランスポート サーバー上に構成されている受信コネクタの既定値は 1 分です。

Set-ReceiveConnector

ConnectionTimeOut

このパラメータには、送信元のメッセージング サーバーとの SMTP 接続を開いておくことができる時間の上限を指定します。この制限は、送信元のメッセージング サーバーがデータを転送していても適用されます。ハブ トランスポート サーバー上に構成されている受信コネクタの既定値は 10 分です。エッジ トランスポート サーバー上に構成されている受信コネクタの既定値は 5 分です。ConnectionTimeout パラメータで指定する値は、ConnectionInactivityTimeout パラメータで指定する値より大きい値である必要があります。

Set-ReceiveConnector

MaxInboundConnection

このパラメータには、この受信コネクタが同時に許容する受信 SMTP 接続の最大数を指定します。既定値は 5,000 です。

Set-ReceiveConnector

MaxInboundConnectionPercentagePerSource

このパラメータには、受信コネクタが同時に許容する、単一の送信元メッセージング サーバーからの SMTP 接続の最大数を指定します。値は受信コネクタで利用可能な残っている接続の割合で表します。受信コネクタが許容する接続の最大数は、MaxInboundConnection パラメータで定義されます。MaxInboundConnectionPercentagePerSource パラメータの既定値は 2% です。

Set-ReceiveConnector

MaxInboundConnectionPerSource

このパラメータには、受信コネクタが同時に許容する、単一の送信元メッセージング サーバーからの SMTP 接続の最大数を指定します。既定値は 100 です。

Set-ReceiveConnector

MaxProtocolErrors

このパラメータには、受信コネクタが送信元メッセージング サーバーとの接続を閉じるまでに許容する SMTP プロトコル エラーの最大数を指定します。既定値は 5 です。

Set-ReceiveConnector

TarpitInterval

このパラメータには、タールピットで使用される遅延を指定します。タールピットとは、ディレクトリ獲得攻撃や他の望ましくないメッセージを示す特定の SMTP 通信パターンに対して、SMTP の応答を意図的に遅延させる方法です。ディレクトリ獲得攻撃とは、迷惑な商用電子メールのターゲットとして利用するために、特定の組織から有効な電子メール アドレスを収集しようとする試みです。

TarpitInterval パラメータで指定した遅延は、匿名接続にのみ適用されます。TarpitInterval パラメータの既定値は 5 秒です。詳細については、「受信者のフィルタ」を参照してください。

詳細については、「Set-ReceiveConnector」を参照してください。

参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。