受信者の範囲について

 

適用先: Exchange Server 2010 SP2, Exchange Server 2010 SP3

トピックの最終更新日: 2010-01-20

受信者の管理には、Exchange 管理コンソール (EMC) と Exchange 管理シェルを使用します。これらの管理インターフェイスを使用すると、Active Directory 階層のさまざまなレベルに格納されている受信者を柔軟に表示および管理することができます。

Microsoft Exchange Server 2010 管理インターフェイスでは、受信者の範囲という概念を利用してこの操作を行います。受信者の範囲とは、EMC およびシェルで受信者の管理に使用される、Active Directory 階層の指定した部分を表します。受信者の範囲を Active Directory 内の特定の場所に設定すると、その場所およびその下にあるすべてのコンテナーに格納されているすべての受信者を表示および管理することができます。たとえば、受信者の範囲をドメインに設定すると、使用している Exchange 管理インターフェイスで、そのドメイン内のすべての組織単位 (OU) に格納されているすべての受信者を表示および管理することができます。

注意

受信者の範囲は、単に Active Directory のビューであり、セキュリティ コンテキストを持ちません。ユーザーは受信者の範囲の設定に関係なく、ユーザー アカウントにアクセス許可が与えられているオブジェクトとコンテナーにのみアクセスして管理を行うことができます。

受信者の範囲の設定は、返される受信者の数を制限するだけではありません。受信者の範囲を設定すると、使用している管理インターフェイスは指定した受信者の範囲内で動作します。受信者の管理タスクを実行する際に、管理インターフェイスには Active Directory の受信者の範囲として設定した部分のみが表示されます。たとえば、会社に次の図に示すような Active Directory の構造があるとします。受信者の範囲を corp.contoso.com ドメインの Field OU に設定すると、Exchange 管理インターフェイスには、次の図で強調表示された Active Directory の部分のみが表示されます。

受信者の範囲

受信者の範囲の例

受信者の範囲は、ファースト クラスの受信者オブジェクトに適用されます。ファースト クラスの受信者オブジェクトとは、すべてのメールボックス、メール連絡先、メール ユーザー、配布グループ、および動的配布グループのことです。

重要

ファースト クラスの受信者オブジェクトのプロパティは、受信者の範囲による制限を受けません。たとえば、配布グループにメンバーを追加する場合、受信者の範囲に関係なく、フォレスト内の任意の受信者を選択できます。同様に、メールボックス ユーザーの管理者を構成する場合も、フォレスト内の任意のメールが有効なユーザーや連絡先を選択することができます。

メールボックス サーバーの管理に関連する管理タスクについては、「メールボックス サーバーの管理」を参照してください。

受信者の範囲を使用する場合の推奨事項

受信者の範囲を使用する場合は、以下の推奨事項があります。

  • 大規模な組織では、受信者が複数のドメインや OU に分散している場合があります。このような場合、管理している特定の受信者のみを対象として受信者の範囲を設定すると、返される受信者の数を減らすことができます。これにより、Exchange 管理インターフェイスのパフォーマンスが向上します。

  • 受信者の範囲をフォレスト全体に設定するのは、フォレスト内のすべての受信者に適用する特定のタスクを実行する場合だけにします。受信者の範囲をフォレスト全体に設定すると、管理インターフェイスはグローバル カタログ サーバーを使用して Active Directory にアクセスします。インターフェイスに表示される受信者情報は、Active Directory のレプリケーションの遅延の影響を受けます。結果として、表示される情報が最新のものではない可能性もあります。同様に、インターフェイスを通じて行った更新が、Active Directory により変更がレプリケートされるまで有効にならない場合もあります。

    さらに、Active Directory の展開が大規模で受信者が複数のドメインに分散している場合、フォレスト全体の受信者の範囲を使用すると、非常に多くの受信者が返されるために管理のパフォーマンスが低下する可能性があります。

  • Active Directory のレプリケーション トポロジが複雑な場合や、レプリケーションの遅延が大きい場合は、受信者の範囲をフォレスト全体に設定するときに、最新のグローバル カタログを指定してください。

  • Active Directory に対するすべての更新が行われる特定のドメイン コントローラーを使用する場合、受信者の範囲を設定するときに、このドメイン コントローラーを、優先する受信者のドメイン コントローラーとして指定できます。たとえば、特定のドメイン コントローラーで動作するアカウント準備システムがある場合、このドメイン コントローラーを、優先する受信者のドメイン コントローラーとして指定できます。

受信者の範囲の設定

Exchange 2010 管理インターフェイスは常に、ドメイン レベルの受信者の範囲を使用して開始されます。受信者の範囲の設定は、既定では常に管理インターフェイスを実行しているコンピューターのドメインに設定されます。使用されているユーザー アカウントも管理対象の Exchange サーバーも、いずれも受信者の範囲の既定値には関係がありません。

この点を理解するために、組織 contoso.com に 3 つのドメインを持つ Active Directory フォレストがあるシナリオを考えてみます。すべてのコンピューター アカウントを含む contoso.com、すべてのユーザー アカウントを含む users.contoso.com、および Exchange サーバーを含む exchange.contoso.com という 3 つのドメインがあります。exchange.contoso.com の Exchange サーバーを管理するには、管理者は users.contoso.com のユーザー アカウントを使用して、contoso.com のコンピューターにログオンします。管理者が EMC またはシェルを開くと、受信者の範囲は既定で contoso.com に設定されます。

実行する必要があるタスクに応じて、受信者の範囲を Active Directory の別の場所に変更できます。受信者の範囲は、単一の OU、OU 階層の最上位レベル、ドメイン、またはフォレスト全体に設定することができます。

EMC の受信者の範囲

EMC で受信者の範囲を変更すると、[受信者の構成] ノードの結果ウィンドウに表示される受信者のセットが変更されます。さまざまなウィザードのページにある、受信者または OU を選択するためのダイアログ ボックスも、同じ範囲内で機能します。たとえば、既存の連絡先のメールを有効にする場合、メール連絡先の新規作成ウィザードの [連絡先の選択] ダイアログ ボックスには、受信者の範囲内でまだメールが有効になっていない連絡先だけが表示されます。

注意

Microsoft 管理コンソール (MMC) では、スナップインに加えられた変更はすべて、管理者のコンピューター上のユーザー プロファイルに基本設定として保存されます。受信者の範囲の設定も、基本設定の 1 つとして保存されます。このため、次に同じコンピューターで EMC を起動すると、受信者の範囲の既定の設定は、最後に指定した範囲で上書きされます。ただし、別のコンピューターや別のユーザー アカウントを使用して EMC を実行する場合は、受信者の範囲を再度調整する必要があります。

EMC で受信者の範囲を変更するには、[受信者の構成] ノードを選択し、操作ウィンドウで [受信者の範囲の変更] をクリックします。EMC で受信者の範囲を変更する方法の詳細については、「受信者の範囲の変更」を参照してください。

シェルの受信者の範囲

シェルではすべての値を手動で入力する必要があるため、受信者を管理するときには常に受信者の範囲を念頭に置く必要があります。受信者の範囲外にあるオブジェクトを指定すると、エラーが表示されます。たとえば、指定した受信者の範囲内にない OU に新しい配布グループを作成しようとすると、"組織単位 <OU 名> が見つかりませんでした。この組織単位の名前が正しく入力されているかどうかを確認してください。" というエラーが表示されます。

Set-AdServerSettings コマンドレットを使用して受信者の範囲を表示または変更することができます。

シェル内で受信者の範囲を変更する場合は、受信者の Get-  コマンドレットで返される受信者のセットを変更します。受信者の範囲には、Set-AdServerSettings コマンドレットを使用してアクセスできます。

注意

既定の範囲はシェルを閉じるときには保持されません。シェルは次回開かれる際に、既定のドメイン レベルの受信者の範囲にリセットされます。

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