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ユニファイド メッセージングの FAX 送信について

 

適用先: Exchange Server 2010 SP2, Exchange Server 2010 SP3

トピックの最終更新日: 2011-08-22

MicrosoftExchange Server 2010 ユニファイド メッセージング (UM) を使用すると、ボイス メール メッセージをユーザーの Exchange 2010 メールボックスに配信したり、ユーザーが FAX メッセージを自分の Exchange 2010 メールボックスで受信できるようにしたりすることができます。Exchange 2010 ユニファイド メッセージングでは、FAX メッセージは .tif 拡張子のイメージ ファイルが添付された電子メール メッセージとしてユーザーのメールボックスに送信されます。ユーザーは, .tif 拡張子のイメージ ファイルを開いて表示できるソフトウェア アプリケーションを使用して、添付ファイルを開くことができます。ここでは、FAX 送受信について、および Exchange 2010 ユニファイド メッセージングの FAX 送受信のしくみについて説明します。

注意

ユーザーは、ユニファイド メッセージングでは FAX を送信できませんが、インターネット FAX サービス、電子メール FAX サービス、サード パーティ FAX サーバー アプリケーションなどの多くのサード パーティ ソリューションを使用することにより FAX を送信できます。

目次

FAX 送受信の概要

FAX 送受信の方法

T.38

Exchange 2010 ユニファイド メッセージングによる FAX 送受信の概要

着信 FAX を受信する

FAX 呼び出し参照の方法

FAX 送受信の構成

電話番号と FAX 送受信

UM FAX メッセージのジャーナリング

FAX 送受信の概要

FAX は facsimile (ファクシミリ) の短縮形であり、ドキュメントの電子的な転送に使用されるテクノロジです。FAX は、一般にテレフォニーまたは回線ベースのネットワークである公衆交換電話網 (PSTN) を使用して、FAX マシンまたはコンピューターの FAX モデムによって送受信されます。ただし、FAX の送受信に使用できる選択肢は他にもあります。

現在、ほとんどすべての組織で、ユーザーが FAX を送受信できる必要があります。組織では、以下に記載する 1 つ以上の方法を使用して、PSTN またはインターネットを介して FAX を送受信しています。これらの方法にはそれぞれ長所と短所があります。

  • 従来の FAX マシンおよびコンピューター ベースでの FAX 送受信

  • FAX サーバーまたは FAX ゲートウェイを使用した FAX 送受信

  • ボイス オーバー IP (VoIP) ネットワークを使用した FAX 送受信

  • 電子メール クライアント アプリケーションを使用した FAX 送受信

FAX メッセージを送信するには、組織内のユーザーは次の操作を行う必要があります。

  • FAX 送信するドキュメントのハード コピーを印刷し、物理的な FAX マシンを使用して送信する

  • ドキュメントをコンピューターに保存し、FAX モデムを使用して FAX を送信する

  • ソフトウェア アプリケーションからドキュメントを FAX 送信できるインターネット FAX サービスを使用する

  • FAX サーバーを使用するように構成されているソフトウェア アプリケーションを使用して、FAX サーバーに FAX を送信する

FAX を受信するには、組織内のユーザーは次の操作を行う必要があります。

  • 組織内の物理的な FAX マシンで FAX を受信する

  • コンピューターにインストールされている FAX モデムを使用して FAX を受信する

  • インターネット FAX サービスから FAX を受信する

  • ネットワーク上に構成されている FAX サーバーから FAX を受信する

  • VoIP ネットワーク上のユニファイド メッセージング サーバーから FAX を受信する

FAX 送受信の方法

FAX を送受信するためのオプションは、以下に示すように複数あります。

従来の FAX マシンおよびコンピューター ベースでの FAX 送受信   スキャナー、コンピューターの FAX モデム、FAX 機能が組み込まれたプリンター、または専用の FAX マシンを使用して FAX を送受信できます。これらを使用すると、電話回線を使用してデータをパルス形式で別の FAX デバイス (通常は別の FAX マシンまたは FAX モデムがインストールされているコンピューター) に送信できます。送信されたパルスは、イメージに変換されるか、用紙にイメージを印刷するために使用されます。

従来の FAX 送受信方法では、送受信デバイスに少なくとも 1 つの電話回線が必要で、一度に送信または受信できる FAX は 1 つだけです。FAX モデムを使用した FAX 送受信の短所は、コンピューターが、電源がオンになっていて FAX ソフトウェアまたは FAX サービスを実行している必要があることです。この種類のコンピューター ベースの FAX 送受信では、インターネットは使用されません。次の図は、従来の FAX 送受信方法とコンピューター ベースの FAX 送受信方法による FAX 送受信のしくみを示しています。

従来の FAX 送受信とコンピューター ベースの FAX 送受信

従来の FAX 送受信

FAX サーバーまたは FAX ゲートウェイ、およびインターネット FAX サービス   インターネットを介して FAX を送受信する方法は複数あります。コンピューターでソフトウェア アプリケーションを使用する方法や、電子メール クライアントを使用して FAX を受信する方法もこれに含まれます。この種類の送受信方法ではほとんどの場合、FAX サーバーまたは FAX ゲートウェイを使用して FAX と電子メールの間の変換を行います。組織で FAX マシンの撤去が可能になったり追加の FAX マシンの購入が不要になったりするため、この方法は急速に普及しています。この方法では、電話回線を増設する必要もありません。この種類の送受信方法では、ドキュメントを作成し、正しい識別情報を記入した送付状を付けて、従来の FAX マシンに送信します。たとえば、ユーザーは Microsoft Office Word や Outlook などのソフトウェア アプリケーションを使用して FAX を作成し、FAX サーバーまたは FAX ゲートウェイに送信します。FAX サーバーまたは FAX ゲートウェイは FAX を受信し、従来の電話回線を使用して FAX マシンまたはコンピューターにインストールされている FAX モデムに送信します。次の図は、FAX サーバー、FAX ゲートウェイ、およびインターネット FAX サービスを使用して FAX を送受信する方法を示しています。

FAX サーバーまたは FAX ゲートウェイを使用した FAX 送受信

FAX サーバーまたは FAX ゲートウェイを使用した FAX 送受信

インターネット FAX サービスにより、ユーザーはインターネットを使用してコンピューターから FAX を送信できます。Word や Outlook などのソフトウェア アプリケーションを使用して、FAX を作成し、インターネット FAX サービスに送信できます。定期会員制や、FAX メッセージの送信ごとに料金が発生するシステムで、インターネット FAX サービスを提供する企業が多数あります。インターネット FAX サービスには次の長所があります。

  • FAX マシンが不要である。

  • ソフトウェアまたはハードウェアをインストールする必要がない。

  • 専用電話回線が不要である。

  • 機密を保持しやすい。

  • 同時に複数の FAX を送信できる。

  • コンピューターがシャットダウンされているときも FAX を受信できる。

次の図は、インターネット FAX サービスを使用して FAX を送受信する方法を示しています。

インターネット FAX サービス

インターネット FAX サービス

電子メール クライアント アプリケーションを使用した FAX 送受信 インターネットを介して FAX マシンで FAX を送受信し、それを Outlook などの電子メール クライアントで受信できます。

FAX マシンがインターネットを介して FAX メッセージを電子メール クライアントに送信できるようにするために、T.37 プロトコルが設計されました。FAX は、インターネットを介して電子メールの添付ファイル (通常は .tif ファイルまたは .pdf ファイル) として送信されます。この種類の FAX 送受信方法では、送信 FAX マシンと受信 FAX マシン用の電子メール アドレスに加えて、iFax または T.37 をサポートする FAX マシンが必要です。すべての T.37 FAX マシンは、既存の従来の FAX マシンおよび FAX モデムと共に使用できるように、電話回線を使用した標準 FAX 送受信をサポートします。ただし場合によっては、FAX ゲートウェイを使用しているときに T.37 FAX マシンも使用できます。次の図は、T.37 ベースの FAX マシンと電子メール クライアントを使用して FAX を送受信する方法を示しています。

電子メールでの FAX 送受信

電子メールでの FAX 送受信

VoIP ネットワークを使用した FAX 送受信   VoIP は、ユーザーが IP ベースのネットワークを電話呼び出しの転送メディアとして利用できるようにするためのハードウェアとソフトウェアを含んだテクノロジです。VoIP ネットワークでは、音声データと FAX データは従来の回線転送 (PSTN の回線交換電話回線) ではなく IP を使用してパケットで送信されます。IP ネットワークに接続する IP ゲートウェイは、VoIP を使用して Exchange 2010 ユニファイド メッセージング サーバーと構内交換機 (PBX) システムとの間で音声データ パケットを送信します。または IP PBX を使用して、IP ゲートウェイと PBX の両方の機能を実行することもできます。

ネットワークには次の 2 つの基本的な種類があります。回線交換網とパケット交換網です。回線交換網は、専用接続が存在するネットワークです。専用接続とは、2 つのノード間で通信できるようセットアップされた回線またはチャネルのことです。2 ノード間で呼び出しが確立した後は、接続はこれらの 2 ノード間の専用接続となります。一方のノードが呼び出しを終了すると、接続は取り消されます。PSTN などの回線交換網では、複数の呼び出しが同じ転送メディアを経由して転送されます。多くの場合、PSTN に使用されるメディアは銅線です。ただし、光ファイバー ケーブルが使用されることもあります。

インターネットやローカル エリア ネットワーク (LAN) などのパケット交換網では、パケットは最も効率の良いルートを経由して送信先に送信されますが、たとえ単一のメッセージを分割したパケットであっても、2 つのホスト間で転送されるパケットがすべて同じルートを通過するとは限りません。このため、ほぼ確実に各パケットの到着時間は異なり、到着する順番も異なります。パケット交換網では、パケット (メッセージまたはメッセージの断片) は、他のノードによって共有される可能性のあるデータ リンクを経由してノード間を個別にルーティングされます。パケット交換の場合は、回線交換とは異なり、ネットワーク上の複数のノード接続が使用可能な帯域幅を共有します。パケット交換網によってインターネットが存在できるようになり、それと同時に、データ ネットワーク、特に LAN ベースの IP ネットワークと VoIP ネットワークの利用も増え、普及しました。次の図は、VoIP ネットワークおよび Exchange ユニファイド メッセージングを使用して FAX を配信する方法を示しています。

VoIP ネットワーク上での FAX 送受信

VoIP ネットワーク上での FAX 送受信

T.38

T.38 は、IP ベースのネットワークを介して FAX を使用できるようにする FAX 標準およびプロトコルです。T.38 プロトコルを使用する IP ベースのネットワークは、SMTP (簡易メール転送プロトコル) および MIME を使用してメッセージを受信者のメールボックスに送信します。T.38 は、IP に対応した FAX デバイスおよび FAX ゲートウェイの IP FAX 転送を可能にします。このようなデバイスには、クライアント コンピューターやプリンターなどの IP ネットワークベースのホストが含まれます。Exchange 2010 ユニファイド メッセージングでは、FAX イメージは, .tif ファイルとしてエンコードされ、電子メール メッセージに添付される個別のドキュメントです。電子メール メッセージと .tif 添付ファイルの両方が、受信者の Exchange 2010 UM が有効なメールボックスに送信されます。

Exchange 2010 ユニファイド メッセージングは、ゲートウェイの機能を使用して、PBX からの総合デジタル通信網 (ISDN) や QSIG などの時分割多重方式 (TDM) または電話回線交換型プロトコルを、セッション開始プロトコル (SIP)、リアルタイム転送プロトコル (RTP)、FAX メッセージ受信用の T.38 などの、IP または VoIP に基づいたプロトコルに変換します。IP ゲートウェイは、ユニファイド メッセージングの機能と運用にとって不可欠です。IP ゲートウェイは FAX トーンを検出します。ユニファイド メッセージング サーバーは IP ゲートウェイを使用して、FAX が検出されたことを示す通知を送信します。その時点でユニファイド メッセージング サーバーはメディア セッションと再度ネゴシエートし、T.38 プロトコルを使用します。

FAX 送受信の概要

Exchange 2010 ユニファイド メッセージングによる FAX 送受信の概要

Exchange 2010 ユニファイド メッセージングでは、ユーザーは FAX イメージを, .tif イメージ ファイルとしてエンコードされ、電子メール メッセージに添付される個別のドキュメントとして受信します。電子メール メッセージと .tif 添付ファイルの両方が受信者の Exchange 2010 UM が有効なメールボックスに送信されます。

FAX メッセージをユーザーのメールボックスに送信することには複数の利点があります。それらの利点を以下に示します。

  • 物理的な FAX マシン、または従来の FAX マシンの数を減らすことができる。

  • ユニファイド メッセージング サーバーは多くの FAX をキューに入れ、電話回線のいずれかが空いたときにそれぞれの FAX を送信することができるため、組織内で FAX 送受信に使用する電話回線の数を減らすことができる。

  • .tif イメージ ファイルとして受信される FAX は、従来の FAX より高品質である。着信 FAX は、ローカル プリンターまたは共有プリンターで印刷できます。

  • ユーザーのメールボックスに送信される FAX は、受信者以外の人が手に取る可能性がハード コピーの FAX より低いため、セキュリティが高まる。

  • ユーザーが、デスクを離れずに FAX を受信できる。

  • 受信する FAX メッセージを監視して、組織のセキュリティ ポリシーに準拠していることを確認できる。

1 つの FAX メッセージは、1 人の UM が有効なユーザーにのみ送信できます。Exchange 2010 ユニファイド メッセージングは、FAX メッセージを配布リストに転送できません。この機能が必要な場合は、次の手順を実行する必要があります。

  1. FAX 呼び出しに応答するためのメールボックスを作成します。これが配布リスト用のメールボックスになります。

  2. 配布リスト メールボックスを UM が有効なメールボックスにします。

  3. この UM が有効なメールボックスのルールを作成します。ルールは、すべてのメッセージを選択した配布リストに転送するように構成されます。

    注意

    Exchange 2010 ユニファイド メッセージングの RTM バージョンを使用している場合、一部の IP PBX で FAX 受信が正常に行えるようにするには、インバンド FAX トーン検出を有効にする必要がある場合があります。これには、msexchangeum.config ファイルの EnableInbandFaxDetection 設定を True に変更します。msexchangeum.config ファイルは、Exchange 2010 ユニファイド メッセージング サーバー上の \Program Files\Microsoft\Exchange\V14\bin フォルダーにあります。この設定を構成しない場合、ユニファイド メッセージング サーバーはインバンド FAX トーン検出を行うため、IP ゲートウェイに依存します。
    Exchange 2010 Service Pack 1 (SP1) では、msexchangeum.config ファイルの EnableInbandFaxDetection 設定を True に変更する必要はありません。Exchange 2010 SP1 がインストールされたユニファイド メッセージング サーバーでは、FAX トーン検出を有効にする必要はありません。Unified Communications Managed API v. 2.0 (UCMA) により、ユニファイド メッセージング サーバーがインバンドとアウト オブ バンドの両方の FAX イベントをリッスンするようになるためです。

FAX 送受信の概要

着信 FAX を受信する

VoIP ネットワークでの FAX 受信は、標準の FAX マシンでの FAX 受信や IP ベースのネットワーク上に配置されている FAX サーバーを使用した FAX 受信とは異なります。VoIP ネットワークを介して FAX を送受信できるようにするには、T.38 プロトコルをサポートする IP ゲートウェイまたは IP PBX と、同じく T.38 をサポートするサーバーが必要です。T.38 により、IP ネットワーク ベースのホスト (クライアント コンピューター、FAX 機能が組み込まれたプリンター、ユニファイド メッセージング サーバーなどのサーバーなど) に対する IP ベースの FAX 送信が可能になります。

重要

T.38 または G.711 を使用した FAX の送受信は、ユニファイド メッセージングと Microsoft Office Communications Server 2007 が統合された環境ではサポートされていません。

PBX は呼び出しを受け取ると、その呼び出しを適切な内線に転送します。ユーザーの内線番号を呼び出しても応答がない場合、PBX はその呼び出しを IP ゲートウェイに転送し、IP ゲートウェイは FAX 呼び出しを適切なユニファイド メッセージング サーバーに転送します。呼び出しがユニファイド メッセージング サーバーによって受信されると、ユニファイド メッセージング サーバーはそれが音声呼び出しと FAX 呼び出しのどちらであるかを判断する必要があります。SIP プロトコルが使用されている場合、ユニファイド メッセージング サーバーは呼び出しを音声メッセージとして処理します。ただし、IP ゲートウェイから T.38 プロトコルが使用されている場合、ユニファイド メッセージング サーバーは呼び出しが FAX であると認識し、呼び出しを処理します。Exchange 2010 ユニファイド メッセージングは、受信 FAX 呼び出しを専門の FAX パートナー サーバーに転送します。この FAX パートナー サーバーは、FAX 送信者と FAX 通話を確立し、UM が有効なユーザーの代わりに FAX を受信します。次に、FAX パートナーのサーバーは、SMTP メッセージに .tif 添付ファイルとして含まれている FAX を受信者のメールボックスに送信します。

着信 T.38 FAX 信号が IP ゲートウェイから Exchange 2010 UM サーバーに送信されると、UM サーバーは、LDAP を使用して Active Directory にクエリし、着信 FAX 呼び出しの意図した受信者に着信 FAX メッセージを受信するためのアクセス許可があるかどうか、および FAX パートナー サーバーの SIP アドレスを判断します。これらの確認が終了したら、UM サーバーが FAX 呼び出し参照要求を IP ゲートウェイまたは SIP ピアに送信します。FAX 呼び出しは次に FAX パートナー サーバーに転送されます。FAX 呼び出しが正常に確立されると、FAX 送信者が FAX メディアおよびデータを FAX パートナー サーバーに送信します。FAX メディアとデータが FAX パートナー サーバーで受信されると、FAX パートナー サーバーが SMTP を使用して電子メール メッセージをハブ トランスポート サーバーに送信します。これには、FAX メッセージの .tif イメージと意図した FAX 受信者に対する特別の X-Header が含まれています。

FAX メッセージが認証され、有効な FAX パートナー サーバーから送信されると、メールボックス サーバー上の UM メールボックス アシスタントが RPC 呼び出しを UM サーバーに発行します。この操作により、UM サーバーが、FAX メッセージのプロパティと Exchange 2010 ユニファイド メッセージング サーバーによって作成された FAX メッセージのプロパティが一致することを確認できます。最後に、UM サーバーが再度、最終 FAX メッセージを送信します。これには、ハブ トランスポート サーバーに対する、電子メール メッセージと着信 FAX の .tif 添付ファイルが含まれます。次に、MAPI RPC を使用して、完了した書式付きバージョンの FAX メッセージが意図した受信者に配信されます。次の図に、着信 FAX を受信する際に関係する手順を示します。

Exchange 2010 ユニファイド メッセージングで FAX を送信する

ユニファイド メッセージングの FAX 送受信

FAX 送受信の概要

FAX 呼び出し参照の方法

着信 FAX 呼び出しは、IP ゲートウェイ または SIP ピア (メディア ゲートウェイ) からの SIP re-INVITE、SIP ピアによる CNG 通知、または UM サーバーによる CNG 検出のいずれかを介して Exchange 2010 UM に通知できます。次のサブセクションで、それぞれのケースの FAX 呼び出し参照について詳しく説明します。

SIP ピアからの Re-INVITE

このシナリオの呼び出しのフローは、次の図に示すように進行します。

SIP ピアからの Re-INVITE

SIP ピアからの Re-INVITE

UM パイロット番号に対する着信呼び出しが、UM にボイス (RTP/オーディオ) SDP プロファイルを使った INVITE として指定されます (1)。UM が招待を受け入れ、メディア ストリームが確立されます。呼び出しが確立されると、発信者によって FAX 送信が開始されます (2)。SIP ピアは、呼び出し元の FAX トーン (CNG) を検出します。SIP ピアが UM サーバーに re-INVITE を発行します。今回は、SDP の FAX (T.38 または G.711) プロファイルを指定します (3)。UM は、200 OK で招待に応答します。これにより、SIP ピアが “保留” になります (4)。UM が REFER を発行し、SIP (CNG) ピアが、構成データから取得された FAX パートナー ソリューションのエンド ポイントを参照します (5)。SIP ピアが FAX セッション INVITE を FAX パートナー ソリューションに送信します (6)。FAX パートナー ソリューションが招待を受け入れ、SIP ピアとのメディア セッションが確立されます。

SIP ピアによる CNG 通知

このシナリオの呼び出しのフローは、次の図に示すように進行します。

SIP ピアによる CNG 通知

SIP ピアによる CNG 通知

UM パイロット番号に対する着信呼び出しが、UM にボイス (RTP/オーディオ) SDP プロファイルを使った INVITE として指定されます (1)。UM が招待を受け入れ、メディア ストリームが確立されます。呼び出しが確立されると、発信者によって FAX 送信が開始されます (2)。SIP ピアが呼び出し元の FAX トーン (CNG) を検出します。SIP ピアは、RFC 4733 に準拠した RTP ストリームで CNG 通知を送信することで、UM サーバーに FAX を通知します (3)。UM は、その通知に応答して、REFER を即座に発行し、SIP ピアが、構成データ から取得された FAX パートナー ソリューションのエンド ポイントを参照します (4)。SIP ピアが FAX セッション INVITE を FAX パートナー ソリューションに送信します (5)。FAX パートナー ソリューションが招待を受け入れ、SIP ピアとのメディア セッションが確立されます (6)。

UM サーバーによる CNG 検出

このシナリオの呼び出しのフローは、次の図に示すように進行します。

UM サーバーによる CNG 通知

CNGDetectionFAX

UM パイロット番号に対する着信呼び出しが、UM にボイス (RTP/オーディオ) SDP プロファイルを使った INVITE として指定されます。UM が招待を受け入れ、メディア ストリームが確立されます (1)。呼び出しが確立されると、発信者によって FAX 送信が開始されます (2)。UM サーバーが RTP オーディオ ストリームで FAX トーン (CNG) を検出します (3)。UM は、その通知に応答して、REFER を即座に発行し、SIP ピアが、構成データ から取得された FAX パートナー ソリューションのエンド ポイントを参照します (4)。SIP ピアが FAX セッション INVITE を FAX パートナー ソリューションに送信します (5)。FAX パートナー ソリューションが招待を受け入れ、SIP ピアとのメディア セッションが確立されます (6)。

FAX 送受信の概要

FAX 送受信の構成

既定では、ユニファイド メッセージング サーバーの役割をインストールすると、サーバーは、着信 FAX 呼び出しを処理したり、UM が有効なユーザーに配信したりできるように構成されません。Exchange 2010 UM を FAX パートナー サーバーと一緒に構成するには、UM メールボックス ポリシーを構成し、UM サーバーと FAX パートナー サーバー間で認証を構成する必要があります。詳細については、「着信 FAX を展開および構成する」を参照してください。

電話番号と FAX 送受信

Exchange 2010 ユニファイド メッセージングでは、FAX メッセージを受信するように UM が有効なユーザーを構成するときに、以下のオプションを使用できます。

  • ボイス メールで使用される直通社内通話 (DID) 電話番号

  • FAX の受信に使用される別の DID 電話番号

  • すべての FAX を受信する中央の FAX 電話番号

単一の DID 電話番号

ユニファイド メッセージングの有効化ウィザードまたは Enable-UMMailbox コマンドレットを使用してユーザーのユニファイド メッセージングを有効にするときは、そのユーザーに少なくとも 1 つの内線番号を指定する必要があります。この内線番号はユーザーごとに有効にし、特定のダイヤル プラン内で一意である必要があります。この内線は、ユニファイド メッセージングで Active Directory 内の適切なユーザーを見つけるために使用され、またユーザーの Exchange 2010 メールボックスに音声メッセージと FAX メッセージを配信するために使用されます。詳細については、「Enable-UMMailbox」を参照してください。

このシナリオでは、ユーザーは音声と FAX に単一の DID 番号を使用します。この構成は管理が容易で、余分な DID 番号を使用せずに済みます。FAX 呼び出しが到着したときにユーザーが不在の場合や電話中の場合は、UM が通話に応答し、FAX トーンを検出し、FAX メッセージを作成してユーザーに送信します。

ただしこのシナリオでは、ユーザーは FAX マシンから通話を受信する場合があります。その場合、ユーザーは次のことを行うことができます。

  • 電話が鳴ったときに応答せず、FAX 呼び出しが転送されてユニファイド メッセージング サーバーによって応答され、FAX メッセージが作成されて自分のメールボックスに転送されるようにする

  • FAX 呼び出しに応答し、それを自分に転送して、呼び出しが転送されてユニファイド メッセージング サーバーによって応答され、FAX メッセージが作成されて自分のメールボックスに転送されるようにする

  • 発信者が FAX 送信を再試行するのを待ち、FAX 呼び出しがユニファイド メッセージング サーバーに転送されるようにする

このように、単一の DID 番号を使用する場合、ユーザーは FAX メッセージを受信するために追加の操作を行う必要があります。

FAX 送受信の概要

複数の DID 電話番号

ユーザーのユニファイド メッセージングを有効にするときは、そのユーザー用に少なくとも 1 つの内線番号を入力する必要があります。ただし、Set-Mailbox コマンドレットの SecondaryAddress パラメーターを使用して、UM が有効なユーザー用に複数の内線番号を追加することもできます。詳細については、「Set-Mailbox」を参照してください。

重要

Exchange 2007 SP1 では、Set-Mailbox コマンドレットまたは Exchange 管理コンソールを使用して、複数の内線番号を追加できます。詳細については、「UM が有効なユーザーの内線番号を変更する」を参照してください。

複数の内線番号の追加は、UM が有効なユーザーが次の状況にあるときに役立ちます。

  • 多くの FAX を受信する

  • FAX を受信するために電話に応答したくない

  • 電話に応答して FAX トーンを聞きたくない

複数の内線の追加は単一の内線を使用する場合よりも複雑で、PBX 上で追加の構成設定が必要になる場合があります。UM が有効なユーザーに複数の内線番号を構成するには、使用可能であり、かつ組織で使用されていない DID 内線番号が必要です。したがって、組織で使用できる DID 内線番号の数が限られている場合は、UM が有効なユーザー用に複数の番号を使用することは適切ではありません。

複数の DID 電話番号を使用することの利点は、UM が有効なユーザーが 1 つの DID 内線番号で音声呼び出しを受信し、別の DID 内線番号で FAX 呼び出しを受信することです。ただし、これはさらに複雑になる場合があり、追加の構成手順が必要であるため、ボイス メールと FAX 呼び出しに別々の DID 番号を使用するほうがユーザーにとっては簡単です。

特定のユーザーに 2 つの DID 内線番号を構成する場合、DID 内線番号は別々の UM ダイヤル プランに含まれている可能性があります。このシナリオでは、ダイヤル プランを作成してそのダイヤル プランにユニファイド メッセージング サーバーを追加し、そのユニファイド メッセージング サーバーを、FAX 呼び出しを受信して FAX メッセージをユーザーに転送する専用サーバーとして使用することができます。詳細については、「UM ダイヤル プランの作成」を参照してください。

UM が有効なユーザーに複数の DID 内線番号を構成するときは、以下のオプションを使用できます。

  • 複数の DID 番号 (1 つはユニファイド メッセージングを使用しない FAX 用、もう 1 つは音声用)   この種類の構成はユーザーごとに有効にし、使用できる余分な DID 内線番号や未使用の DID 内線番号がある場合に使用します。1 つの DID 内線番号はユーザーのボイス メール番号として公開し、もう 1 つの DID 内線番号はユーザーの FAX 番号として公開します。このシナリオでは、応答がない音声呼び出しとビジー信号で応答された音声呼び出しはユニファイド メッセージング サーバーに転送され、音声メッセージが作成されて UM が有効なユーザーのメールボックスに送信されます。もう 1 つの内線番号は、FAX マシンまたは FAX モデムがインストールされている別のコンピューターに接続できます。この構成は可能ですが、ユニファイド メッセージング サーバーが FAX 呼び出しを処理することを要求せず、FAX メッセージは UM が有効なユーザーのメールボックスに送信されません。

  • 複数の DID 番号 (1 つは FAX 用、もう 1 つは音声用)   この種類の構成はユーザーごとに有効にし、組織で使用できる DID 内線番号が多数ある場合に使用できます。このシナリオではどちらの DID 内線番号への呼び出しも、応答がない場合またはビジー信号で応答された場合はユニファイド メッセージング サーバーに転送され、呼び出される DID 内線番号に応じてユニファイド メッセージング サーバーで音声メッセージまたは FAX メッセージが作成されます。ユーザーは 1 つの番号を音声用に、もう 1 つを FAX 用に公開しますが、ユニファイド メッセージング サーバーは、DID 内線番号で受信した呼び出しの種類を検出し、どちらの DID 内線番号への呼び出しからでも音声メッセージまたは FAX メッセージを作成できます。これは、ユーザーが別の FAX マシンまたは着信 FAX 呼び出しに応答するための FAX モデムがインストールされている専用コンピューターを持っていない場合に、非常に役に立ちます。

  • 2 つの DID 番号 (1 つは FAX 用の "実体のない" 内線、もう 1 つは音声用)   この種類の構成は、ユーザーごとに有効にします。基本的には、2 つの DID 番号 (1 つは FAX 用、もう 1 つは音声用) を使用する構成と同じです。ただしこの構成では、UM が有効なユーザーの FAX 呼び出し用として公開される番号は、PBX で "実体のない" 内線として構成されます。この "実体のない" DID 内線番号で受信される着信呼び出しは、常にユニファイド メッセージング サーバーに転送されます。

    この種類の構成の利点は、着信 FAX 呼び出しがユニファイド メッセージング サーバーによって応答されることです。応答がない場合はユニファイド メッセージング サーバーによって FAX が作成され、ユーザーの邪魔をすることなく UM が有効なユーザーのメールボックスに送信されます。ユーザーの邪魔をすることなく送信されるのは、ユーザーの近くに電話や FAX デバイスが配置されておらず、ユーザーには着信呼び出しの呼び出し音が聞こえないためです。

    この種類の構成の不利な点は、使用できる追加の DID 内線が必要であることと、呼び出しをユニファイド メッセージング サーバーに転送するように PBX を構成する必要があることです。

中央の FAX 電話番号

ユニファイド メッセージングの有効化ウィザードまたは Enable-UMMailbox コマンドレットを使用してユーザーのユニファイド メッセージングを有効にするときは、そのユーザーに少なくとも 1 つの内線番号を指定する必要があります。この種類の FAX 構成は、個々のユニファイド メッセージング ダイヤル プランで定義されます。

一部の組織、特に毎日多くの FAX を受信する組織では、組織全体で 1 つの FAX 番号を公開する必要がある場合があります。組織内のユーザーに FAX を送信するすべての発信者がこの FAX 番号を使用します。この種類の構成は、以下の状況で役立ちます。

  • 組織内のユーザーがメールボックスで受信する FAX 数が多すぎて効果的に管理できない。

  • ユーザーがメールボックスで受信するスパム FAX の数が多すぎる。

  • ビジネス ロジックが複雑すぎてトランスポート ルールの作成を保証できない。この状況は、組織がユーザーに、特定の FAX を 1 つのグループにルーティングし、他の FAX を別のグループにルーティングすることを要求する場合に発生する可能性があります。詳細については、以下のトピックを参照してください。

  • Outlook を使用した FAX メッセージのフィルター処理が効果的でない。

組織全体用に 1 つの FAX 番号を公開すると、ユーザーが受信する FAX の種類を組織で管理できます。この構成の利点は、単一の DID 内線番号または外線電話番号のみあればよいということです。また、UM が有効なユーザーごとに FAX 用の DID 番号を指定する必要がありません。ただし、FAX の送付状や FAX 自体に含まれている情報を基に着信 FAX を組織内のユーザーに配布する、"FAX 担当秘書" のような人が必要になります。

注意

Exchange 2010 ユニファイド メッセージングで、光学式文字認識 (OCR) と共に中央の FAX 番号を使用することはできません。この種類の構成で、中央の FAX 番号を使用することは可能です。ただし、人が受信者に FAX を配布するのではなく、FAX ソフトウェアが FAX を受信し、OCR を実行し、送付状や FAX メッセージの情報に基づいて受信者を見つけます。

UM FAX メッセージのジャーナリング

ジャーナリングを実装する組織の多くでは、ユニファイド メッセージングを使用して、電子メール、ボイス メール、および FAX のインフラストラクチャも統合している場合があります。ただし、ユニファイド メッセージングにより生成されたメッセージのジャーナル レポートをジャーナリング プロセスで処理したくはない場合もあるでしょう。この場合、Exchange 2010 ユニファイド メッセージング サーバーによって処理されるボイス メール メッセージや不在着信通知メッセージをジャーナルするか、あるいはこのようなメッセージはスキップするかを決めることができます。組織でこれらのメッセージのジャーナリングが不要な場合は、メッセージをスキップすることで、ジャーナル レポートを格納するために必要なハード ディスク領域を減らすことができます。ボイス メール メッセージや不在着信通知メッセージのジャーナリングを有効または無効にすると、その変更は組織内のすべてのハブ トランスポート サーバーに適用されます。詳細については、「ジャーナルについて」を参照してください。

注意

ユニファイド メッセージング ボイス メールや不在着信通知メッセージをジャーナルの対象にしないというジャーナル ルールを構成している場合でも、ユニファイド メッセージング サーバーで生成された FAX を含むメッセージは常にジャーナルの対象になります。

FAX 送受信の概要

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