ユニファイド メッセージングのパフォーマンスとスケーラビリティについて

 

適用先: Exchange Server 2010 SP2, Exchange Server 2010 SP3

トピックの最終更新日: 2009-11-30

今日、多くの組織では、電子メールとボイス メールへのアクセス機能が毎日の運用を成功させるために欠かせません。電子メールとボイス メールに継続的にアクセスできるようにするには、Microsoft Exchange Server 2010 に対して、これらのサービスを提供するサーバーの可用性を確保するソリューションを正しく計画および実装する必要があります。Exchange 2010 ユニファイド メッセージング (UM) でスケーラビリティの高いソリューションを提供するには、UM コンポーネントを拡張してユーザーをサポートする方法について理解する必要があります。

ユニファイド メッセージング サーバーのスケーラビリティ

スケーラビリティは、特定のサービスの処理能力を高めるためにリソースを増やす機能と定義されます。組織の UM サーバーの処理能力を高めるために使用できるスケーラビリティには、水平と垂直の 2 種類があります。ユニファイド メッセージングでは、垂直に拡張するときは、次に示すように、単一または複数の UM サーバーにハードウェア リソースを追加します。

  • メッセージ格納域用のハード ディスク容量の追加

  • より高速またはより多数のプロセッサの使用

  • より多数または高速の RAM の使用

  • ネットワーク アダプターの追加、または単一のネットワーク アダプターでのローカル エリア ネットワーク ポートの追加

ユニファイド メッセージングでは、水平に拡張するときは、新しい UM サーバーにユニファイド メッセージング サーバーの役割をインストールし、ダイヤル プランに UM サーバーを追加して、システムが受け付けることのできる同時着信呼び出しの数を増やします。UM 環境を水平に拡張するには、IP ゲートウェイの数を増やすこともできます。これにより、着信呼び出しに使用できるポートの数が増えます。

ユニファイド メッセージングが提供する効率的で単純な展開モデルは、拡張性が高く、それでいて展開が複雑になることはありません。組織内のユニファイド メッセージングには多くの展開モデルがあります。ただし、ユニファイド メッセージングに対して推奨される展開モデルは、UM サーバーを集中化するものです。ユニファイド メッセージングで使用可能なすべての展開オプションには、多数の UM ユーザーをサポートする拡張性の高いシステムを作成するために必要な、共通の手順がいくつかあります。これらの手順は次のとおりです。

  1. PBX 回線の準備   拡張性の高い UM ソリューションを作成するための最初の手順は、PBX 回線を準備することです。

  2. チャネルの編成   PBX ベースの音声チャネルを準備した後、チャネルをハント グループとして編成できます。

  3. IP ゲートウェイの展開   音声チャネルをハント グループとして編成した後は、これらのチャネルを IP ゲートウェイで終了させます。IP ゲートウェイと従来の PBX を使用して、テレフォニー ネットワークで使用されている回線交換プロトコルを、IP ベースのパケット交換プロトコルに変換します。

  4. ダイヤル プランへのユニファイド メッセージング サーバーの追加   ユニファイド メッセージングが処理できる呼び出しの数を増やす必要がある場合は、追加の UM サーバーをインストールして設定し、ダイヤル プランに追加します。通常、IP ゲートウェイは、DNS を使用して、既存の UM サーバーと、インストールした追加の UM サーバーの間で負荷を分散します。

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ネットワーク トラフィック

IP ゲートウェイから着信呼び出しを受信するたびに、IP ベースのネットワーク トラフィックが生成され、使用可能なネットワーク帯域幅の一部を消費します。ユニファイド メッセージングを展開する前に、ネットワーク トラフィックを分析して、現在の使用パターンを特定し、潜在的な問題を発見する必要があります。ほとんどのネットワークでは、帯域幅の需要は、勤務時間を通じて一定ではありません。IP ベースの呼び出しはすべて、ネットワーク上の IP ゲートウェイから UM サーバーに直接ルーティングされ、この IP ベースのネットワーク トラフィックは利用可能な帯域幅を消費するので、以下の推奨事項とガイドラインに従う必要があります。

  • PBX と IP ゲートウェイは、物理的に近い場所に配置します。

  • IP ゲートウェイと UM サーバーは、適切に接続された同じネットワーク上、または同じ物理サイト内に配置します。

  • UM サーバーは、メールボックス サーバー、ハブ トランスポート サーバー、クライアント アクセス サーバーなどの Exchange 2010 サーバーの役割がインストールされた他のコンピューターと同じ適切に接続された同じネットワーク上、または同じ物理サイト内に配置します。

  • ワイド エリア ネットワーク (WAN) 接続は、テレフォニー装置がある場所の近くで終端します。

  • 支社のシナリオまたは WAN 接続の場合は、G.711u または G.711A コーデックの代わりに G.723.1 コーデックを使用して、IP ゲートウェイと UM サーバーの間で受け渡されるネットワーク トラフィックを最小にします。

UM サーバー

一般的に、ユニファイド メッセージングのスケーラビリティは、同時呼び出しの数で決定されます。既定では、1 つの UM サーバーは、最大で 100 件の同時音声呼び出しを受け付けることができます。これらの呼び出しは、着信でも発信でもかまわず、ユーザーがボイス メール メッセージを残したとき、Outlook Voice Access ユーザーが Exchange 2010 メールボックスにアクセスしたとき、またはユーザーが電話での再生機能を使用して音声メッセージを聞くときに生成できます。スケーラビリティに優れた UM インフラストラクチャを構築する際、同時呼び出しの数は重要な要素ですが、音声メッセージのエンコードに使用する最適なコーデック、およびサポートするユーザーの種類と数も決定する必要があります。

  • 同時呼び出しの数 1 つの UM サーバーが受け付けることのできる同時音声呼び出しの数は、既定では 100 件ですが、最大で 200 件の同時音声メッセージを受け付けるように設定できます。1 つの UM サーバーでの同時接続数を大きくすると、よりも多くのリソースが必要になります。ローエンドの低速なコンピューターに UM サーバーの役割がインストールされている場合は、この設定を小さくすることが特に重要です。UM サーバーに現在接続している呼び出しの数を監視するには、パフォーマンス カウンターおよび Get-UMActiveCalls コマンドレットを使用できます。

    組織で必要な同時呼び出しの数が、単一の UM サーバーがサポートする数より多い場合は、追加のサーバーにユニファイド メッセージング サーバーの役割をインストールし、新しい UM サーバーを同じダイヤル プランに追加することで、水平拡張を行って、同時呼び出しの処理能力を増やすことができます。

  • ボイス メール格納コーデック   "コーデック" という用語は、"コーディング" と "デコーディング" という用語を組み合わせたもので、デジタル データに関係します。コーデックは、デジタル データをオーディオ ファイル形式またはストリーミング オーディオ形式に変換するコンピューター プログラムまたはソフトウェアです。

    Microsoft Exchange ユニファイド メッセージングでの一般的なコーデックには、IP ゲートウェイ間で使用されるコーデックと、音声メッセージのエンコードに使用されるコーデックの 2 種類があります。音声メッセージ用の mp3, .wma および .wav オーディオ ファイルを作成するには、MP3、Windows Media オーディオ (WMA)、Group System Mobile (GSM) 06.10、および G.711 パルス符号変調 (PCM) リニア オーディオ コーデックが使用されます。ただし、使用されるファイルの種類は、音声メッセージのオーディオ ファイルの作成に使用されるオーディオ コーデックによって異なります。Microsoft Exchange ユニファイド メッセージングでは、MP3 オーディオ コーデックにより .mp3 オーディオ ファイルが作成され、WMA オーディオ コーデックにより .wma オーディオ ファイルが作成され、GSM 06.10 と G.711 リニア PCM オーディオ コーデックにより .wav オーディオ ファイルが作成されます。使用されるコーデックに応じて, .wma 形式または .wav 形式のオーディオ ファイルが、電子メール メッセージと共に、目的のボイス メール受信者に送信されます。UM 音声メッセージのサイズは、音声データを保持する添付ファイルのサイズによって異なります。また、添付ファイルのサイズは、次の要素によって異なります。

    • ボイス メールの録音時間

    • 使用されるオーディオ コーデック

    • オーディオ ファイルの保存形式

    次の図は、ユニファイド メッセージングで使用できる 4 つのオーディオ コーデック、およびボイス メール録音時間によってオーディオ ファイルのサイズがどのように異なるかを示しています。

    オーディオ ファイルのサイズ

    UM_Message_Sizing

    ユニファイド メッセージングで使用される各オーディオ コーデックのサンプル ビット レート (bps) と圧縮プロパティは次のとおりです。

    • MP3 – 16 ビット – 圧縮ファイル

    • WMA – 16 ビット – 圧縮ファイル

    • G.711 – 16 ビット – 非圧縮ファイル

    • GSM – 8 ビット – 圧縮ファイル

    既定では、MP3 形式が選択されています。MP3 形式はオーディオ ファイルのサイズを大幅に減らすのに使用される一般的なオーディオ ファイル形式で、パーソナル オーディオ デバイスや MP3 プレーヤーで最も一般的に使用されているファイル形式です。MP3 はプラットフォームに依存しない種類のオーディオ コーデックで、多くの携帯電話、モバイル デバイス、コンピューター オペレーティング システム間での互換性を保つために使用されています。

    WMA コーデックを使用した場合、各 UM サーバーは 60 ~ 75 の IP ベース呼び出しを同時に処理できるものと推定されます。この推定は、1 日の中で最も忙しい 1 時間の間に、全 IP ベース呼び出しの 14% が到着するという仮定に基づいています。次の前提に基づいています。

    • WMA コーデックを使用する

    • 1 日の中で最も忙しい 1 時間の間に、全 IP ベース呼び出しの 14% が到着する

    • ユーザーは Outlook Voice Access を使用して頻繁に音声メッセージにアクセスする

    各 UM サーバーで 2,000 ~ 10,000 人のユーザーをサポートできると推定しています。

    一般的に、UM サーバーごとに次の同時呼び出し数に対応する必要があります。

    • 既定のダイヤル プランのコーデックが WMA の場合は 60

    • 既定のダイヤル プランのコーデックが GSM の場合は 75

  • ユーザーの種類 UM システムにアクセスするユーザーには、認証されたユーザーと認証されていないユーザーの 2 種類があります。拡張性のある UM 環境を構築するときは、これらのユーザーによる影響、および各ユーザーが消費するリソースを考慮する必要があります。

    • 認証されたユーザー   認証されたユーザーは、UM が有効であり、Outlook Voice Access を使用してメールボックスにアクセスできます。認証されたユーザーは、サブスクライバー アクセス番号の直接呼び出し、メールボックスへのサインイン、メッセージ、予定表、連絡先、ディレクトリへのアクセス、電話での再生機能を使用して電話で音声メッセージを再生するための UM サーバーの使用など、さまざまな方法で UM サーバーのリソースを消費します。また、呼び出しを転送したり、音声メッセージを送信したり、ユーザーの内線番号を呼び出して音声メッセージを残したりすることにより、間接的にリソースを消費することもあります。

    • 認証されていないユーザー   UM 自動応答やサブスクライバー アクセス番号は呼び出しても、メールボックスにはサインインしないユーザーは、認証されていない発信者です。ユーザーが UM 自動応答を呼び出したり、サブスクライバー アクセス番号を使用したりするたびに、その要求に対応するために UM リソースが使用されます。ユーザーがメールボックスにサインインしない場合でも、呼び出しの転送、音声メッセージの送信、別の自動応答への転送、別の電話番号への転送、録音されているオーディオ プロンプトの聴取などにより、リソースを消費します。

IP ゲートウェイ

ユニファイド メッセージングは、IP ゲートウェイの機能を使用して、PBX からの総合デジタル通信網 (ISDN) や QSIG などの TDM または電話回線交換型プロトコルを、SIP、RTP、リアルタイムの FAX 転送用の T.38 などの、VoIP または IP に基づいたプロトコルに変換します。

IP ゲートウェイは、4 ~ 32 ポートの範囲のサイズとモデルで、複数の製造元から入手できます。容量とフォールト トレランスを提供するために必要なだけいくつでも、IP ゲートウェイを展開できます。必要な呼び出しまたはポートの数が、単一の IP ゲートウェイでサポートされる数より多い場合は、追加の IP ゲートウェイをインストールして設定し、UM IP ゲートウェイ オブジェクトを作成して、環境のサポートに適したハント グループを設定することで、水平拡張を行って、受け付けられる呼び出しの数やポートの数を増やすことができます。

環境内に存在する IP ゲートウェイの数と、使用可能な UM サーバーの数を一致させることも、同じように重要です。たとえば、10 個の IP ゲートウェイを、T-1 回線で単一の UM サーバーに接続するのは、良いことではありません。このようにすると、UM サーバーは 240 の同時着信呼び出しをサポートする必要があります。このことを考慮し、UM サーバーに対する IP ゲートウェイを適切に拡張する必要があります。

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