ガバナンスとは
ガバナンスとは、組織がビジネス目標を達成するにはどのような方法でテクノロジを使用すればよいかを示すために、企業内で確立される一連のポリシー、役割、責任、およびプロセスです。ガバナンスの実効性を高めるには、組織の IT チームと業務部門双方のニーズと目標を反映させる必要があります。ガバナンスは、Microsoft Office SharePoint Server 2007 などの製品とテクノロジの展開を IT チームが管理しやすくし、ビジネス ツールとしての実効性を高めるポリシーとガイドラインも提供します。ガバナンスは、セキュリティ上の脅威や規制遵守の不徹底を防止し、企業を保護するために役立ちます。また、コンテンツ管理や情報アーキテクチャのベスト プラクティスを徹底するようなガバナンスを適用することで、テクノロジへの投資の収益率を最大化することもできます。
各組織には、ガバナンスに対するアプローチに影響を及ぼす固有のニーズと目標があります。あらゆる組織の文化や要件に対処できる万能のアプローチはありません。たとえば、大規模な組織には、小規模な組織よりも厳格なガバナンスが必要になります。
Office SharePoint Server 2007 を展開することで、情報の共有、共同作業、およびビジネス プロセスの実装を行うための新しい手段を組織で利用できるようになります。そのため、Office SharePoint Server の管理上、新しい事項について考慮する必要性が生じます。ガバナンスに関する以降の記事では、Office SharePoint Server の展開を管理する必要性を明らかにすると共に、組織で管理対象となる可能性がある Office SharePoint Server のアクティビティとプロセスの種類を例示します。
この記事の内容 :
管理の対象
ガバナンス ポリシーの決定者
ガバナンスの実装方法
管理の対象
Office SharePoint Server を展開すると、組織では、コンテンツの管理、コンテンツに対する洞察力の向上、ビジネス プロセスの合理化、情報へのアクセス、情報の共有が可能になります。Office SharePoint Server の展開を成功させるには、組織の IT 部門の制約やポリシーと矛盾のない方法でこれらの組織のニーズを満たす必要があります。ガバナンスは、企業がこれらの要件のバランスを調整するための手段です。Office SharePoint Server に基づくソリューションの実効性と管理のしやすさを維持するには、組織は次の領域のガバナンスについて検討しなければなりません。
情報アーキテクチャ
企業の効率性は、インフォメーション ワーカーがコンテンツやデータをどの程度迅速かつ正確に探し当て、使用できるかにかかっています。適切に設計および管理された情報アーキテクチャがないと組織の効率性が損なわれるおそれがあります。次にその例を示します。
メタデータの使用方法に一貫性がないと、関連する情報項目の検索と比較が複雑になる可能性があります。
コンテンツのストレージが適切に設計、管理されていないと、ドキュメントの複製が多数作成される可能性があります。その結果、ユーザーが正式なバージョンを特定できなくなります。
データのストレージが適切にカタログ化、管理されていないと、意志決定者が不適切なデータを使用するおそれがあります。
ポータル ナビゲーションが適切に設計されていないと、業務に不可欠なサイトや情報を見つけるのが困難になる可能性があります。
情報が適切に表示されないと、一部のユーザーが情報にアクセスすることが困難になる可能性があります。
企業の情報アーキテクチャの管理は、Office SharePoint Server 2007 を正しく使用するうえで欠かせません。その管理作業には、業務管理者、コンテンツ管理者、インフォメーション ワーカー、サイト設計者、および IT プロフェッショナルが関与する必要があります。
SharePoint Server をホストする IT サービス
企業が抱える共通の問題は、Windows SharePoint Services 3.0 または Office SharePoint Server 2007 が稼働している、個別に管理された Web サーバーが急増することです。個々のチームが 1 つ以上の SharePoint 製品とテクノロジの導入を進めることは避けられませんが、導入状況を管理しておかないと問題が生じるおそれがあります。次にその例を示します。
情報が各サーバーで完結し、検索インデックス、ナビゲーション、およびセキュリティ スキーマが統一されないサイトがばらばらに発生するおそれがあります。
セキュリティ保護されていない、会社に害を及ぼすアプリケーションが一部のサーバーにホストされるおそれがあります。
十分なトレーニングを受けていないユーザーが、サポート チームが把握していないローカル サーバーでサポートの要求を行う可能性があります。
法令順守のようなきわめて重要な活動が、サーバー間で一貫性のない方法で管理される可能性があります。
不十分なトレーニングや、サーバーの構成に一貫性がないことが原因で、定期的なメンテナンス作業 (データのバックアップと復元、製品の更新プログラムのインストールなど) が適切に行われないおそれがあります。
サイトの所有者がチームを移った場合や退職した場合に、コンテンツの所有者がわからなくなったり、サイトがロックされたりするおそれがあります。
十分な計画が練られないうちに Office SharePoint Server 2007 が社内にばらばらに導入されることはよくあります。個人や小規模なチームが独自に展開を行い、使用し始めるためです。組織内での同製品の使用が増えてきたら、IT 部門が適切に管理された一連のホスティング サービスを計画して実装し、このサービスを通じて管理された方法で Office SharePoint Server 2007 を使用できるようにすることをお勧めします。 詳細については、次を参照してください。 SharePoint サービスを確立および管理する.
カスタマイズ ポリシー
Office SharePoint Server 2007 には、ビジネス インテリジェンス、フォーム、ワークフロー、コンテンツ管理など、複数の製品の領域にまたがるカスタマイズ可能な機能が用意されています。ただし、カスタマイズに伴って、Office SharePoint Server 環境の安定性、保守性、およびセキュリティに対する新たなリスクが生じます。管理された方法でのカスタマイズをサポートするために、次の要素を考慮したカスタマイズ ポリシーを策定してください。
使用を許可するカスタマイズ ツール。
ソース コードの取り扱い方法 (ソース コードをソース コントロール システムで管理する方法、ソース コードの文書化方法など)。
開発標準 (コーディングのベスト プラクティスなど)。
テストと検証の標準。
必要なパッケージ化手段とインストール手段。
サポートされるカスタマイズの種類。
カスタマイズの管理プロセスの詳細については、ホワイトペーパー「SharePoint 製品とテクノロジのカスタマイズ ポリシー」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=92311&clcid=0x411) を参照してください。
ブランド化
会社全体で使用する情報アーキテクチャと一連のサイトを設計している場合、ガバナンス ポリシーにブランド化を含めることを検討してください。ブランド化ポリシーを実装することで、企業のイメージ、フォント、テーマ、およびその他のデザイン要素がサイトに一貫して使用されるようになります。
トレーニング
ガバナンス計画にトレーニング計画を盛り込むことを検討してください。Office SharePoint Server は直感的な Web ベースのインターフェイスとオンライン ヘルプを備えていますが、一部のユーザーにとって、Office SharePoint Server に基づくサイトの使用や管理は複雑な場合があります。ユーザーの許可レベルに応じて使用が許可される一連の機能がこれを一段と複雑にすることもあります。さらに、IT 部門や業務部門が実装する一連のガバナンス ポリシーには、説明が必要な場合もあります。ユーザー コミュニティに適切なトレーニングを提供することで、SharePoint の実装に対する満足度を高め、サポート コストを抑えることができます。
ガバナンス ポリシーの決定者
Office SharePoint Server の展開を成功させるには、企業の業務部門が求めている機能を、企業の IT 組織が管理、維持可能な方法で提供できるようにする必要があります。そこで、企業内の IT プロフェッショナル、業務管理者、およびインフォメーション ワーカーが継続的に話し合いを行い、連携していかなければなりません。そのためには、これらすべての関係者をガバナンスの担当グループに加えて、Office SharePoint Server の展開を効果的に管理する必要があります。
企業の Office SharePoint Server サービスと情報アーキテクチャの管理を担当するグループを結成する際には、次の役職を加えることを検討してください。
上級管理者 主要な上級管理者は、ガバナンスの担当グループの全体的な目標を定め、そのグループに権限を与え、実装されたプラクティスとポリシーの成功の度合いを定期的に評価する必要があります。
財務担当者 ガバナンスの規則とプロセスは、企業が SharePoint 製品とテクノロジに対して行った投資の収益率を高めるうえで役立つものです。ただし、これを実現するには、財務担当者がガバナンスの担当グループに加わる必要があります。
IT リーダー IT リーダーは、サービスの開発を支援し、IT 部門に課された責務 (セキュリティの確保、信頼性の維持など) を果たす方法を決定すると共に、業務チームが必要とする機能を提供する必要があります。
業務部門のリーダー 業務リーダーとは、会社の主要な業務を遂行し、Office SharePoint Server の展開にかかわるアーキテクチャと機能の要件を明らかにするチームのことです。業務リーダーは、会社の情報アーキテクチャと組織の分類法の標準を決定する際に支援を行い、IT リーダーと連携してサービス レベル アグリーメントやその他のサポート ポリシーを策定する必要があります。
法令遵守責任者 ガバナンスには、企業が規則や法律上の要件を満たし、企業知財が管理されるように確認する作業も含まれます。社内にコンプライアンスや法律への準拠を監督する部署が存在する場合は、その部署の代表者をガバナンスの担当グループに加えてください。
開発リーダー ソフトウェア開発組織のリーダーは、使用を許可するカスタマイズ ツール、コードのセキュリティの検証方法、その他コード関連のベスト プラクティスを決定する際の支援を行う必要があります。
インフォメーション ワーカー 日常業務を遂行する組織のメンバは、Office SharePoint Server サービスと情報アーキテクチャを自身のニーズに合わせる必要があります。
ガバナンスの実装方法
どの企業にも固有の特徴があります。そのため、独自のガバナンス計画を実装するうえでの最善の方法を明らかにしなければなりません。推奨されるガバナンスの実装過程を以下に示します。各自の組織で検討してください。
最初の原則と目標を決定する ガバナンスの担当グループは、コンプライアンスの状況を追跡し、企業に対するメリットを数値化するために測定できる、ガバナンスのビジョン、ポリシー、および標準を最初に策定する必要があります。たとえばこの段階では、最初の IT サービスに加えて、最初の会社メタデータ分類法を決定できます。最初の原則、目標、および標準は、公表する必要があります。
教育戦略を策定する 決定したガバナンス ポリシーを社内に公開し、継続的な教育とトレーニングの計画を策定する必要があります。これには、Office SharePoint Server の使用方法のトレーニングと、ガバナンスの標準とプラクティスに関するトレーニングが含まれることに注意してください。たとえば、IT 部門は、Office SharePoint Server サービスに対するユーザーの疑問を解消するために、よく寄せられる質問 (FAQ) を掲載したページを Web サイトに追加できます。業務部門は、組織のドキュメント管理システムの実装方法と使用方法を説明するオンライン トレーニングを提供できます。
持続的な計画を策定する ガバナンスを成功させるには継続的な取り組みが不可欠なため、ガバナンスの担当グループは定期的に話し合いの場を持つ必要があります。ガバナンス計画への新しい要件の盛り込み、ガバナンスの原則や標準の再評価と調整など、さまざまな取り組みを続けなければなりません。IT 部門と 1 つ以上の業務部門との間などで競合するニーズが生じた場合は、解決しなければならないこともあります。ガバナンスの担当グループは、説明責任を果たし、会社全体でコンプライアンスを徹底するために、役員レベルの支持者に定期的に報告する必要があります。こうした活動が面倒に思われても、Office SharePoint Server への投資の収益率を高め、Office SharePoint Server ソリューションの実用性を最大化し、会社の生産性を向上させることが目的であることを忘れないようにしてください。
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入手可能なドキュメントの詳細な一覧については、「Office SharePoint Server 2007 のダウンロード可能なブック」を参照してください。
関連項目
概念
Office SharePoint Server 2007 のガバナンス機能