SharePoint Server 2010 のフォームについて

 

適用先: SharePoint Server 2010

トピックの最終更新日: 2016-11-30

ここでは、Microsoft SharePoint Server 2010 ソリューションで InfoPath フォームを使用してデータを収集する方法のメリットを学習します。フォームが幅広いビジネス ソリューションで果たす役割と、Microsoft InfoPath 2010 を使用して作成できるフォームの種類について説明します。

この記事の内容

  • InfoPath フォームの概要

  • SharePoint ソリューションでのフォームの役割

  • InfoPath フォームの種類

  • フォームを展開する

  • フォームに入力する

InfoPath フォームの概要

すべてのビジネス プロセスには、なんらかの種類のデータを収集する作業があり、ビジネス プロセスの成否はそのようなデータの品質と整合性によって決まります。SharePoint ソリューションで InfoPath フォームを使用すると、品質の良い有効なデータのみを確実に収集できます。InfoPath 2013 は、コードを書かなくてもデータ収集プロセスの標準化、カスタマイズ、および最適化を行えるようにすることで、これを実現しています。

データの整合性を得るために InfoPath は次の主要な機能を提供します。

  • カスタム データ検証。ユーザーが無効なデータを入力してフォームを送信することを阻止します。

  • レイアウトのカスタマイズ。複数のビューを使用できるので、フォームを複数のページに分割するか、特定のユーザーまたはタスク向けに最適化した複数のビューを作成することにより、フォーム入力の操作手順を簡略化できます。条件付き書式は、フォーム入力の操作手順を最適化するのに便利です。たとえば、ユーザーが入力した値に基づいてフォーム内のフィールドの表示と非表示を切り替えることができます。

  • データ接続。SharePoint リスト、Web サービスなどの他のソースに接続して文脈に応じた補助的なデータをフォームに取得できます。

これらの機能を実行するためにコードを作成する必要はありません。ただし、Visual Studio Tools for Applications (VSTA) を使用して管理コードを作成すると、フォームに高度な機能を追加できます。

SharePoint ソリューションでのフォームの役割

フォームは、すべてのビジネス プロセス管理ソリューションで役割を演じます。以下に示すのは、InfoPath フォームを使用するビジネス ソリューションやアプリケーションのほんの一部の例です。

  • フォーム主導型アプリケーション。データを収集するためのフォームから開始し、データを処理およびレポートするためのワークフロー、レポート作成、ユーザー設定の Web ページ、外部リストなど、他の SharePoint 機能を追加していきます。たとえば、ヘルプ デスクの Web サイト、調達センター、人事部採用センターなどをこの方法で作成できます。

  • ドキュメント ワークフロー アプリケーション。ドキュメント ベースのビジネス プロセスを自動化します。InfoPath フォームをワークフローに追加して、ワークフローのあらかじめ決められた段階でユーザーから情報を収集できるようにすると共に、ユーザーがワークフローのタスクを対話式に操作できるようにします。たとえば、契約の承認、技術仕様のレビュー、法律文書の処理などをこの方法で作成できます。

  • ビジネス データ アプリケーション。Business Connectivity Services を経由して SharePoint Server で使用可能な外部システムにあるデータから処理を開始します。外部システムのデータは、SharePoint Server から外部リストを使用してアクセスし、InfoPath フォームを使用して追加、表示、更新、および削除ができます。たとえば、カスタマー リレーションシップ マネジメント、エンタープライズ リソース プラニングなどをこの方法で処理できます。

  • 一時的なビジネス プロセス。このプロセスは、SharePoint リストを使用して管理できます。これらのリスト内のアイテムの作成、読み取り、および更新に使用するフォームは、InfoPath 2013 を使用してカスタマイズできます。たとえば、単純な問題追跡リスト、タスク リストを作成できます。

  • ドキュメント情報パネル。このパネルでは、InfoPath フォームを使用してドキュメント メタデータを Microsoft Office system クライアント アプリケーション内に表示します。

InfoPath フォームの種類

組織とそのビジネス リソースおよびニーズによって、フォームの設計者が、フォーム ベースの設計と開発を専門とするエキスパートである場合もあれば、インフォメーション ワーカー、ソリューション全体の設計者、サイト設計者、サイト コレクションの管理者、Web 開発者、ファームの管理者など、別の主要な担当業務を持つ他のユーザーである場合もあります。

設計するフォームの種類は、ビジネス ソリューションの要件によって左右されます。

InfoPath コンポーネント

InfoPath は、次の 2 つの主要なコンポーネントから構成されます。

  • InfoPath 2010 は、次の 2 つのモードがある Office system クライアント アプリケーションです。

    • Microsoft InfoPath Designer 2010 は、フォーム テンプレートを作成するために使用します。フォーム テンプレートには、フォームのデータ構造、外観、および動作を定義します。設計プロセスが完了したら、フォーム テンプレートを SharePoint Server に発行して、ユーザーがそのテンプレートに基づいてフォームへの入力を開始できるようにします。

    • Microsoft InfoPath Filler 2010 は、SharePoint Designer で作成されたフォーム テンプレートに基づいてフォームに入力するために使用します。

  • Microsoft SharePoint Server 2010 の InfoPath Forms Services を使用すると、フォームを Web ブラウザーに表示できます。これは、SharePoint Server 2010 Enterprise Edition の機能として使用できます。ファーム管理者は、InfoPath Forms Services の設定を SharePoint サーバーの全体管理 Web サイトで構成できます。

Web ブラウザー フォームと Filler のみのフォーム

フォームを設計する際は、Web ブラウザー フォームを作成するのか、Filler のみのフォームを作成するのかを最初に決める必要があります。ブラウザー フォームは、Web ブラウザー内で入力できますが、Filler のみのフォームは InfoPath Filler 2013 でのみ入力できます。

ブラウザー フォームを使用する主な利点は、フォームの入力を行うユーザーがコンピューターに InfoPath 2013 をインストールする必要がないことです。ブラウザー フォームは、ブラウザー上で入力できます。InfoPath Forms Services は、ブラウザー フォームを SharePoint Server に発行し、ブラウザー上に表示するために必要です。ただし、特定の機能とコントロールが Web ブラウザー フォームではサポートされないことに注意する必要があります。Filler のみのフォームを作成するのは、主にこのことを理由とします。

Web ブラウザー フォーム

ブラウザー フォームには、次の種類があります。

  • リスト フォーム

  • 外部リスト フォーム

  • フォーム ライブラリ フォーム

  • ワークフロー フォーム

SharePoint リスト フォーム

SharePoint Server 2010 では、InfoPath 2013 を使用して SharePoint リスト内のアイテムの作成、編集、および表示を行うためのフォームを拡張し、強化できるようになりました。SharePoint リストに発行された InfoPath フォーム テンプレートは、既定の SharePoint リスト フォームを置き換えます。

リストの各コンテンツ タイプには固有の SharePoint リスト フォームがあり、これらは InfoPath Designer を使用してカスタマイズできます。

InfoPath Designer でリスト フォームをカスタマイズすると、既定の SharePoint リスト フォームではサポートされない次の機能を SharePoint リストに追加して拡張できます。

  • フォームに入力されるデータを検証するルールを追加する。たとえば、組織の注文を追跡するフォームを使用する場合、注文ごとに支払い限度額を設定できます。

  • 特定の条件に基づいてデータの書式を設定するルールを追加する。フォームの設計者は、フィールドの表示と非表示を決定し、コントロールを有効または無効にし、ビューを切り替え、フィールド内のデータに値を設定できます。たとえば、在庫追跡フォーム テンプレートでは、新しい在庫を要求するユーザーと新しい在庫を購入する組織の管理者とで異なる情報を表示できます。

  • 他のソースからデータをクエリする。たとえば、外部システムにある在庫の状態をチェックし、特定のアイテムが使用できないことをユーザーにすぐに通知できます。

  • フォームのレイアウトと外観を変更する。たとえば、フォーム内で必須フィールドを目立つ位置に移動すると、ユーザーが容易に見つけて入力できるようになります。また、タスクやユーザーの権限に応じて最適化されたビューを追加することもできます。

これらのカスタマイズ オプションと組み込みのビューおよびフィルター処理のオプションを SharePoint リストで使用できるので、一時的なプロセスから構造化された複雑なビジネス プロセスに至るまで、多くの種類のビジネス ソリューションでリスト フォームを利用できます。

SharePoint リスト フォーム テンプレートには、マネージ コードを含めたり、データを繰り返したり、データを入れ子にすることはできません。全体のソリューションでマネージ コードまたは複雑なデータ構造がフォームに必要とされる場合は、フォーム ライブラリを使用してください。

外部リスト フォーム

Business Connectivity Services を使用すると、データベース、Web サービスなど、外部システムにあるデータを SharePoint 外部リストを使用して操作できます。外部リストは、外部コンテンツ タイプから作成されます。通常の SharePoint リストと同様に、InfoPath 2013 では、外部リスト内のアイテムの作成、読み取り、更新、および削除を行えます。

フォーム ライブラリ フォーム

フォーム ライブラリは、InfoPath フォームを既定のコンテンツ タイプとして使用する SharePoint ドキュメント ライブラリです。フォーム ライブラリで [新規] ボタンをクリックすると新しいフォームが作成され、ユーザーによって入力されたフォームは個別の XML ファイルとしてライブラリに保存されます。

フォーム ライブラリ フォームは、ソリューションで次のいずれかの機能が必要な場合に使用します。

  • データの繰り返しまたは入れ子

  • デジタル署名

  • マネージ コード

  • フォーム データの XML への保存

ワークフロー フォーム

フォームの設計者は、InfoPath Designer を使用して、ユーザーが SharePoint ワークフローのタスクを対話式に操作するために入力するフォームをカスタマイズできます。

フォーム テンプレートを設計する方法については、「InfoPath のヘルプと使い方」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=185225&clcid=0x411) を参照してください。

ユーザー設定コードが含まれるフォーム テンプレートを設計する方法については、SharePoint デベロッパー センターの「InfoPath Forms Services (英語)」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=185226&clcid=0x411) (英語) を参照してください。

フォームを展開する

フォーム ライブラリ フォームの発行オプションは、フォーム テンプレートにマネージ コードが含まれるかどうか、フォームの設計者のアクセス許可、および InfoPath Forms Services の設定によって異なります。

コードが含まれないブラウザー フォームを発行する

マネージ コードが含まれない Web ブラウザー フォームは、デザイン レベルの権限を持つユーザーであればだれでも SharePoint Server に直接発行できます。フォーム テンプレートの発行には、InfoPath Designer を使用します。

ファームの管理者は、サーバーの全体管理の InfoPath Forms Services 構成オプション ページでブラウザー対応フォーム テンプレートの発行を無効にすることにより、SharePoint Server へのブラウザー フォーム発行を制限できます。このオプションはフォーム ライブラリ フォームのみに適用されるので、フォーム テンプレートをより高いレベルで集中管理する必要がある組織では、ブラウザー フォームを SharePoint Server に発行する前に管理者の承認を義務付けることができます。このオプションを設定しても、ユーザーが Filler のみのフォームを SharePoint Server に発行することは妨げられません。Filler のみのフォームに入力するには、常に InfoPath Filler を使用する必要があります。

コードが含まれるブラウザー フォームを発行する

フォームの設計者は、Visual Studio Tools for Applications (VSTA) を使用してマネージ コードをフォームに追加できます。VSTA は、InfoPath 2013 のセットアップで使用可能なオプションのインストール コンポーネントです。マネージ コードが含まれるフォーム テンプレートは、次の 2 つの方法で発行できます。

  • サンドボックス ソリューション。サイト コレクションの管理者は、コードが含まれるフォーム テンプレートをサンドボックス ソリューションとしてフォーム ライブラリに発行できます。

  • 管理者承認済みフォーム。ファーム管理者は、サーバーの全体管理でフォーム テンプレートをライブラリにアップロードしてから、デザイン レベルの権限を持つユーザーが選択できるサイト コンテンツ タイプとしてフォーム テンプレートをサイト コレクションでアクティブにすることができます。

サンドボックス ソリューションとしてのフォーム テンプレート

Microsoft SharePoint Foundation Sandboxed Code Service がファームで実行されている場合、サイト コレクションの管理者は、コードが含まれるフォーム テンプレートをサンドボックス ソリューションとしてフォーム ライブラリに発行できます。したがって、サイト コレクションの管理者を兼ねるフォーム設計者は、ファーム管理者の許可を得ずにフォームを発行できます。サンドボックス ソリューションは、サーバー オブジェクト モデルのサブセットにアクセスできる環境で実行されます。ファーム管理者は、悪意のあるコードがサーバーで実行されることを防ぐために使用制限を設定できます。

完全信頼レベルでなければ実行できないコードが含まれるフォーム テンプレートは、サンドボックス ソリューションとして発行できません。このようなフォームには、ファーム管理者の許可が必要です。サンドボックス ソリューションの詳細については、「サンドボックス ソリューションの概要 (SharePoint Server 2010)」を参照してください。

管理者承認済みフォーム テンプレート

ファーム管理者は、完全信頼レベルでなければ実行できないコードを含め、コードが含まれるフォーム テンプレートをサーバーの全体管理でフォーム テンプレート ライブラリにアップロードできます。この方法は、より高いレベルでフォームとマネージ コードを集中管理するために展開の容易さを犠牲にしてもかまわない組織に適したオプションです。サーバーの全体管理でフォーム テンプレート ライブラリにアップロードされたフォーム テンプレートは、管理者承認済みフォーム テンプレートと呼びます。

フォーム テンプレートを保存した後で、フォーム設計者はファーム管理者に連絡します。ファーム管理者はフォーム テンプレートをレビューして、組織のパフォーマンスとセキュリティの標準を満たすフォーム テンプレートであるかどうかを確認します。標準を満たす場合は、ファーム管理者はファームのサーバーの全体管理でそれらをフォーム テンプレート ライブラリにアップロードします。

ファーム管理者は、特定のサイト コレクションでフォーム テンプレートを使用できるようにするため、フォーム テンプレートをそのサイト コレクションに対してアクティブにする必要があります。フォーム テンプレートをアクティブにすると、そのフォーム テンプレートはサイトのフォーム テンプレート用ライブラリに格納されます。ユーザーは、このフォーム テンプレートをコンテンツ タイプとしてフォーム ライブラリに追加できます。設計のアクセス許可レベルを持つユーザーであれば、だれでもフォーム テンプレート コンテンツ タイプを追加できます。

詳細については、「管理者承認済みフォーム テンプレートを管理する (SharePoint Server 2010)」を参照してください。

フォームに入力する

フォーム テンプレートを発行した後で、ユーザーはそのフォーム テンプレートに基づくフォームへの入力を開始できます。

ブラウザー フォームと Filler フォーム

フォームへの入力を行う主な環境には、Web ブラウザーと InfoPath Filler の 2 つがあります。InfoPath Filler では、どのフォームでも入力できます。ブラウザー対応フォームは、Web ブラウザーでのみ入力できます。

ファーム管理者は、サーバーの全体管理の InfoPath Forms Services 構成ページで設定を構成することにより、Web ブラウザーでのフォームの表示を無効にすることができます。この設定は、フォーム ライブラリに発行されたユーザー フォーム テンプレートのみに適用され、管理者承認済みフォーム テンプレートと、リストに発行されたフォーム テンプレートには適用されません。Web ブラウザー フォームの表示が無効に設定されている場合は、InfoPath がユーザーのコンピューターにインストールされていれば、フォームは InfoPath Filler に表示されます。

オフラインでのフォーム入力

SharePoint リスト フォームは、SharePoint Workspace を使用してオフラインで入力できます。フォーム ライブラリ フォームは、InfoPath Filler を使用してオフラインで入力できます。

InfoPath フォーム Web パーツ

InfoPath のブラウザー フォームは、InfoPath フォーム Web パーツを使用して Web パーツ上にホストすることもできます。InfoPath フォーム Web パーツの詳細については、「About the InfoPath Form Web Part (英語)」(https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=187903&clcid=0x411) (英語) を参照してください。

See Also

Concepts

InfoPath Forms Services を計画する (SharePoint Server 2010)
サンドボックス ソリューションの概要 (SharePoint Server 2010)