Reporting Services とインターネット インフォメーション サービスのサイド バイ サイド配置

SQL Server 2008Reporting Services とインターネット インフォメーション サービス (IIS) は、同じコンピュータにインストールして実行できます。対処する必要のある相互運用性の問題は、使用している IIS のバージョンによって異なります。

IIS のバージョン

問題

説明

IIS 6.0 および 7.0

あるアプリケーションに対して送信された要求が、別のアプリケーションによって受け付けられます。

URL 予約には、HTTP.SYS による優先順位規則が適用されます。同じ仮想ディレクトリ名を持ち、共にポート 80 を監視するアプリケーションが複数存在するとき、これらのアプリケーションに宛てて送信された要求は、目的のアプリケーションの URL 予約が、もう一方のアプリケーションの URL 予約よりもあいまいに指定されていた場合、意図したターゲットに到達しない可能性があります。

特定の条件下では、URL 予約体系において他の URL エンドポイントに優先する登録済みのエンドポイントが、他のアプリケーション宛ての HTTP 要求を受信する場合があります。

この競合は、レポート サーバー Web サービスおよびレポート マネージャに対し、一意の仮想ディレクトリ名を使用することによって回避できます。

このシナリオについては、このトピックで詳しく説明します。

IIS 5.1

ポートの競合

既定では、IIS 5.1 は、排他的に使用するためにポート 80 を予約します。SQL Server 2008Reporting Services を 32 ビット Windows XP (SP2) にインストールした場合、Reporting Services の URL に使用される既定のポートは 8080 になります。

http://<サーバー名>:8080/reportserver

http://<サーバー名>:8080/reports

64 ビット プラットフォームでは、Reporting Services の URL に使用される既定のポートは 80 です。64 ビット版の Windows XP SP2 では、IIS 5.1 によって HTTP.SYS が使用されるため、ポート 80 を両方のアプリケーションが共有できます。

URL 予約の優先順位規則

IIS と Reporting Services 間の相互運用性の問題を解決するには、まず URL 予約の優先順位規則を理解しておく必要があります。優先順位規則とは、簡単に言えば、"より明示的に定義された値を持つ URL 予約が、その URL に合致した要求を先に受け取ることができる" ということです。

  • 仮想ディレクトリを指定する URL 予約は、仮想ディレクトリが省略された URL 予約よりも明示的である。

  • 単一アドレスが指定された URL 予約 (IP アドレス、完全修飾ドメイン名、ネットワーク コンピュータ名、またはホスト名) は、ワイルドカードよりも明示的である。

  • 厳密なワイルドカードを指定する URL 予約は、弱いワイルドカードよりも明示的である。

次の表は、一連の URL 予約の例を、最も明示的なものから順に列挙したものです。

要求

http://123.234.345.456:80/reports

http://123.234.345.456/reports または (ドメイン名サービスが、IP アドレスを対応するホスト名に解決できる場合) http://<コンピュータ名>/reports に送信されたすべての要求が受信されます。

http://+:80/reports

URL に "reports" という仮想ディレクトリ名が含まれている限り、任意の IP アドレス (またはそのコンピュータの有効なホスト名) に送信されたすべての要求が受信されます。

http://123.234.345.456:80

http://123.234.345.456 または (ドメイン名サービスが、IP アドレスを対応するホスト名に解決できる場合) http://<コンピュータ名> を指定するすべての要求が受信されます。

http://+:80

[すべて割り当て] にマップされたすべてのアプリケーション エンドポイントについて、まだ他のアプリケーションによって受信されていない要求が受信されます。

http://*:80

[すべて未割り当て] にマップされたアプリケーション エンドポイントについて、まだ他のアプリケーションによって受信されていない要求が受信されます。

IIS 6.0/7.0 と SQL Server 2008 Reporting Services の URL 予約

前のセクションで取り上げた優先順位規則を踏まえて考えると、Reporting Services と IIS に対して定義された URL 予約が、両者の相互運用性にどのように貢献しているかがわかります。Reporting Services は、そのアプリケーションの仮想ディレクトリ名を明示的に指定する要求を受信します。一方、IIS は、それ以外のすべての要求を受信し、それらを IIS のプロセス モデル内で実行されるアプリケーションに送ることになります。

アプリケーション

URL 予約

説明

受信する要求

レポート サーバー

http://+:80/ReportServer

厳密なワイルドカード、ポート 80、レポート サーバーの仮想ディレクトリ

レポート サーバーの仮想ディレクトリを指定するすべての要求をポート 80 で受信します。http://<コンピュータ名>/reportserver に対するすべての要求が、レポート サーバー Web サービスによって受信されます。

レポート マネージャ

http://+:80/Reports

厳密なワイルドカード、ポート 80、Reports という仮想ディレクトリ

reports という仮想ディレクトリを指定するすべての要求をポート 80 で受信します。http://<コンピュータ名>/reports に対するすべての要求がレポート マネージャによって受信されます。

IIS

http://*:80/

弱いワイルドカード、ポート 80

まだ他のアプリケーションによって受信されていない残りの要求をすべてポート 80 で受信します。

SQL Server 2008 と SQL Server 2005 の Reporting Services のサイド バイ サイド配置 (IIS 6.0 または 7.0)

IIS と Reporting Services 間の相互運用性の問題は、IIS Web サイトに、Reporting Services で使用されているものと同じ仮想ディレクトリ名が存在する場合に発生します。たとえば、次のような構成を考えてみます。

  • ポート 80、仮想ディレクトリ名 "Reports" に割り当てられた IIS Web サイトが存在。

  • SQL Server 2008 レポート サーバー インスタンスを既定の構成でインストール。URL 予約でポート 80 を指定し、レポート マネージャ アプリケーションで仮想ディレクトリ名 "Reports" を使用。

この構成では、http://<コンピュータ名>:80/reports に送信された要求は、レポート マネージャによって受信されます。SQL Server 2008 レポート サーバー インスタンスのインストール後、IIS の Reports 仮想ディレクトリ経由でアクセスされるアプリケーションは、要求を受け取ることができなくなります。

Reporting Services の新旧のバージョンをサイド バイ サイド配置で実行した場合、前述したルーティングの問題が発生する可能性があります。これは、Reporting Services のすべてのバージョンでは、レポート サーバーとレポート マネージャ アプリケーションの仮想ディレクトリ名として "ReportServer" と "Reports" が使用されているため、IIS には "reports" と "reportserver" という仮想ディレクトリが高い確率で存在していると考えられるためです。

すべてのアプリケーションが確実に要求を受信できるようにするには、次のガイドラインに従います。

  • Reporting Services のインストールでは、Reporting Services と同じポート上の IIS Web サイトで使用されていない仮想ディレクトリ名を使用するようにします。競合が生じた場合は、Reporting Services を "ファイルのみ" のモード (インストール ウィザードで [サーバーを構成せずにインストールする] オプションを使用) でインストールします。こうすることで、セットアップの完了後に、仮想ディレクトリを自分で構成できるようになります。

  • 手動構成のインストールでは、構成する URL に既定の名前付け規則を採用します。SQL Server 2008Reporting Services を名前付きインスタンスとしてインストールする場合は、仮想ディレクトリの作成時にインスタンス名を含めるようにします。

Windows XP SP2 における IIS 5.1 との相互運用性

Windows XP SP2 には、Reporting Services で必要な HTTP.SYS コンポーネントが備わっています。ただし、このオペレーティング システムでは、IIS 5.1 によって HTTP.SYS が使用されることはありません。IIS 5.1 は、すべての要求をポート 80 (または、使用するように構成されている任意のポート) で受け付けます。IIS 5.1 の URL 予約は HTTP.SYS に存在しないため、要求キューの一元管理ができず、当然、Reporting Services Web アプリケーションが同じポートで要求を受信することはできません。

そのため、32 ビット版 Windows XP SP2 にインストールされるレポート サーバーの既定の構成は、レポート サーバー Web サービスとレポート マネージャにポート 8080 を使用するように設定されています。次の表に、Web サービスとレポート マネージャの URL 予約を示します。

  • http://+:8080/reportserver

  • http://+:8080/reports

Reporting Services アプリケーションの URL 予約で既定以外のポートを使用すれば、旧バージョンの Reporting Services とのサイド バイ サイドのシナリオでも、URL の競合を回避できることになります。

新旧のレポート サーバー インスタンスが同じコンピュータにインストールされている場合、既定の URL は http://<サーバー名>/<reportserver> (IIS 経由でアクセスされる Reporting Services 2005 レポート サーバーの場合) および http://<サーバー名>:8080/<reportserver>(SQL Server 2008Reporting Services レポート サーバーの場合) になります。