何でも屋: 無償ツールを使用して Microsoft Office 2010 を自動的に展開する

Office 2010 から逃れることはできませんが、このコラムで紹介する無償ツールを使用してインストールを自動化するその他の方法を見つけることはできます。

Greg Shields

好むと好まざるとにかかわらず、Microsoft Office は何年もの間ビジネス アプリケーション インフラストラクチャの中心的な存在となっています。たとえば、連絡先のデータベースを Outlook に関連付けたり、財務アプリケーションが Access や Excel と連動したり、データベース レポートを印刷に適した Word 形式に出力したりできます。ほとんどすべてのアプリケーションでは、いずれかの Microsoft Office スイート製品を使用して、少なくともその処理の一部を実行しています。

そういうわけで、優れたアプリケーション管理者になるには、優れた Microsoft Office 管理者である必要があります。優れた Microsoft Office 管理者は (いわゆる何でも屋の IT プロフェッショナルであっても)、特定の要件に合わせて Microsoft Office をインストールして調整する方法を把握していなければなりません。

残念ながら、多くの場合、Microsoft Office のインストールを自動化する際には、[次へ] と [完了] を繰り返しクリックするという面倒で大量の操作が伴います。ただし、次回 Microsoft Office をインストールする際には、管理者が席を立つことは必須条件ではなくなります。System Center Essentials や System Center Configuration Manager などのソリューションを使用してインストールを自動化することもできますが、追加のコストがかからない代替手段があります。

その 1 つは、グループ ポリシーです。グループ ポリシーを使用した Microsoft Office 2010 のインストールは、グループ ポリシーのソフトウェア インストールと連動しないということを耳にしたことがあるかもしれません。ですが、小規模な環境で機能する開始スクリプトを使用した別のソリューションがあります。適切なマイクロソフト ツールとスクリプトを使用してソリューションを正しく構築したら、全デスクトップ PC のアップグレード状況を把握するのに役立つ、ちょっとしたレポートも手に入れることができます。

このソリューションは最良のものでも最もスムーズなものでもありませんが、価格に関して言えば、一見の価値があることは間違いありません。Microsoft Office 2010 へのアップグレードを検討していても時間がないという場合は、一夜にしてオフィスのすべてのコンピューターを Microsoft Office 2010 にアップグレードできる、この簡単で段階的なプロセスをご検討ください。

手順 1: OCT を使用して Office セットアップをカスタマイズする

Microsoft Office のメディアは、少し異なる 2 とおりの方法で提供されます。ボリューム ライセンス バージョンには、Microsoft Office カスタマイズ ツール (OCT) と呼ばれる便利な追加機能が収録されています。これはウィザード形式のインターフェイスで、インストールの段階で Microsoft Office インストールの構成を調整できます。

このツールは、Microsoft Office の最近のいくつかのバージョンに付属しています。市販の Microsoft Office には OCT が付属していませんが、「Microsoft Office 2010 管理用テンプレート ファイル (ADM、ADMX、または ADML) および Office カスタマイズ ツール (英語)」のページからダウンロードできます。

Microsoft Office メディアに \Admin フォルダーが存在している場合は、Microsoft Office ボリューム ライセンス バージョンを使用しています。\Admin フォルダーがない場合は、メディアを解凍してコンピューターのフォルダーに配置し、\Admin フォルダーを作成してから、ダウンロードしたファイルをそのフォルダーにコピーします。次に、setup.exe /admin というコマンドを実行して、OCT を起動します。

Microsoft Office カスタマイズ ツール

図 1 Microsoft Office カスタマイズ ツール

どのような方法で OCT を入手しても、このツールでは MSP ファイルが作成されます (図 1 参照)。この MSP ファイルでは、Microsoft Office インストールの構成中に、特別な変更を行うように指示します。図 1 に、このような変更の例を 1 つ示します。この場合は、インストール中に、特定のマルチ ライセンス認証キー (MAK) を使用するように指示しています。また、[表示レベル] を [なし] に設定して、[入力項目を表示しない] チェック ボックスをオンにすると、Office をサイレント モードでインストールするように指示できます。グループ ポリシーで Microsoft Office 2010 をインストールするには、後でこれらの設定が必要になります。

Microsoft Office カスタマイズ ツールでユーザー設定を変更できる

図 2 Microsoft Office カスタマイズ ツールでユーザー設定を変更できる

OCT では、インストールの構成を調整する多くのすばらしい方法が公開されています。図 2 は、ユーザー設定の変更に関する設定の一覧です。この一覧の設定は、ロックダウンするか、インストール時に構成できます。Microsoft Office 2010 リソース キットで取り上げられているようなものなど、インストールの調整に使用できる設定は他にもあります。

このすべての設定の中で最も重要なのは、ライセンス情報とサイレント モードのインストールの設定を構成することです。また、[機能のインストール状況の設定] セクションで、Microsoft Office アプリケーションのうち、インストールするものとインストールしないものを指定することも必要です。それ以外の設定は省略可能ですが、各設定を確認して、ニーズに合うかどうかを検証することをお勧めします。設定を検証したら、後で私用できるように、設定を調整した MSP ファイルを保存します。

手順 2: 配布フォルダーを作成する

グループ ポリシーとスタートアップ スクリプトを使用して Microsoft Office 2010 をインストールまたはアップグレードするには、当然ながら、ソース ファイルが必要です。社内ネットワークに共有を作成して、Everyone グループに、共有と基になる NTFS アクセス許可の両方について、読み取り権限を付与します。Microsoft Office 2010 のメディアを展開して、この場所にコピーします。

手順 3: config.xml を構成する

この手順は冗長に見えるかもしれませんが、自動インストールのセットアップにおいて不可欠な部分です。Microsoft Office 配布フォルダーで、インストールする Microsoft Office のエディションに似た名前が付いているフォルダー探します。このフォルダーには .WW という拡張子が付いており、config.xml というファイルがあります。このファイルをメモ帳で開き、次のコード行によく似たコード行を探して、そのコード行を次のように変更します。

<!-- <Display Level="none" CompletionNotice="no" SuppressModal="yes" AcceptEula="yes" /> -->

これらの値によって、インストールが確実にサイレント モードで実行されるようになります。グループ ポリシーのスタートアップ スクリプトによってインストールが実行されるので、ユーザーにインストール画面や確認を求めるメッセージを表示するのは望ましくありません。このファイルの他の行は無視してかまいません。このファイルを保存して、このファイルがある場所を覚えておきます。

手順 4: グループ ポリシーのスタートアップ スクリプトをダウンロードして変更する

マイクロソフトは、Microsoft Office 2010 リソース キットで、グループ ポリシーのサンプル スタートアップ スクリプトを提供しています。デスクトップ PC を再起動するたびにインストールが繰り返されるのを防ぐロジックが含まれているので、このスタートアップ スクリプトは重要です。このスクリプトをコピーして、メモ帳に貼り付けます。

このスクリプトでは、インストールを開始する前に、特定のレジストリ キーを確認します。そのレジストリ キーが存在する場合は、インストールが完了していると見なされます。したがって、インストールがスキップされます。ユーザーが何度デスクトップ PC を再起動しても、このちょっとしたロジックによって、スタートアップ スクリプトは機能する状態を保つことができます。

サンプルのスタートアップ スクリプトでは、次のコード ブロックの 4 行のコードをカスタマイズする必要があります。

set ProductName=Office14.PROPLUS
set DeployServer=\\FS\Office2010SourceFiles
set ConfigFile=\\FS\Office2010SourceFiles\ProPlus.WW\config.xml
set LogLocation=\\FS\Office2010LogFiles

1 行目は、この 4 行の中で最も理解するのが難しいコード行です。手順 3 で変更した config.xml ファイルがあるフォルダーをもう一度見てください。このフォルダーには .WW という拡張子が付いていて、インストールする予定の Microsoft Office のエディションの種類に関連付けられていることがわかります。たとえば、Microsoft Office Professional Plus 2010 エディションのボリューム ライセンス バージョンのフォルダー名は、proplus.WW です。1 行目のコードの PROPLUS を、.WW 拡張子を除いたフォルダーの名前に置き換えます。ですが、多くの場合、PROPLUS のままになるでしょう。

2 行目は、手順 2 で作成した配布フォルダーの UNC パスです。3 行目は、手順 3 で変更した config.xml ファイルの UNC パスです。4 行目は、前述のちょっとしたレポートを構成する場所です。上記コードブロックの 4 行目のコードで指定しているファイル サーバー (\\FS) 上の共有は、2 行目と 3 行目のコードの共有と異なっていることにお気付きでしょう。このフォルダーを作成して、共有を有効にしてください。その共有と基になる NTFS アクセス許可では、Everyone グループに変更アクセス権を付与する必要があります。

ほぼすべてのインスタンスで x86 をインストールすると仮定すると (詳細については、補足記事「64 ビットか 32 ビットか」を参照してください)、共有には各 Office アプリケーション用のフォルダーが含まれます。その 1 つに、\Updates という名前が付いているフォルダーがあります。これは、Microsoft Office インストーラーのルーチン プログラムで使用する特別なフォルダーです。このフォルダーにコピーされたすべての MSP ファイルは、Office のインストール中に自動的にインストールされます。これには、自動的にインストールする必要がある更新プログラムや修正プログラムが含まれます。また、手順 1 で作成した MSP ファイルも含まれます。手順 1 で作成した MSP ファイルをこのフォルダーにコピーすると、カスタマイズの設定を使用するようにインストーラーに指示できます。

MYKA というコンピューターで 2 回のインストール操作を試みた結果のレポート

図 3 MYKA というコンピューターで 2 回のインストール操作を試みた結果のレポート

Office 2010 のすべてのインストールでは、インストール プロセスの成功または失敗に関する情報が出力されます。各コンピューターでは、コンピューター名がファイルの名前に使用されている TXT ファイルが作成されます (図 3 参照)。インストールが成功した場合、TXT ファイルの内容は次のようになります。

Mon 07/19/2010 13:15:54.20 Setup ended with error code 0.

他のエラー コードが記録された場合は、インストール中に問題が発生したことを表しているので、トラブルシューティングを行って、その原因を特定する必要があります。このアプローチを試した際には、何台かのクライアントではインストールを複数回実行しなければならなかったので、ご注意ください。最初のインストールでは 0 以外のエラー コードが返されましたが、その後に実行した手動のインストールではエラー コード 0 で成功しました。このちょっとしたレポートでは、Microsoft Office 2010 のインストールやアップグレードが正常に完了したことをはっきり確認できます。このファイルは、次の手順で使用するので、作業が完了したら保存します。

手順 5: グループ ポリシー オブジェクトを作成する

このプロセスの最後の手順では、スタートアップ スクリプトを展開するグループ ポリシー オブジェクト (GPO) を作成します。これは、グループ ポリシー管理コンソール内で行います。新しい GPO を作成して、この GPO を (Users ではなく) Computers の組織単位にリンクします。

スタートアップ スクリプトのプロパティ

図 4 スタートアップ スクリプトのプロパティ

ポリシーを編集して、[コンピューターの構成]、[ポリシー]、[Windows の設定]、[スクリプト (スタートアップ/シャットダウン)] を順に展開します。右ペインの [スタートアップ] をダブルクリックすると、図 4 のようなプロパティの画面が表示されます。

[ファイルの表示] をクリックすると、エクスプローラー ウィンドウが開いて、手順 4 で変更したスタートアップ スクリプトのコピー先ディレクトリが表示されます。スクリプトを、表示されたエクスプローラー ウィンドウにコピーして、このウィンドウを閉じます。

最後に、プロパティの画面に戻って、[追加] をクリックし、コピーした BAT ファイルの名前を入力します。図 4 では、私の BAT ファイルの名前が Office2010StartupScript.bat になっていることを確認できます。

このようにしてグループ ポリシーを構成しても、次にコンピューターを再起動するまでは、Microsoft Office のインストールは開始されません。また、インストールは、インストールに必要な昇格した権限がある状態で実行しなければなりません。インストールには時間がかかるので、グループ ポリシーの構成してから数時間後に、コンピューターの再起動を開始することをお勧めします。

手順 6: グループ ポリシー オブジェクトを作成する

最良の方法ではありませんが、最も経済的であることは確かです。

確かに、このソリューションは Microsoft Office 2010 をインストールまたはアップグレードするための地球上で最適な方法ではありませんが、最も費用がかからない方法だと言えます。自動化されたソフトウェア展開ソリューションは必要ありません。高価な市販のソフトウェアも不要です。必要なのは、いくつかの無償ツールと、少しのテストだけです。「グループ ポリシーのコンピューター スタートアップ スクリプトを使用して Office 2010 を展開する」では、このプロセスについて詳細に説明していますが、このコラムで紹介した便利で段階的なプロセスを使用して作業に取り掛かることができます。

Greg Shields (MVP) は、Concentrated Technology の共同経営者です。何でも屋である IT プロフェッショナル向けのヒントとテクニックについては、ConcentratedTech.com (英語) を参照してください。

 

補足記事: 64 ビットと 32 ビット

この時点で、皆さんは次のように自問自答しているかもしれません。「今日では x64 ばかりが取りざたされているが、Microsoft Office にとって x64 は得策なのだろうか」と。ごく一部の特定の要件がある場合を除いて、マイクロソフトでも Office で x64 を使用することは推奨していません。x64 バージョンの Office 2010 をインストールする場合に関して、マイクロソフトでは次のような推奨事項を提示しています。

組織内のユーザーが、ActiveX コントロール、サードパーティ製アドイン、以前のバージョンの Office を基に構築された社内製ソリューション、Office との間に直接的なインターフェイスがある 32 ビット バージョンのプログラムなど、Office に対する既存の拡張機能に依存している場合は、32 ビットおよび 64 ビットのサポートされる Windows オペレーティング システムを実行しているコンピューターに 32 ビットの Office 2010 をインストールすることをお勧めします (既定のインストール)。

2 GB より大きい Excel スプレッドシートを使用している Excel の熟練ユーザーが組織内にいる場合は、64 ビット版の Office 2010 をインストールできます。また、社内のソリューション開発者がいる場合は、64 ビット版の Office 2010 で社内ソリューションをテストおよび更新できるように、開発者が 64 ビット版の Office 2010 にアクセスできるようにすることをお勧めします。

おわかりのように、ほぼすべてのユーザーには「64 ビット版はお勧めできない」ということになりますが、例外として、巨大なサイズの Excel ブックを使用する必要がある場合や、x64 バージョンの Office を使用する必要があるソフトウェアの展開を予定している場合は、64 ビット版を使用できます。それ以外のほとんどのユーザーは、x86 バージョンのメモリ境界内で問題なく作業できます。

—G.S.

関連コンテンツ