MFC と動的にリンクされるレギュラー DLL のモジュール状態
更新 : 2007 年 11 月
MFC DLL とレギュラー DLL を動的にリンクする機能を使うと、複雑な設定を行うことができます。たとえば、レギュラー DLL とそれを使用する実行可能ファイルは、MFC DLL および任意の拡張 DLL と動的にリンクできます。
この設定では、現在の CWinApp オブジェクトへのポインタやハンドル マップなどの MFC グローバル データに関する問題が発生します。
MFC バージョン 4.0 以前では、このグローバル データは MFC DLL 内にあり、プロセス内の全モジュールで共有されていました。Win32 DLL を使用する各プロセスはそれぞれ独自の DLL データのコピーを取得するため、このスキームによりプロセス単位のデータを簡単に追跡できました。また、AFXDLL モデルでは、1 つのプロセス内に CWinApp オブジェクトやハンドル マップのセットが 1 つしか存在しないと想定されていたため、これらの項目を MFC DLL 自体の中で追跡できました。
しかし、MFC DLL とレギュラー DLL を動的にリンクする機能では、1 つのプロセス内に複数の CWinApp オブジェクトや複数のハンドル マップのセットが存在できるようになりました。これらのうちどれを使用したらよいか、MFC はどのような方法で判断するのでしょうか。
この問題は、グローバル状態情報のコピーを各モジュール (アプリケーションまたはレギュラー DLL) に設定することで解決できます。このため、レギュラー DLL 内の AfxGetApp を呼び出すと、実行可能ファイルではなく DLL 内の CWinApp オブジェクトへのポインタが返されます。このような各モジュールに設定された MFC のグローバル データのコピーをモジュール状態と言います。モジュール状態については、「テクニカル ノート 58: MFC のモジュール状態の実装」を参照してください。
MFC のコモン ウィンドウ プロシージャは、正しいモジュール状態に自動的に切り替えます。このため、レギュラー DLL に実装されたメッセージ ハンドラ内のモジュール状態を気にする必要はありません。しかし、実行可能ファイルからレギュラー DLL を呼び出す場合は、現在のモジュール状態をその DLL に対して明示的に設定する必要があります。このためには、DLL のすべてのエクスポート関数で AFX_MANAGE_STATE マクロを使用します。これは、DLL からエクスポートされる関数の先頭に次のコード行を追加して行います。
AFX_MANAGE_STATE(AfxGetStaticModuleState( ))