For Each...Next ステートメント (Visual Basic)

コレクションの各要素に対して、一連のステートメントを繰り返し実行する一連のステートメントです。

For Each element [ As datatype ] In group
    [ statements ]
    [ Continue For ]
    [ statements ]
    [ Exit For ]
    [ statements ]
Next [ element ]

指定項目

語句

定義

element

For Each ステートメントには必ず指定します。 Next ステートメントでは省略可能です。 変数を表します。 コレクションの各要素を反復処理するために使用します。

datatype

element が宣言されていない場合は、必ず指定します。 element のデータ型を指定します。

group

必ず指定します。 オブジェクト変数です。 statements で反復処理するコレクションを表します。

statements

省略可能です。 For Each から Next までの間に記述した 1 つ以上のステートメントは、group 内の各項目に対して実行されます。

Continue For

省略可能です。 プログラムの制御を For Each ループの先頭に移します。

Exit For

省略可能です。 制御を For Each ループの外に移します。

Next

必ず指定します。 For Each ループの定義を終了します。

解説

コレクションまたは配列の各要素に対して一連のステートメントを繰り返し実行するときには、For Each...Next ループを使用します。

Visual Basic は、ループの開始前にコレクションを 1 回だけ評価します。 ステートメント ブロックによって element または group が変更されても、ループの繰り返しには影響しません。

コレクションのすべての要素が element に代入されると、For Each ループは停止し、Next ステートメントの次のステートメントに制御が渡されます。

このループの外側で element を宣言していない場合は、For Each ステートメント内で宣言する必要があります。 As ステートメントを使用して element の型を明示的に宣言するか、または型の推論に基づいて型を割り当てることができます。 いずれの場合も、element のスコープはループの本体になります。 ただし、ループの外側と内側の両方で element を宣言することはできません。

オプションとして、Next ステートメントに element を指定することもできます。 こうするとプログラムの読みやすさが向上し、特に For Each ループを入れ子にしている場合は効果があります。 その場合には、For Each ステートメントで指定したのと同じ変数を指定する必要があります。

ループ内で element の値を変更しないようにすることができます。 値を変更すると、コードの読みやすさが低下してデバッグが難しくなります。 group の値を変更しても、コレクションやその要素には影響が現れません。これらは最初にループに入る時点で確定されます。

ヒント

For...Next ステートメント (Visual Basic) は、ループの毎回の反復を制御変数に関連付けることができ、制御変数の初期値と最終値を決定できるときには役立ちます。 しかし、コレクションを扱うときには初期値と最終値の概念は意味を持ちませんし、コレクション内の要素の個数が必ずしも判明しているわけではありません。 このような場合には、For Each...Next ループの方が適しています。

特定の順序でコレクションを反復処理する必要がある場合は、そのコレクションによって公開される列挙子オブジェクトの特性を把握していない限り、For Each...Next ループが適切な選択肢とは言えません。 反復処理の順序は、Visual Basic ではなく、列挙子オブジェクトの MoveNext メソッドによって決まります。 したがって、コレクションのどの要素が最初に element に返されるかや、特定の要素の後にどの要素が返されるかを予測することはできません。 For...Next ループや Do...Loop ループなど、別のループ構造を使用した方が、信頼できる結果が得られます。.

ループの入れ子

For Each ループは入れ子構造にできます。つまり、ループの中に別のループを入れることができます。 ただし、それぞれのループに一意の element 変数を指定する必要があります。

また、さまざまな種類の制御構造を入れ子にすることもできます。 詳細については、「入れ子になった制御構造 (Visual Basic)」を参照してください。

内側の入れ子レベルの Next ステートメントの前に外側の入れ子レベルの Next ステートメントが来た場合は、コンパイラからエラーが報告されます。 ただし、コンパイラがこのエラーを検出できるのは、すべての Next ステートメントに element を指定した場合に限られます。

Exit For

Exit For ステートメントにより、実行で For…Next ループが終了し、Next ステートメントの次のステートメントに制御が移されます。

Exit For ステートメントは、For Each ループで何度でも使用できます。 入れ子構造になっている For Eachループの中で使用すると、Exit For により、実行で最も内側のループが終了し、入れ子構造の 1 つ外側のレベルに制御が移されます。

Exit For は、If...Then...Else 構造の中などで、なんらかの条件を評価した後によく使用されます。 次のような条件の場合に Exit For を使用できます。

  • ループの継続が不要または不可能である。 この原因としては、エラー値または終了要求が考えられます。

  • Try...Catch...Finally で例外が検出される。 Finally ブロックの最後で Exit For を使用できます。

  • 無限ループ (実行回数が多いか、または無限に繰り返されるループ) がある。 このような条件を検出した場合は、Exit For を使用してループを抜けることができます。 詳細については、「Do...Loop ステートメント (Visual Basic)」を参照してください。

Continue For ステートメントは、制御をループの次の反復処理に直ちに移します。 詳細については、「Continue ステートメント (Visual Basic)」を参照してください。

データ型

element のデータ型は、group の要素のデータ型から変換可能なものにする必要があります。

group のデータ型は、列挙可能なコレクションまたは配列を参照する参照型にする必要があります。 つまり、通常、group は、System.Collections 名前空間の IEnumerable インターフェイスまたは System.Collections.Generic 名前空間の IEnumerable<T> インターフェイスを実装するオブジェクトを参照します。 System.Collections.IEnumerable は、コレクションの列挙子オブジェクトを返す GetEnumerator メソッドを定義します。 列挙子オブジェクトは System.Collections 名前空間の System.Collections.IEnumerator インターフェイスを実装し、Current プロパティと Reset メソッドおよび MoveNext メソッドを公開します。 このプロパティとメソッドは、コレクションの反復処理に使用されます。

group の要素は、通常は Object 型にしますが、任意のランタイム データ型を指定できます。

縮小変換

Option Strict が On に設定されている場合、縮小変換は通常はコンパイラ エラーの原因になります。 ただし、For Each ステートメントでは、group 内の要素から element への変換は、実行時に評価されて実行され、縮小変換を原因とするコンパイラ エラーは抑制されます。

次の例では、Long の Integer への変換が縮小変換であるため、n の初期値としての m の代入は、Option Strict が On の場合はコンパイルできません。 ただし、For Each ステートメントでは、number への代入で同じ Long から Integer への変換が必要とされますが、コンパイラ エラーは報告されません。 大きな数値が含まれる For Each ステートメントでは、ToInteger が大きな数値に適用された場合に実行時エラーが発生します。

Option Strict On

Module Module1
    Sub Main()
        ' The assignment of m to n causes a compiler error when 
        ' Option Strict is on.
        Dim m As Long = 987
        'Dim n As Integer = m

        ' The For Each loop requires the same conversion but
        ' causes no errors, even when Option Strict is on.
        For Each number As Integer In New Long() {45, 3, 987}
            Console.Write(number & " ")
        Next
        Console.WriteLine()
        ' Output: 45 3 987

        ' Here a run-time error is raised because 9876543210
        ' is too large for type Integer.
        'For Each number As Integer In New Long() {45, 3, 9876543210}
        '    Console.Write(number & " ")
        'Next

        Console.ReadKey()
    End Sub
End Module

IEnumerator の呼び出し

For Each...Next ループの実行を開始するときには、group が有効なコレクション オブジェクトを参照しているかどうかが検証されます。 有効なコレクション オブジェクトでない場合は、例外がスローされます。 有効なコレクション オブジェクトである場合は、列挙子オブジェクトの MoveNext メソッドと Current プロパティが呼び出され、1 つ目の要素が返されます。 MoveNext が次の要素がないことを示した場合、つまりコレクションが空の場合は、For Each ループは停止し、Next ステートメントの次のステートメントに制御が渡されます。 それ以外の場合は、element が 1 つ目の要素に設定され、ステートメント ブロックが実行されます。

Next ステートメントに達すると、そのたびに For Each ステートメントに制御が戻されます。 次の要素を返すために再び MoveNextCurrent が呼び出され、その結果に応じて、ステートメント ブロックが再度実行されるか、ループが停止します。 MoveNext メソッドが次の要素がないことを示すまで、または Exit For ステートメントに達するまでは、このプロセスが繰り返されます。

変更

コレクションの変更 GetEnumerator から返される列挙子オブジェクトでは、通常、要素の追加、削除、置換、または並べ替えを行ってコレクションを変更することはできません。 For Each...Next ループの開始後にコレクションを変更すると列挙子オブジェクトが無効になり、次に要素にアクセスしようとしたときに InvalidOperationException 例外が発生します。

ただし、この変更のブロッキングは、Visual Basic ではなく IEnumerable インターフェイスの実装によって決定されます。 反復処理中の変更を許可するように IEnumerable を実装できます。 このような動的な変更を行う場合には、使用するコレクションでの IEnumerable 実装の特徴を理解しておくことが必要です。

コレクション要素の変更。 列挙子オブジェクトの Current プロパティは ReadOnly (Visual Basic) であり、各コレクション要素のローカル コピーを返します。 これは、For Each...Next ループ内では要素そのものを変更できないということを意味します。 変更は Current から返されたローカル コピーにのみ適用され、基のコレクションに反映されることはありません。 ただし、要素が参照型である場合、その要素が指すインスタンスのメンバーを変更することはできます。 次に例を示します。

Sub lightBlueBackground(ByVal thisForm As System.Windows.Forms.Form)
    For Each thisControl As System.Windows.Forms.Control In thisForm.Controls
        thisControl.BackColor = System.Drawing.Color.LightBlue
    Next thisControl
End Sub

この例では各 thisControl 要素の BackColor メンバーを変更していますが、thisControl そのものは変更できません。

配列の反復処理。 Array クラスは IEnumerable インターフェイスを実装するため、すべての配列は GetEnumerator メソッドを公開します。 これは、For Each...Next ループによって配列を反復処理できることを意味します。 ただし、配列要素は読み取ることしかできません。 変更することはできません。 概要については、「方法: コレクションまたは配列で、各要素の複数のステートメントを実行する (Visual Basic)」を参照してください。

使用例

次の例は、For Each…Next ステートメントの使用方法を示しています。

' Create a list of strings by using a
' collection initializer.
Dim lst As New List(Of String) _
    From {"abc", "def", "ghi"}

' Iterate through the list.
For Each item As String In lst
    Debug.Write(item & " ")
Next
Debug.WriteLine("")
'Output: abc def ghi

次の例は、入れ子になった For Each…Next 構造体を示しています。

' Create lists of numbers and letters
' by using array initializers.
Dim numbers() As Integer = {1, 4, 7}
Dim letters() As String = {"a", "b", "c"}

' Iterate through the list by using nested loops.
For Each number As Integer In numbers
    For Each letter As String In letters
        Debug.Write(number.ToString & letter & " ")
    Next
Next
Debug.WriteLine("")
'Output: 1a 1b 1c 4a 4b 4c 7a 7b 7c 

次の例は、Continue For ステートメントおよび Exit For ステートメントの使用方法を示しています。

Dim numberSeq() As Integer =
    {1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12}

For Each number As Integer In numberSeq
    ' If number is between 5 and 7, continue
    ' with the next iteration.
    If number >= 5 And number <= 8 Then
        Continue For
    End If

    ' Display the number.
    Debug.Write(number.ToString & " ")

    ' If number is 10, exit the loop.
    If number = 10 Then
        Exit For
    End If
Next
Debug.WriteLine("")
' Output: 1 2 3 4 9 10

次の例では、DirectoryInfo クラスを使用して、C:\ ディレクトリ内のすべてのフォルダーを一覧表示します。

Dim dInfo As New System.IO.DirectoryInfo("c:\")
For Each dir As System.IO.DirectoryInfo In dInfo.GetDirectories()
    Debug.WriteLine(dir.Name)
Next

次の例は、IComparable インターフェイスを使用してコレクションを並べ替える方法を示しています。

Public Sub ListCars()

    ' Create some new cars.
    Dim cars As New List(Of Car) From
    {
        New Car With {.Name = "car1", .Color = "blue", .Speed = 20},
        New Car With {.Name = "car2", .Color = "red", .Speed = 50},
        New Car With {.Name = "car3", .Color = "green", .Speed = 10},
        New Car With {.Name = "car4", .Color = "blue", .Speed = 50},
        New Car With {.Name = "car5", .Color = "blue", .Speed = 30},
        New Car With {.Name = "car6", .Color = "red", .Speed = 60},
        New Car With {.Name = "car7", .Color = "green", .Speed = 50}
    }

    ' Sort the cars by color, alphabetically, and then by speed
    ' in descending order.
    cars.Sort()

    ' View all of the cars.
    For Each thisCar As Car In cars
        Debug.Write(thisCar.Color.PadRight(5) & " ")
        Debug.Write(thisCar.Speed.ToString & " ")
        Debug.Write(thisCar.Name)
        Debug.WriteLine("")
    Next

    ' Output:
    '  blue  50 car4
    '  blue  30 car5
    '  blue  20 car1
    '  green 50 car7
    '  green 10 car3
    '  red   60 car6
    '  red   50 car2
End Sub

Public Class Car
    Implements IComparable(Of Car)

    Public Property Name As String
    Public Property Speed As Integer
    Public Property Color As String

    Public Function CompareTo(ByVal other As Car) As Integer _
        Implements System.IComparable(Of Car).CompareTo
        ' Determine the relative order of the objects being compared.
        ' This is used to sort by color alphabetically, and then by
        ' speed in descending order.

        ' Compare the colors.
        Dim compare As Integer
        compare = String.Compare(Me.Color, other.Color, True)

        ' If the colors are the same, compare the speeds.
        If compare = 0 Then
            compare = Me.Speed.CompareTo(other.Speed)

            ' Use descending order for speed.
            compare = -compare
        End If

        Return compare
    End Function
End Class

次の例では、カスタム列挙子を持つカスタム コレクション クラスを使用しています。

Public Sub ListColors()
    Dim colors As New AllColors()

    For Each theColor As Color In colors
        Debug.Write(theColor.Name & " ")
    Next
    Debug.WriteLine("")
    ' Output: red blue green
End Sub

' Collection class.
Public Class AllColors
    Implements System.Collections.IEnumerable

    Private _colors() As Color =
    {
        New Color With {.Name = "red"},
        New Color With {.Name = "blue"},
        New Color With {.Name = "green"}
    }

    Public Function GetEnumerator() As System.Collections.IEnumerator _
        Implements System.Collections.IEnumerable.GetEnumerator

        Return New ColorEnumerator(_colors)

        ' Instead of creating a using a custom enumerator, you could
        ' use the GetEnumerator of the array.
        'Return _colors.GetEnumerator
    End Function

    ' Custom enumerator.
    Private Class ColorEnumerator
        Implements System.Collections.IEnumerator

        Private _colors() As Color
        Private _position As Integer = -1

        Public Sub New(ByVal colors() As Color)
            _colors = colors
        End Sub

        Public ReadOnly Property Current() As Object Implements System.Collections.IEnumerator.Current
            Get
                Return _colors(_position)
            End Get
        End Property

        Public Function MoveNext() As Boolean Implements System.Collections.IEnumerator.MoveNext
            _position += 1
            Return (_position < _colors.Length)
        End Function

        Public Sub Reset() Implements System.Collections.IEnumerator.Reset
            _position = -1
        End Sub
    End Class
End Class

' Element class.
Public Class Color
    Public Property Name As String
End Class

参照

処理手順

方法: コレクションまたは配列で、各要素の複数のステートメントを実行する (Visual Basic)

参照

For...Next ステートメント (Visual Basic)

While...End While ステートメント (Visual Basic)

Do...Loop ステートメント (Visual Basic)

概念

ループ構造 (Visual Basic)

Visual Basic におけるコレクション

拡大変換と縮小変換 (Visual Basic)

オブジェクト初期化子: 名前付きの型と匿名型 (Visual Basic)

コレクション初期化子の概要 (Visual Basic)

Visual Basic における配列

履歴の変更

日付

履歴

理由

2010 年 12 月

「解説」セクションが再構成され、例が追加されました。

情報の拡充