Business Connectivity Services を使用して Outlook 中間宣言型ソリューションを作成する

最終更新日: 2011年8月22日

適用対象: SharePoint Server 2010

この記事の内容
シンプルと宣言型の Outlook ソリューションの機能
実行できるカスタマイズの種類
中級の宣言型 Outlook ソリューションの作成方法
中級の宣言型 Outlook ソリューションのしくみ
中級の宣言型 Outlook ソリューションのコンポーネント
推奨する宣言型 Outlook ソリューションの作成方法
中級の宣言型 Outlook ソリューションを作成するためのツール

Microsoft Business Connectivity Services (BCS) を使用すれば、インフォメーション ワーカーは、外部リストをオフラインにすることによって、Microsoft Outlook 2010 内の外部コンテンツ タイプ (顧客、従業員、注文など) を標準の Outlook アイテムの種類 (連絡先アイテム、タスク、投稿、予定など) として表示できます。このようなソリューションは、シンプル ソリューションと呼ばれ、シンプル ソリューションは、Microsoft Office 2010 と Microsoft SharePoint 2010 の標準機能に依存します。

ただし、シンプル ソリューションには、カスタマイズのサポートがほとんどないか、まったくありません。また、Business Connectivity Services には、シンプル ソリューション用の拡張可能なプログラミング モデルが用意されていません。ただし、Outlook でカスタマイズしたソリューションを作成する必要がある場合は、中級の宣言型 Outlook ソリューションを作成できます。この種類のソリューションは、このリリースの Business Connectivity Services の Outlook 2010 に固有のソリューションです。

シンプルと宣言型の Outlook ソリューションの機能

次の表に、シンプルと中級の宣言型の Outlook ソリューションの機能を示します。

表 1. シンプルと宣言型の Outlook ソリューション

機能

シンプル Outlook ソリューション

中級の宣言型 Outlook ソリューション

ソリューション内の外部コンテンツ タイプの数

1 つ。

複数の外部コンテンツ タイプを入れることができます。

アクションとリボン

Business Connectivity Services によって提供される既定のリボンとアクション。

カスタム リボンとアクションを入れることができます。

関連する外部コンテンツ タイプの表示

作業ウィンドウに外部コンテンツ タイプの関連情報を表示する方法はありません。

ただし、関連付けを定義した場合、Business Connectivity Services は、接続先の外部コンテンツ タイプにあるソース外部アイテムをユーザーが選択できる外部アイテム ピッカーを表示します。

カスタム リボンと作業ウィンドウを定義すれば、関連情報を表示できます。

Outlook のビューのカスタマイズ

ユーザーは、Outlook のビューをカスタマイズして、ビュー定義をエクスポートできます。

開発者は、カスタム ビュー定義をソリューションに追加して、そのソリューションをインストールしたすべてのユーザーについて、既定で外部データがカスタマイズしたビューに表示されるようにすることができます。

フォーム領域のカスタマイズ

Business Connectivity Services によって提供される既定のフォーム領域には、Outlook コントロールしか入れることができません。このフォーム領域をカスタマイズして、Outlook で外部データを表示するための外部データ パーツを入れることはできません。

Outlook で外部データを表示するための外部データ パーツを含んだフォーム領域を作成し、カスタマイズできます。

実行できるカスタマイズの種類

中級の宣言型 Outlook ソリューションを使用すると、次の操作を実行できます。

  • Outlook の作業ウィンドウに標準またはカスタム外部データ パーツを表示  作業ウィンドウで、外部データ パーツ (Business Connectivity Services によって提供される外部データ パーツ、または開発者が作成したカスタム外部データ パーツ) をホストすることによって、カスタム作業ウィンドウを定義して、外部データをユーザーに表示できます。

  • カスタム リボンとアクションを追加  リボン ファイルを定義し、リボンに、または、コードをトリガーするか、パラメーターとして Business Data Connectivity (BDC) service フィールドを取ることができる指定した URL を参照するブラウザーを起動する外部データ パーツに表示されるカスタム アクションを定義できます。アクションは、URL ベースにするか、開発者が作成したコード アクションを参照できます。

  • Outlook のカスタム ビュー定義を作成  基本の Outlook 要素をはじめとして、外部データのフォルダーに対して表示されるビューをカスタマイズできます。Business Connectivity Services には、カスタマイズしたビューを Outlook View Definition (.ovd) ファイルとして保存するためのコマンドが用意されているので、宣言型ソリューションをインストールしたユーザーはカスタマイズしたビューを使用できます。 

  • Outlook で外部データを表示するための Outlook フォーム領域をカスタマイズ  Outlook で新しいフォーム領域を設計することによって、外部データを表示するためのカスタマイズした Outlook フォーム領域を作成できます。

中級の宣言型 Outlook ソリューションの作成方法

中間宣言型 Outlook ソリューションを作成するには、BDC モデル、ソリューション マニフェスト (OIR.config)、各外部コンテンツ タイプのサブスクリプションを作成し、必要に応じてカスタム リボン、1 つ以上の作業ウィンドウ レイアウト、カスタム フォーム領域、カスタム Outlook ビュー定義を作成します。その後、BCS ソリューション パッケージ ツール (英語)を使用して、これらのソリューション アーティファクトを 1 つの Visual Studio 2010 の Office 開発ツール ClickOnce パッケージにパッケージ化できます。ソリューション アーティファクトをパッケージ化すると、ユーザーはそのパッケージを Outlook にインストールできるようになります。

また、最初に BDC モデルを作成し、次に BCS Artifact Generator ツール (英語)を使用して、BDC モデルに基づくアーティファクト ファイルを生成できます。アーティファクトを生成したら、BDC ソリューション パッケージ ツール (英語)を使用して、ソリューションを Visual Studio 2010 の Office 開発ツール ClickOnce パッケージにパッケージ化します。

中級の宣言型 Outlook ソリューションのしくみ

中級の宣言型 Outlook ソリューションは、Business Connectivity Services Client Runtime を利用して、ソリューション アーティファクトを解釈し、表示する外部データ、外部データを表示する場所、表示方法、およびユーザーが実行できる外部データの操作をランタイムに指示します。クライアント上の Business Connectivity Services クライアント キャッシュでは、メタデータと、ユーザーに関係するキャッシュに格納された外部コンテンツ タイプを管理します。宣言型ソリューションでは、実行時に Outlook 内でソリューション アーティファクトに定義されている要素を表す標準の Business Connectivity ServicesOutlook アドインを使用します。このアーキテクチャにより、経験豊かなユーザーと開発者は、一般的なタスクと繰り返し行うタスクを実行するために Outlook と Business Connectivity Services API を対話操作するという複雑な作業を管理せずに、ビジネス ニーズの解決に集中できます。

中級の宣言型 Outlook ソリューションのコンポーネント

表 2 では、中級の宣言型 Outlook ソリューションの典型的なコンポーネント、ソリューションで使用できる各コンポーネントの数、および各コンポーネントの内容を説明します。

表 2. 中級の宣言型 Outlook ソリューションのコンポーネント

コンポーネント

ファイル名

使用できる数

説明

BDC モデル

名前は metadata.bdcm または metadata.xml にする必要があります。

ソリューションごとに 1 つ。必須。

すべての外部コンテンツ タイプとその関連付けを定義します。

キャッシュ サブスクリプション ファイル

名前は *Subscription.xml にする必要があります。たとえば、「CustomerSubscription.xmlOrderSubscription.xml」という名前を付けます。

ソリューションの各外部コンテンツ タイプに 1 つ。必須。

Business Connectivity Services クライアント キャッシュを設定する方法を定義します。

Outlook View Definition ファイル

*.ovd

ゼロ以上。

Outlook のカスタム ビューを定義します。

Outlook Form Storage ファイル

*.ofs

ゼロ以上。

Outlook フォーム領域ファイル。

フォーム領域マニフェスト

*.manifest.xml

ゼロ以上。ただし、フォーム領域 (*.ofs) が存在する場合は必須。

読み込むフォーム領域ファイルを Outlook に指示するマニフェスト ファイル。

ソリューション マニフェスト

OIR.config にする必要があります。

ソリューションごとに 1 つ。必須。

ソリューションを説明するソリューション マニフェスト。

リボン ファイル

*.xml

ソリューションごとに 1 つ。

Outlook のリボン ファイル。

レイアウト ファイル

*.xml

ゼロ以上。作業ウィンドウごとに 1 つ。

作業ウィンドウに表示するコントロール、コントロールに設定する必要がある外部コンテンツ タイプ、およびコントロールが表示するその他のカスタム プロパティを定義します。

カスタム アセンブリ

*.dll

ゼロ以上。

ソリューションで、カスタム コード アクション、カスタム 外部データ パーツ、カスタム リボン マネージャーなど、再利用可能な Business Connectivity Services コード コンポーネントを参照している場合。

アイコン

*.ico または *.png、*.jpg など、グラフィック ファイル形式

ゼロ以上。

Outlook ユーザー インターフェイスに表示されます。

InfoPath フォーム

*.xsn

ゼロ以上。

Microsoft InfoPath フォームに外部データを表示するために使用されます。

推奨する宣言型 Outlook ソリューションの作成方法

中間宣言型 Outlook ソリューションを作成するときは、必要なソリューション アーティファクト ファイルを生成し、アーティファクトを ClickOnce パッケージにパッケージ化します。以下の方法で、ソリューション アーティファクト ファイルを作成できます。

  • ツールを使用する方法 - BCS Artifact Generator ツール (英語)を使用して、XML アーティファクト ファイルを生成できます。このツールでは、最初に SharePoint Designer または XML エディターを使用して作成した BDC モデル ファイルが必要です。

  • 手動による方法 - XML エディターを使用して、XML アーティファクト ファイルを手動で作成できます。

次の方法では、Business Connectivity Services を使用して中級の宣言型 Outlook ソリューションを作成します。

  1. ソリューションで使用する外部コンテンツ タイプとその関連付けを定義する BDC モデルを作成し、metadata.bdcm として保存します (「手順 1: BDC モデルの作成 (Metadata.bdcm)」を参照してください)。ここでは、すべての XML を最初から記述しなくてもソリューションの BDC モデルを作成できる方法についても説明します。

  2. この SDK に用意されているテンプレートを使用して、ソリューションの各外部コンテンツ タイプのキャッシュ サブスクリプションを作成し、たとえば、OrderSubscription.xml、CustomerSubscription.xml のように "<ExternalContentTypeName>Subscription.xml" の形式で XML ファイルとして保存します。「手順 2: キャッシュ サブスクリプションの作成 (*Subscription.xml)」を参照してください。

  3. BCS Artifact Generator ツール (英語)、またはこの SDK に用意されているテンプレートを使用して、一般的なソリューションの設定、Outlook フォルダーの情報、およびプロパティ マッピングを提供するソリューション マニフェスト (OIR.config) を作成します。Business Connectivity Services によって、Outlook プロパティにマッピングできないプロパティを表示するためのフォーム領域が自動生成されます。「手順 3: ソリューション マニフェスト ファイル (Oir.config) を作成する」を参照してください。

  4. BCS ソリューション パッケージ ツール (英語)を使用してアーティファクトを 1 つの ClickOnce パッケージにパッケージ化します。そのパッケージを Outlook にインストールし、ソリューションをテストします。「手順 4: 宣言型 Outlook ソリューションをパッケージ化して展開する」を参照してください。

  5. 基本機能が予想どおりに動作する場合は、必要に応じて次の 1 つ以上のカスタマイズを使用してソリューションを拡張します。

    1. カスタム Outlook フォーム領域 (*.ofs) を作成します。「手順 5 (オプション): Outlook フォーム領域 (*.ofs) とフォーム領域マニフェスト (FormRegionManifest.xml) を作成する」を参照してください。

    2. カスタム Outlook View Definition (*.ovd) を作成します。「手順 6 (オプション): ユーザー設定の Outlook ビュー定義 (*.ovd) を作成する」を参照してください。

    3. 作業ウィンドウのレイアウト (*.xml) を作成します。「手順 7 (オプション): Outlook 作業ウィンドウ (Layout.xml) で外部データ パーツを表示する」を参照してください。

    4. カスタム リボンとアクション (ribbon.xml、OIR.config) を定義します。「手順 8 (オプション): リボンおよびアクションを定義する (Ribbon.xml)」を参照してください。

  6. アーティファクトをパッケージ化し、そのパッケージを Outlook に展開し、ソリューションを再テストします。

中級の宣言型 Outlook ソリューションを作成するためのツール

SharePoint Designer (BDC モデル用)、Outlook (カスタマイズしたフォーム領域とビュー定義用) など、さまざまなツールを使用して中間宣言型 Outlook ソリューションをビルドできます。Outlook 宣言型ソリューションに必要な XML ファイルを作成するときは、XML エディターを使用できます。Visual Studio では IntelliSense を使用できます。これは、XML ファイルを作成するときに役立ちます。手始めとして、サンプルとテンプレートがこのチュートリアルに用意されています。BCS Artifact Generator ツール (英語) を使用して、SharePoint Designer または XML エディターを使用して作成した BDC モデル以外の XML アーティファクトを生成することもできます。

BCS ソリューション パッケージ ツール (英語)を使用して、Outlook 宣言型ソリューションの ClickOnce パッケージを生成できます。

関連項目

概念

中間宣言型 Outlook ソリューションを作成するために役立つリソース

[チュートリアル] 中間宣言型 Outlook ソリューションの作成

[チュートリアル] 宣言型ソリューションの BCS 再利用可能コード コンポーネントを使用する

[チュートリアル] Outlook 中間宣言型ソリューションを別の言語にローカライズする

よく寄せられる質問: 宣言型 Outlook ソリューション

その他の技術情報

中間宣言型 Outlook ソリューションのテンプレート

中間宣言型 Outlook サンプル ソリューション成果物