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Exchange 2003 および Exchange 2007 が混在する環境でのジャーナリングについて

 

適用先: Exchange Server 2007 SP3, Exchange Server 2007 SP2, Exchange Server 2007 SP1, Exchange Server 2007

トピックの最終更新日: 2009-03-17

ここでは、Microsoft Exchange Server 2007 と Microsoft Exchange Server 2003 が相互動作する混在 Exchange 環境でジャーナリングが機能するしくみについて説明します。

ジャーナリングの詳細については、「ジャーナリングの概要」を参照してください。

Exchange 2003 のジャーナリング

Exchange 2003 のジャーナリング機能により、特定のメールボックス データベース上ですべてのメールボックスのジャーナルの処理を行うことができます。数百のメールボックスのうちの一部についてのみジャーナルを行う場合は、次のいずれかの操作を行う必要があります。

  • 該当するメールボックス データベースの全メールボックスの全メールについてジャーナルを行います。
  • 新しいメールボックス ストアを作成し、そのメールボックス データベースのジャーナリングを有効にしたうえで、ジャーナルを処理するメールボックスを新しいデータベースに移動します。

次の条件が当てはまる場合、メールボックス ストアごと、メールボックス サーバーごとにジャーナリングを管理する必要があります。

  • 複数のメールボックス サーバーが存在する。
  • さまざまなユーザー グループ、または組織全体との間でやり取りされるメッセージに対してジャーナルを行う。

Exchange 2003 で、ジャーナリング機能を集中管理できない場合。

既定では、Exchange 2003 でメッセージをジャーナル処理する場合は、元のメッセージのみがジャーナルの対象となり、ジャーナリング メールボックスに保存されます。元のメッセージのエンベロープ情報についてジャーナルを行うには、エンベロープ ジャーナリングを手動で有効にする必要があります。エンベロープ ジャーナリングを有効にしても、基本的な件名と受信者情報のみが使用可能です。

Exchange 2007 のジャーナリング

Exchange 2007 のジャーナリング機能は、ジャーナルを行う受信者および送信者に対する制御を強化するために大幅に変更されました。Exchange 2007 では、特定の受信者および送信者を対象とするジャーナル ルール、配布グループ、またはその両方を作成できます。受信者または送信者の場所はどこであってもかまいません。

ジャーナル ルールを使用すると、対象を限定してジャーナリングできます。たとえば、ジャーナルの対象にしたくない送信者および受信者が含まれているメールボックス データベースで、1 人または複数の受信者および送信者をジャーナルできます。ジャーナルは、作成したジャーナル ルールの対象となる送信者および受信者と送受信されたメッセージについてのみ行われます。メールボックス データベース内のその他の送信者および受信者については行われません。

さらに、Exchange 2007 では、ハブ トランスポート サーバーの役割をインストールしたコンピュータで、ジャーナル ルールを集中的に管理します。単一のハブ トランスポート サーバーでジャーナル ルールを構成する場合、ジャーナル ルールは組織全体の Active Directory ディレクトリ サービスを通じて、他のすべてのハブ トランスポート サーバーに自動的にレプリケートされます。つまり、組織内のすべてのハブ トランスポート サーバーが同じジャーナリングの構成を使用します。

Exchange 2007 では引き続き、メールボックス データベースごとにメッセージをジャーナル処理できます。この構成は、Exchange 2003 のメールボックス データベースごとの構成と同じで、ジャーナル対象のメールボックス データベース上のメールボックスで送受信されるすべてのメッセージがジャーナル処理されます。ここで示す情報はすべて、Exchange 2007 でジャーナル ルールを使用するか、メールボックス データベースごとのジャーナリングを使用するかで異なることはありません。

また、Exchange 2007 では、エンベロープ ジャーナリング機能が使用されており、メールボックスのジャーナル時に収集される可能性がある大量のデータを整理するのに役立つ詳細な情報がジャーナル エンベロープ内に提供されます。ジャーナル エンベロープは、サード パーティ製アプリケーションまたはカスタム アプリケーションを使用してジャーナル レポートのコンテンツを自動検索できるよう書式が設定されます。

Exchange 2007 のジャーナル レポートの詳細については、「ジャーナル レポートについて」を参照してください。

Exchange 2003 および Exchange 2007 で、ジャーナル レポートおよびジャーナル メッセージを識別する方法

Exchange 2003 では、メッセージのジャーナリングおよびジャーナル レポートの識別は、X-EXCH50 のバイナリ ラージ オブジェクト (BLOB) により制御されます。X-EXCH50 BLOB には、電子メール メッセージ内の他の場所には保存できないメッセージに関する詳細な情報が含まれます。たとえば、ジャーナリング、SCL (Spam Confidence Level)、MIME 表現を持たない他の MAPI プロパティなど、さまざまな情報が X-EXCH50 BLOB に保存されます。

Exchange 2003 では、X-EXCH50 BLOB を調べることで、メッセージがジャーナル レポートであるかどうかを判別し、メッセージ サイズやメールボックス受信者の制限などのさまざまなシステム制限を回避できます。また、Exchange 2003 では、X-EXCH50 BLOB を使用して、以前の Exchange 2003 サーバーによりメッセージがジャーナル処理されているかどうかを判別し、後続の Exchange 2003 サーバーでこのメッセージが再びジャーナル処理されないようにします。ただし、X-EXCH50 BLOB の制限は、専用の拡張簡易メール転送プロトコル (ESMTP) 動詞であるということです。そのため、Exchange Server をインストールしていないコンピュータでは伝播できません。

Exchange 2007 では、X-EXCH50 BLOB は廃止されており、ヘッダー ファイアウォールが適用される簡易メール転送プロトコル (SMTP) ヘッダーに置き換えられています。こうした SMTP ヘッダーは、Exchange 2007 トランスポート コンポーネントによってのみアクセスできます。この SMTP ヘッダーは、メールボックスへの配信前または Exchange 2007 組織外への配信前にメッセージから削除されます。X-MS-Exchange-Organization-Journal-Report SMTP ヘッダーは Exchange 2007 ジャーナル レポートを識別します。X-MS-Exchange-Organization-Processed-By-Journaling SMTP ヘッダーは、Exchange 2007 ジャーナリング エージェントにより処理されたメッセージを識別します。

X-MS-Exchange-Organization-Journal-Report SMTP ヘッダーがメッセージに含まれていると、Exchange 2007 はメッセージがジャーナル レポートであることを認識し、そのメッセージをシステム メッセージとして処理して、メッセージ サイズおよびメールボックスの受信者の制限をバイパスできます。X-MS-Exchange-Organization-Processed-By-Journaling SMTP ヘッダーがメッセージに含まれる場合は、Exchange 2007 は以前にハブ トランスポート サーバー上でジャーナリング エージェントによりメッセージが既に処理されていることを認識し、メッセージの再ジャーナルを行いません。

note注 :
ジャーナル レポートがジャーナル メールボックスに配信されたときに X-MS-Exchange-Organization-Journal-Report SMTP ヘッダーがヘッダー ファイアウォールにより削除されるので、X-MS-Journal-Report SMTP ヘッダーがジャーナル レポートに追加されます。X-MS-Journal-Report SMTP ヘッダーによりジャーナル レポートと通常のメッセージを区別できますが、このヘッダーはどの Exchange 2007 トランスポート コンポーネントでも使用されません。

SMTP ヘッダー ファイアウォールの詳細については、「ヘッダー ファイアウォールについて」を参照してください。

Exchange 2003 と Exchange 2007 のジャーナリングの相互運用性

ここでは、混在 Exchange 環境でジャーナリングが機能するしくみについて説明します。

Exchange 2007 組織での Exchange 2003 ジャーナリングのサポート

既に説明したように、Exchange 2003 と Exchange 2007 では、ジャーナル レポートおよびジャーナル処理されたメッセージの識別方法が異なります。Exchange 2007 では、Exchange 2003 と Exchange 2007 が混在する組織内でのジャーナルをサポートするために、X-EXCH50 BLOB を使用します。ただし Exchange 2003 は、Exchange 2007 が使用する新しい SMTP ヘッダーについてはサポートも認識もしません。

Exchange 2007 はメッセージをジャーナル処理するとき、X-MS-Exchange-Organization-Processed-By-Journaling SMTP ヘッダーと X-EXCH50 にプロパティを追加します。これにより、メッセージを受信した Exchange 2003 サーバーは、メッセージが既にジャーナルされていることを認識できるようになります。

Exchange 2007 は、ジャーナル レポートも同様に処理します。Exchange 2007 でジャーナル レポートが作成されるとき、X-MS-Journal-Report ヘッダーの他に X-EXCH50 BLOB がメッセージに追加されます。これにより、ジャーナル レポートを Exchange 組織内で転送し、このレポートの転送先のすべての Exchange サーバーでレポートをジャーナル レポートとして扱えるようになります。混在モードで運用している場合は、送信先のジャーナル メールボックス (ジャーナル レポートの送信先) を Exchange 2003 のメールボックスにすることをお勧めします。混在モードでのデータベースベースのジャーナルでは、Exchange 2003 のメールボックスを送信先とする必要があります。送信先のジャーナル メールボックスが Exchange 2007 のメールボックスの場合は、ジャーナル レポートが不完全になることがあります。

また、Exchange 2007 は、Active Directory から Exchange 2003 ジャーナリング構成を読み取ります。この構成により、どの Exchange 2003 メールボックス データベースでジャーナルが有効であるか、およびどのジャーナリング メールボックスにジャーナル レポートが送信されたかが Exchange 2007 ハブ トランスポート サーバー指示されます。jジャーナル処理された Exchange 2003 のメールボックス データベース上の受信者に Exchange 2007 からメッセージが送信される場合、Exchange 2007 ハブ トランスポート サーバーはそのメッセージをジャーナル処理し、Exchange 2003 のメールボックス データベース上に構成されているジャーナル用メールボックスにジャーナル レポートを送信します。組織が完全に Exchange 2007 に移行した後であれば、Exchange 2007 のメールボックスを送信先の メールボックスとすることができます。

Exchange 2007 のジャーナル レポートの詳細については、「ジャーナル レポートについて」を参照してください。

Exchange 2003 と Exchange 2007 間のルーティング グループ コネクタの構成

ハブ トランスポート サーバーを Exchange 2003 組織にインストールすると、Exchange ルーティング グループ (DWBGZMFD01QNBJR) という名前のルーティング グループが自動的に作成されます。このルーティング グループには、Exchange 2007 を実行する組織内のすべてのコンピュータが含まれます。すべての Exchange 2007 サーバーがこのルーティング グループのメンバです。次に Exchange 2007 は、既存の Exchange 2003 ルーティング グループに Exchange 2007 ルーティング グループを接続するためのルーティング グループ コネクタを構成します。

Exchange 2007 により作成されるルーティング グループ コネクタは、Exchange 2007 サーバーと Exchange 2003 サーバー間での X-EXCH50 BLOB の受け渡しが可能になるように構成されます。Exchange 2007 ルーティング グループと他の Exchange 2003 ルーティング グループ間で追加ルーティング グループ コネクタを作成した場合、そのルーティング グループ コネクタでも Exchange 2007 サーバーと Exchange 2003 サーバー間で X-EXCH50 BLOB の受け渡しが可能になるように構成されます。

important重要 :
Exchange 2007 サーバーと Exchange 2003 サーバー間で新しいルーティング グループ コネクタを作成するには、New-RoutingGroupConnector コマンドレットを使用する必要があります。New-RoutingGroupConnector コマンドレットにより、Exchange 2007 と Exchange 2003 間の通信に必要なアクセス許可と既定値が構成されます。詳細については、「New-RoutingGroupConnector」を参照してください。

ルーティング グループ コネクタの詳細については、以下のトピックを参照してください。

複数のジャーナル レポートの削減

ネイティブ Exchange 2007 組織内でハブ トランスポート サーバーを経由して受け渡されるメッセージは、ジャーナリング エージェントにより評価されます。メッセージで配信前に受信者一覧が変更されていなければ、以降、ハブ トランスポート サーバーのジャーナリング エージェントによるメッセージの再評価は行われません。1 つのハブ トランスポート サーバー上でのみジャーナリング メッセージが評価されるので、一般的に 1 つのジャーナル レポートのみが作成され、ジャーナリング メールボックスに送信されます。

Exchange 2003 と Exchange 2007 の混在する組織でメッセージのジャーナル処理が行われる場合、単一メッセージに対して複数のジャーナル レポートが作成される可能性が増大します。これは、ハブ トランスポート サーバーでメッセージを送受信する Exchange 2007 ハブ トランスポート サーバーと Exchange 2003 サーバーの両方が、ジャーナリングについてメッセージを評価するためです。

Exchange 2007 は、ここで先ほど説明したように X-EXCH50 BLOB をサポートすることにより、単一メッセージに対して生成される複数のジャーナル レポートを減らします。Exchange 2007 ハブ トランスポート サーバーは、元のメッセージに対して、X-EXCH50 BLOB、およびジャーナル レポートが送信されたジャーナリング メールボックスのアドレスをスタンプします。Exchange 2003 サーバーは Exchange 2007 ハブ トランスポート サーバーからメッセージを受信すると、X-EXCH50 BLOB を調べて、そのメッセージがジャーナルされているかどうかを判断します。ジャーナルが行われている場合、およびメールボックスの存在するメールボックス ストア上で構成されているジャーナリング メールボックスにジャーナル レポートが送信された場合、Exchange 2003 はジャーナル レポートを生成しません。

note注 :
Exchange 2007 は X-EXCH50 BLOB をサポートしますが、Exchange 2003 サーバーから受信したメッセージを評価する場合、ジャーナリング エージェントでは X-EXCH50 BLOB を読み取りません。Exchange 2007 ジャーナル ルールにメッセージが一致する場合は、Exchange 2003 で既にメッセージのジャーナルが行われていて、同じジャーナリング メールボックスにジャーナル レポートが送信されていても、ジャーナル レポートが作成されます。

ジャーナリング メールボックスの場所

Exchange 2003 メールボックス データベース上に存在するメールボックスのジャーナルを行う場合、ジャーナリングが有効になっていない Exchange 2003 メールボックス データベースにジャーナリング メールボックスが存在する必要があります。Exchange 2003 以外のメールボックス データベースにあるメールボックスへのメッセージをジャーナルするように、メールボックス データベースを構成することはできません。ジャーナル処理が行われている Exchange 2003 メールボックス データベースにジャーナル用メールボックスを配置した場合、ディスク利用率が過度に高まる可能性があります。

混在環境でメールボックスごとのデータベース ジャーナルを使用する場合、ジャーナル用メールボックスは Exchange 2003 のメールボックス データベース上に配置する必要があります。

Exchange 2003 メールボックスまたは Exchange 2007 メールボックスのいずれかにジャーナル レポートを配信するように Exchange 2007 ジャーナル ルールを構成できます。

配布グループの展開

Exchange 2003 と Exchange 2007 の両方で、配布グループを利用できます。配布グループはメールが有効なグループで、電子メール受信者を何人でも追加できます。送信者が配布グループにメッセージを送信すると、サーバーが元のメッセージを取得したうえで、配布グループのメンバシップにアクセスし、メンバシップの一覧にある各受信者にそのメッセージを送信します。このプロセスは、配布グループの展開と呼ばれます。

Exchange 2003 および Exchange 2007 の両方で、配布グループの展開を実行するサーバーを指定できます。Exchange 2007 では、既定で、任意のハブ トランスポート サーバーを配布グループの展開サーバーとして使用するよう配布グループが構成されます。一方、Exchange 2003 の既定では、任意のサーバーが配布グループの展開サーバーとして動作可能です。

ただし、配布グループの展開サーバーとして特定のサーバーを使用するように、配布グループを個別に構成することもできます。これは一般的に、サーバーとネットワーク トラフィックの負荷を最適化するために行われます。

展開サーバーが配布グループによって使用されている既存の Exchange 2003 組織に Exchange 2007 をインストールし、ジャーナル処理を実行する場合は、Exchange 2007 ハブ フランスポート サーバーを配布グループの展開サーバーとして使用するようにすべての配布グループを構成します。次の条件が当てはまる場合は、受信者がジャーナル処理の対象として構成されていても、メッセージはジャーナル処理されません。

  • Exchange 2007 受信者でジャーナリングが構成されている。
  • Exchange 2007 の受信者が配布グループに含まれている。
  • 配布グループが Exchange 2003 の配布リスト展開サーバーを使用するように構成されている。

たとえば、"販売" 配布グループに Exchange 2007 の受信者が含まれており、Exchange 2003 の配布リスト展開サーバーを使用するように構成されているとします。この場合、Exchange 2007 の送信者が "販売" 配布グループにメッセージを送信すると、次のイベントが発生します。

  1. メッセージがハブ トランスポート サーバーに送信されます。
  2. Sales 配布グループで配布グループの展開サーバーとしてハブ トランスポート サーバーを使用するように構成されていないので、Exchange 2007 組織内のジャーナル ルールが配布グループの受信者にアクセスできません。したがってジャーナル ルールは、配布グループ内の受信者に適用できません。
  3. メッセージは、展開のために Exchange 2003 サーバーにルーティングされます。
  4. Exchange 2003 サーバーは、配布グループを展開します。Exchange 2003 サーバーが Exchange 2007 ジャーナル ルール構成にアクセスできないので、メッセージのジャーナル処理は行われません。
  5. Exchange 2003 サーバーは、Exchange 2007 受信者に配信するために、展開されたメッセージを Exchange 2007 ハブ トランスポート サーバーにルーティングします。
  6. ハブ トランスポートはメッセージを受信します。ハブ トランスポート サーバーは、これらのメッセージをルーティングする最初のサーバーではないので、ジャーナリングについてメッセージが既に評価されているものと見なし、ジャーナル ルールは適用されません。

詳細情報

詳細については、以下のトピックを参照してください。

参照している情報が最新であることを確認したり、他の Exchange Server 2007 ドキュメントを見つけたりするには、Exchange Server TechCenter を参照してください。