ユニファイド メッセージングの概要

 

適用先: Exchange Server 2010 SP2, Exchange Server 2010 SP3

トピックの最終更新日: 2016-11-28

MicrosoftExchange Server 2010 ユニファイド メッセージング (UM) によって、ボイス メッセージングと電子メール メッセージングが単一のメッセージング インフラストラクチャに統合されます。ユニファイド メッセージングによって、すべての電子メール メッセージおよび音声メッセージが、さまざまなデバイスからアクセスできる 1 つの Exchange 2010 メールボックスに統合されます。ネットワークにユニファイド メッセージング サーバーを展開すると、ユーザーは Outlook Voice Access を使用して、電話、携帯電話、またはコンピューターから自分のメッセージにアクセスできます。

組織では現在、音声メッセージは電子メール メッセージとは別に管理されることがよくあります。さらに、IT 管理者は多くの場合、ボイス メールまたはテレフォニー ネットワークと、電子メール システムまたはデータ ネットワークを個別のシステムとして管理しています。これらの場合、ボイス メールと電子メールは個別のサーバーにホストされた個別の受信トレイに配置され、電子メールの場合はデスクトップ経由で、ボイス メールの場合は電話を通してアクセスされます。ユニファイド メッセージングは、電子メールおよび音声メッセージを含むすべてのメッセージ用に Exchange 2010 ストアを使用します。

ユニファイド メッセージングに関連する管理タスクについては、「ユニファイド メッセージングの管理」を参照してください。

目次

ユニファイド メッセージングの概要

Exchange 2010 ユニファイド メッセージングの利点

UM サーバーを構成する

UM ユーザーの構成

UM コンポーネントの構成

UM 通話応答

ユニファイド メッセージング サービスとコンポーネントの概要

Unified Communications Managed API 2.0

サービス ポート

ユニファイド メッセージングの概要

Microsoft Exchange 2010 には、Windows Server 2008 を実行しているコンピューターにインストールして構成できるサーバーの役割がいくつかありますが、ユニファイド メッセージング サーバーの役割はそのうちの 1 つです。ユニファイド メッセージングは Exchange Server 2007 および Exchange 2010 に含まれており、Exchange 管理者にとってはなじみのない、新しいテレフォニーの概念を実現します。

ユニファイド メッセージングによって、音声メッセージング、FAX メッセージング、および電子メール メッセージングが Exchange ストアに統合されます。ユニファイド メッセージングによって Microsoft Exchange とテレフォニー ネットワークが統合され、UM 機能が Exchange の中心となります。次の図は、ある組織のテレフォニー ネットワーク コンポーネントと UM システムの関係を示しています。

テレフォニー コンポーネントとユニファイド メッセージングの関係

前の図のユニファイド メッセージング ソリューションは、標準のボイス オーバー IP (VoIP) プロトコルを使用して、テレフォニー システムへのアクセスを可能にしています。このようなプロトコルには、セッション開始プロトコル (SIP)、リアルタイム転送プロトコル (RTP)、および T.38 プロトコルが含まれます。IP ゲートウェイは、従来の構内交換機 (PBX) システムと相互運用できます。詳細については、「テレフォニーの概念とコンポーネントについて」を参照してください。

注意

仮想環境でのユニファイド メッセージング サーバーの役割のインストールと実行は、MicrosoftExchange Server 2010 Service Pack 1 (SP1) 以降のバージョンを実行している場合にサポートされます。Exchange 2010 RTM を実行している仮想環境では、ユニファイド メッセージング サーバーの役割はサポートされません。

ユニファイド メッセージングの概要

Exchange 2010 ユニファイド メッセージングの利点

Exchange 2010 ユニファイド メッセージング ソリューションは、エンド ユーザーと IT 管理者の両方にとって利点があります。

ユーザーの利点

Exchange 2010 ユニファイド メッセージングを展開すると、ユーザーは、Outlook や Microsoft Office Outlook Web App などの電子メール クライアント、Windows Mobile フォンなどの Microsoft Exchange ActiveSync がセットアップされている携帯電話、または電話から、自分の Exchange 2010 メールボックスにあるボイスメール、電子メール、および予定表の情報にアクセスできます。さらに、ユーザーは次の機能を使用できます。

  • Exchange の情報へのアクセス   UM が有効なユーザーは、インターネット対応の携帯電話、Microsoft Office Outlook 2007、Outlook 2010、および Outlook Web App からすべてのボイス メール機能にアクセスできます。これらの機能には、多くのボイス メール構成オプションが含まれます。また、音声メッセージを統合された Windows Media Player を使用して閲覧ウィンドウから再生するか、コンピューターのスピーカーを使用してメッセージ一覧から再生する機能が含まれます。

  • 電話での再生   電話での再生機能を使用すると、UM が有効なユーザーは電話で音声メッセージを再生できます。ユーザーがオフィスのデスクにいて、共有のコンピューターを使用している、またはマルチメディア対応でないコンピューターを使用している場合、または機密にかかわる音声メッセージを聞く場合は、コンピューターのスピーカーで音声メッセージを聞きたくない、または聞くことができない可能性があります。自宅やオフィスの電話、携帯電話などの電話を使用して、音声メッセージを再生できます。

  • ボイス メール形式   Outlook 2007、Outlook Web App、および Outlook 2010 のボイス メール形式は、既定の電子メール形式と似ています。音声メッセージの再生、停止、一時停止、電話での再生、メモの追加や編集などの操作を実行するためのインターフェイスが、ユーザーに提供されます。

    ボイス メール形式には、埋め込みの Windows Media Player および "音声メモ" フィールドが含まれます。埋め込みの Windows Media Player や "メモ" フィールドは、音声メッセージをプレビューするときは閲覧ウィンドウに、また音声メッセージを開くときには別のウィンドウに表示されます。ユーザーのユニファイド メッセージングが有効になっていなかったり、Outlook 2007 がクライアント コンピューターにインストールされていなかったりすると、ユーザーは音声メッセージを電子メールの添付ファイルとしてのみ確認でき、ボイス メールの形式は使用できません。

  • ユーザー構成   ユニファイド メッセージングが有効なユーザーは、Outlook Web App を使用して、ユニファイド メッセージングのいくつかのボイス メール オプションを構成できます。たとえば、電話アクセス番号やボイス メールの "電話での再生" を構成したり、ボイス メール アクセス PIN をリセットしたりすることができます。

  • 通話応答   通話応答には、ユーザーの代理での着信呼び出しに対する応答、個人用の案内応答、メッセージの録音、電子メール メッセージとして受信トレイに配信するためのメッセージの送信が含まれます。

  • 通話応答ルール   通話応答ルールは、Exchange 2010 の新機能です。この機能を使用すると、エンド ユーザーは着信呼び出しの通話応答の処理方法を決定できます。通話応答ルールを着信呼び出しに適用する方法は、受信トレイ ルールを受信電子メール メッセージに適用する方法と似ています。既定では、通話応答ルールは構成されていません。ユニファイド メッセージング (UM) サーバーが着信呼び出しに応答すると、発信者は、呼び出し先に音声メッセージを残すよう求められます。発信者は通話応答ルールを使用して次の操作を行うことができます。

    • UM が有効なユーザーに音声メッセージを残す。

    • UM が有効なユーザーの代理連絡先に転送する。

    • 代理連絡先のボイス メールに転送する。

    • UM が有効なユーザーが構成した他の電話番号に転送する。

    • Find-Me 機能を使用するか、監督されている転送経由で UM が有効なユーザーを特定します。

  • ボイス メール プレビュー   Exchange 2010 では、ユニファイド メッセージング サーバーの役割は新規作成されたボイス メール メッセージで ASR を使用します。ユーザーが音声メッセージを受信する際、そのメッセージには音声録音から作成された録音とテキストの両方が含まれます。ユーザーに対しては、Outlook Web App、Outlook 2007、または Outlook 2010 内からの電子メール メッセージ中に音声メッセージ テキストが表示されます。

  • メッセージ待機インジケーター   メッセージ待機インジケーターは、最も古いボイス メール システムにある機能で、新しいメッセージの存在を示す機構をすべて参照できます。Exchange 2007 では、この機能がサードパーティ製のアプリケーションで提供されており、電話のランプの点灯によって音声メッセージの受信が通知されていました。Exchange 2010 にはこの機能が追加されており、サードパーティ製のソフトウェアは不要です。メッセージ待機インジケーターの有効化または無効化は、ユーザーのメールボックスまたは UM メールボックス ポリシーで行われます。

  • SMS を使用した不在着信通知とボイス メール通知   ホストされているダイヤル プラン、またはコンシューマー ダイヤル プランのメンバーであるユーザーが、ボイス メール設定を携帯電話の番号で構成しており、自動転送を構成している場合、そのユーザーはショート メッセージ サービス (SMS) 経由のテキスト メッセージで、不在着信通知および新規ボイス メール通知を携帯電話で受信できます。ただし、これらの種類の通知を受信するには、ユーザーが最初にテキスト メッセージングを構成し、アカウントの [通知] を有効にしておく必要があります。

  • 保護されているボイス メール   保護されているボイス メールは、親展メールを送信するためのユニファイド メッセージング機能です。このメールは Active Directory Rights Management Services (AD RMS) によって保護され、ユーザーは電子メールからの音声ファイルの転送、コピー、抽出を制限されます。保護されているボイス メールによってユニファイド メッセージングの機密性が向上するため、ユーザーは音声メッセージの対象者を制限したい場合に安心してユニファイド メッセージングを使用することができます。この機能は、Exchange 2007 での親展電子メール メッセージの処理方法と似ています。Exchange 2010 では、これがボイス メール メッセージにも適用されます。

  • Outlook Voice Access UM が有効なユーザーが使用できるユニファイド メッセージング ユーザー インターフェイスが 2 つあります。電話ユーザー インターフェイス (TUI) と音声ユーザー インターフェイス (VUI) です。これら 2 つのインターフェイスを合わせて Outlook Voice Access と呼びます。サブスクライバーは、外部または内部の電話からユニファイド メッセージング システムにアクセスするときに Outlook Voice Access を使用できます。ユニファイド メッセージング システムにダイヤル インする UM が有効なユーザーは、Outlook Voice Access を使用して自分のメールボックスにアクセスできます。UM が有効なユーザーは、電話を使用して次の操作を実行できます。

    • ボイス メールにアクセスする

    • 電子メール メッセージを聞く、転送する、または返信する

    • 予定表情報を再生する

    • グローバル アドレス一覧または連絡先のグループに保存されている連絡先にアクセスまたはダイヤルする

    • 会議出席依頼を承諾するまたは取り消す

    • 不在時に発信者に通知するボイス メール メッセージを設定する

    • ユーザーのセキュリティ設定と個人用オプションを設定する

  • Outlook Voice Access を使用してのグループ アドレス指定   Exchange 2007 では、ユーザーはメールボックスへのログオン時に、Outlook Voice Access の電話ユーザー インターフェイス (TUI) または音声ユーザー インターフェイス (VUI) のいずれかを使用して電子メール メッセージと音声メッセージを送信していました。ただしユーザーは、個人用連絡先の 1 人の受信者、ディレクトリから個別に追加した複数の受信者、またはグローバル アドレス一覧から配布リストに名前を追加した複数の受信者に対して、1 通の電子メール メッセージを送信できるだけでした。Exchange 2010 では、ユーザーが Outlook Voice Access を使用してメールボックスにサインインすると、個人用連絡先に格納されているグループ内のユーザーに対しても電子メール メッセージと音声メッセージを送信できます。

ユニファイド メッセージングの概要

管理者の利点

現在、ほとんどのユーザーと IT 部門は、ボイス メールを電子メールとは別に管理しています。ボイス メールと電子メールは個別のサーバーにホストされた個別の受信トレイとして存在し、電子メールの場合はデスクトップ経由、ボイス メールの場合は電話を通じてアクセスされます。ユニファイド メッセージングを使用すれば、すべてのメッセージを 1 つのストアに統合し、コンピューターと電話を介してコンテンツにアクセスできるようになります。

Exchange の管理者は、Exchange 管理コンソールおよび Exchange 管理シェルを使用して、他の Exchange を管理する場合と同じインターフェイスを使用してユニファイド メッセージングを管理できます。以下のことを行うことができます。

  • 1 つのプラットフォームからボイス メールと電子メールを管理する

  • スクリプト可能なコマンドを使用してユニファイド メッセージングを管理する

  • 可用性と信頼性の高いユニファイド メッセージングのインフラストラクチャを構築する

Exchange 2010 ユニファイド メッセージングでは、管理者向けに次の機能が提供されています。

  • 完全なユニファイド メッセージング システムExchange 2010 ユニファイド メッセージングは、ストア、トランスポート、およびディレクトリの単一のインフラストラクチャを使用する、本当の意味でのユニファイド メッセージング ソリューションを提供します。ストアは、Exchange 2010 メールボックス サーバーの役割によって提供されます。トランスポートは、Exchange 2010 ハブ トランスポート サーバーの役割によって提供されます。すべての電子メール メッセージとボイス メール メッセージは、1 つの管理ポイントから、1 つの管理インターフェイスおよびツール セットを使用して管理できます。これにより、インフラストラクチャとトレーニングが統一されて、管理の全体的なコストが大幅に減少します。

  • Exchange 2010 の展開および管理モデルExchange 2010 ユニファイド メッセージング ソリューションを使用することで、Exchange 2010 サーバーの設計を利用できます。ユニファイド メッセージング サーバーの役割を実行するために、新しいサーバーを購入する必要はありません。さらに重要なことは、トレーニングやトラブルシューティングの方法論などの Exchange に関する知識を再利用し、ボイス メールのインフラストラクチャの管理に適用できることです。

  • Exchange 2010 セキュリティ モデルMicrosoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスは、Exchange サーバー アカウントとして実行されます。これはつまり、Exchange 2010 ユニファイド メッセージング用にスーパー ユーザー アカウントを作成および管理する必要がないということです。

  • ボイス メール システムの統合 現在、ほとんどの音声メッセージング システムでは、音声メッセージング システムのすべてのコンポーネントを、組織のすべてのオフィスの物理的な所在地にインストールする必要があります。この種の配置では、支社の音声メッセージング システムは中央オフィスの外部に存在し、オンサイトで管理する必要があります。このため、管理のコストと複雑さが増すことがよくあります。Exchange 2010 ユニファイド メッセージングを使用すると、ボイス メール システムを集中的に管理できます。ユニファイド メッセージングの集中管理システムを作成するため、すべてのユニファイド メッセージング サーバーを 1 つのデータセンターまたは所在地に配置し、各支社に IP ゲートウェイを展開して、各支社の音声メッセージング システムと置き換えることができます。この方法で集中音声メッセージング システムを展開すると、ハードウェアおよび管理にかかるコストを大幅に削減できます。

  • 組み込みのユニファイド メッセージング管理役割Exchange 2010 では、ユニファイド メッセージング機能およびボイス メール機能を管理するための役割セットが定義されています。UM を含む管理役割は、Microsoft Exchange Server 2007 で使用可能でした。Exchange 2010 では、次の UM 固有の管理役割が追加されています。

    • UM メールボックス

    • UM プロンプト

    • ユニファイド メッセージング

  • 着信 FAX のサポートExchange 2007 では、ユニファイド メッセージング サーバーの役割によって、FAX メッセージの作成が組み込みでサポートされていました。UM が有効なメールボックスを持つユーザーは、自分の電話番号宛の FAX メッセージを受信することができました。Exchange 2007 UM では、受信 FAX ルーティングや送信 FAX はサポートされていませんでした。

    Exchange 2010 では、ユニファイド メッセージング サーバーの役割から FAX の直接的なサポートが削除されています。Exchange 2010 で動作する FAX ソリューションが必要なお客様は、FAX パートナー ソリューションを展開する必要があります。FAX パートナー ソリューションは複数の FAX パートナーから利用できます。FAX パートナー ソリューションは Exchange 2010 と緊密に統合されて設計されており、これにより UM が有効なユーザーが着信 FAX メッセージを受信できます。

    注意

    Exchange 2010 ユニファイド メッセージングの RTM バージョンを使用している場合、一部の IP PBX で FAX 受信が正常に行えるようにするには、インバンド FAX トーン検出を有効にする必要がある場合があります。これには、msexchangeum.config ファイルの EnableInbandFaxDetection 設定を True に変更します。msexchangeum.config ファイルは、Exchange 2010 ユニファイド メッセージング サーバー上の \Program Files\Microsoft\Exchange\V14\bin フォルダーにあります。この設定を構成しない場合、ユニファイド メッセージング サーバーはインバンド FAX トーン検出を行うため、IP ゲートウェイに依存します。
    Exchange 2010 Service Pack 1 (SP1) では、msexchangeum.config ファイルの EnableInbandFaxDetection 設定を True に変更する必要はありません。Exchange 2010 SP1 がインストールされたユニファイド メッセージング サーバーでは、FAX トーン検出を有効にする必要はありません。Unified Communications Managed API v. 2.0 (UCMA) により、ユニファイド メッセージング サーバーがインバンドとアウト オブ バンドの両方の FAX イベントをリッスンするようになるためです。

  • 複数言語のサポートExchange 2010 では、すべての使用可能な言語パックに、音声合成 (TTS) エンジンおよび特定の言語で録音済みのプロンプトと ASR サポートが含まれています。ただし、ボイス メール プレビューのサポートは一部の言語パックにしか含まれていません。Exchange 2010 DVD には US 英語 (en-US) 言語パックが含まれており、追加の UM 言語パックはMicrosoft ダウンロード センター (英語) からダウンロードできます。

  • 自動応答 自動応答は、外部および内部のユーザーが Exchange 2010 ユニファイド メッセージング システムにアクセスできるようにするための一連の音声プロンプトです。電話のキーパッドや音声入力を使用して、自動応答メニュー内を移動したり、ユーザーに電話をしたり、UM が有効なユーザーを見つけてそのユーザーに電話をしたりすることができます。自動応答を使用すると、管理者は次の作業を行うことができます。

    • 外部ユーザー向けにカスタマイズしたメニューを作成する。

    • 情報用案内応答、勤務時間内用案内応答、および勤務時間外用案内応答を定義する。

    • 休日のスケジュールを定義する。

    • 組織のディレクトリを検索する方法を説明する。

    • ユーザーの内線への接続方法を説明し、外部から電話を掛けてきた人が内線を指定してユーザーを呼び出せるようにする。

    • 組織のディレクトリの検索方法を説明し、外部から電話を掛けてきた人が組織のディレクトリを検索して特定のユーザーを呼び出せるようにする。

    • 外部ユーザーがオペレーターを呼び出せるようにする。

ユニファイド メッセージングの概要

UM サーバーを構成する

ユニファイド メッセージング サーバーの役割をインストールしているときに、Active Directory の Computers コンテナー内に UM コンピューター オブジェクトが作成されます。Active Directory 内に作成される UM コンピューター オブジェクトは、ユニファイド メッセージング サーバーの役割がインストールされている物理サーバーを示すものです。UM Active Directory コンピューター オブジェクトによって、組織のテレフォニー インフラストラクチャと UM Active Directory ネットワーク環境が接続されます。

注意

インストール時に新しい UM コンピューター オブジェクトを作成するには、ユニファイド メッセージング サーバーの役割をインストールする前に、UM サーバーをドメインのメンバーにする必要があります。

コンピューター オブジェクトの作成後、ユニファイド メッセージングをネットワークに展開する手順を実行できます。

サーバーの動作

ユニファイド メッセージング サーバーの役割がインストールされると、既定で UM サーバーの動作状態が有効に設定されます。これにより、UM サーバーによって音声呼び出しの着信および発信が処理され、メッセージが Exchange 組織内の指定の受信者にルーティングされます。動作状態が有効に設定されていないと、UM サーバーは着信呼び出しの処理を行いません。

UM サーバーの動作状態は、EMC およびシェルで Enable コマンドと Disable コマンドを使用して制御できます。UM サーバーには、次の 3 つの状態モードがあります。

  • [有効] すべての着信呼び出しを処理します。

  • [直ちに無効化] 新しい呼び出しを受け付けず、すべての既存の呼び出しを切断します。

  • [呼び出し完了後に無効化] 新しい呼び出しは受け付けませんが、既存の呼び出しをすべて処理します。

UM サーバーが起動すると、そのサーバーおよび既存の UM ダイヤル プランに関連付けられているすべての UM IP ゲートウェイの場所が特定されます。UM ダイヤル プランまたは UM IP ゲートウェイに対する構成の変更を検出して特定するために、UM サーバーは 10 分ごとに変更通知を登録するか構成を再確認します。

UM IP ゲートウェイの一覧が変更されると、UM サーバーはそれに対応して、UM サーバーのダイヤル プランに関連付けられている IP ゲートウェイの使用を開始または停止します。UM サーバーが UM ダイヤル プランに関連付けられたメンバーとして機能し、IP ゲートウェイまたは PBX との通信を開始した後、一連の診断操作を実行して、接続および動作が正しいかどうかを確認できます。

ユニファイド メッセージングの概要

UM ユーザーの構成

ユーザーのメールボックスを有効にすると、メールボックスの作成または既存のメールボックスへの接続を行うためのオプションが提供されます。ユーザーを既存のメールボックスに接続するか、ユーザー用のメールボックスを作成した後、そのユーザーがユニファイド メッセージングを使用できるよう、メールボックスを有効にする必要があります。ユニファイド メッセージングが有効になると、電子メールおよび音声メッセージがすべてユーザーのメールボックスに配信されます。UM ユーザーは、Outlook 2007、Outlook 2010、Outlook Web App、Exchange ActiveSync が有効となっている携帯電話、または通常の電話や携帯電話を使用して、電子メール、音声メッセージ、および予定表の情報にアクセスできます。

注意

複数の UM ユーザーを有効にするには、シェルで Enable-UMMailbox コマンドレットを使用します。

ユーザーの UM プロパティ

ユーザーのユニファイド メッセージングが有効になると、ユーザーの UM プロパティを管理、変更、および構成できます。

ユーザーの UM プロパティは、メールボックス オブジェクトと、ユーザーの Active Directory オブジェクトの 2 か所に格納されます。ユーザーをユニファイド メッセージングに対して有効にすると、UM プロパティがユーザーのメールボックス オブジェクトに設定されます。メールボックス プロパティでユニファイド メッセージングを有効に設定すると、ユーザーは Exchange 2010 の UM 機能を使用できるようになります。

ユーザーのユニファイド メッセージングが有効になると、そのユーザーの内線番号、名前、およびその他のプロパティなどの UM プロパティが、Active Directory 内のユーザーのプロパティ、およびユーザーのメールボックスに格納されます。

シェルまたは EMC を使用して、Active Directory ユーザーの UM プロパティを UM ユーザーのメールボックスで管理できます。

UM ユーザーと UM メールボックス ポリシーとの関係

あるユーザーのユニファイド メッセージングを有効にする場合、そのユーザーは既存の UM メールボックス ポリシーに関連付けまたはリンクされている必要があります。また、ユーザーの内線番号を指定する必要があります。Enable-UMMailbox コマンドレットを使用するか、またはユーザーの Exchange メールボックスの作成時に UM メールボックス ポリシーを選択することにより、ユーザーを UM メールボックス ポリシーに関連付けることができます。

UM メールボックス ポリシーには、ユーザーに対するダイヤル制限や PIN ポリシーなどの設定が含まれています。UM メールボックス ポリシーを作成する際は、UM メールボックス ポリシーを必ず 1 つの UM ダイヤル プランに関連付けます。この場合、UM ダイヤル プランは、少なくとも 1 つの UM サーバーに自動的に関連付けられます。UM ダイヤル プランに関連付けられた任意の UM サーバーは、UM ダイヤル プランを使用する、UM が有効なユーザーに対して UM サービスを提供できます。このように Active Directory オブジェクトを関連付けることで、Active Directory を使用して UM サービスが配信されます。ユーザーに対してユニファイド メッセージングを有効にすると、UM メールボックス ポリシーの設定が、UM が有効なユーザーに適用されます。

UM コンポーネントの構成

Exchange 2010 ユニファイド メッセージングは、現在の Active Directory 環境を利用するオブジェクトを使用して音声メッセージング サービスを提供します。ユニファイド メッセージングをサポートするため、UM Active Directory オブジェクトが作成されます。Active Directory は、これらすべての UM オブジェクトおよびその構成設定用のコンテナーとして機能します。

UM Active Directory オブジェクトによって、UM とテレフォニー インフラストラクチャ間の対話が可能となります。この物理インフラストラクチャとコンポーネント間の関係は、Active Directory でミラー化されます。詳細については、「ユニファイド メッセージング サーバー コンポーネントについて」を参照してください。

テレフォニー ハードウェア デバイスを表すために作成される UM Active Directory オブジェクトがある一方、組織のテレフォニー ダイヤル プランを表したり、ユニファイド メッセージングの特定の機能をサポートするために作成されるその他の UM Active Directory オブジェクトもあります。詳細については、「テレフォニーの概念とコンポーネントについて」を参照してください。

次の例および図では、Active Directory での UM オブジェクト間の関係を示します。

UM Active Directory オブジェクト間の関係

前の図で、Server01、Server02、および Server03 で表される UM サーバーは、企業のデータセンターに存在します。また、これらのサーバーは、Active Directory では UM サーバー オブジェクトとして表されます。さらに、Boston UM ダイヤル プランと New York UM ダイヤル プランという 2 つの UM ダイヤル プランがあります。オフィスごとに 1 つの PBX があります。ただしフォールト トレランスのために、各支社の PBX ごとに 2 つの IP ゲートウェイがあります。最後に、Server01 と Server02 は Boston UM ダイヤル プランのメンバーであり、Server01、Server02、および Server03 はすべて New York UM ダイヤル プランのメンバーです。

New York 支社の PBX に呼び出しが届き、UM サーバーに転送されると、3 つの UM サーバーはすべて呼び出しに応答し、ユーザーのメールボックスにメッセージを配信することができます。これは、これらの UM サーバーがすべて同じダイヤル プランに属しているためです。呼び出しが Boston で受信され、UM サーバーに転送されると、Server01 または Server02 が、Boston ダイヤル プランでユーザーに対する呼び出しに応えることができます。

作成および管理する必要のある重要な Active Directory オブジェクトがいくつかあります。次に、これらのオブジェクトの概要について説明します。

ユニファイド メッセージングの概要

UM ダイヤル プラン

従来のテレフォニー ダイヤル プランでは、ユーザーの内線は 1 つの IP PBX、1 つの PBX、または複数の PBX に構成され、共通の番号付けプランを共有しています。これによりユーザーは、電話番号をすべてダイヤルしなくても、相互の内線電話番号をダイヤルできます。

UM ダイヤル プランはテレフォニー ダイヤル プランと似ています。ネットワークにユニファイド メッセージングを展開するには、UM ダイヤル プランが必要です。

UM ダイヤル プランは、共通のユーザー内線番号を共有する IP PBX または PBX のセットまたはグループを表す Active Directory オブジェクトです。ユニファイド メッセージングの UM ダイヤル プランでは、ユーザーの内線電話番号が一意である必要があります。

テレフォニー ネットワークによっては、複数の PBX と複数のダイヤル プランが存在する場合があります。このようなテレフォニー ネットワークでは、同じ内線番号を持つ 2 人のユーザーが 2 つの別々の UM ダイヤル プランに配置されている場合、同じ内線番号を持つ 2 人のユーザーが存在する可能性があります。2 人のユーザーを別々のダイヤル プランに入れることによって、それらのユーザーの内線番号をユニファイド メッセージング用に一意にすることができます。

次の図は、単一のフォレストと複数の物理サイトを持つ組織で UM ダイヤル プランを使用する方法を示すものです。

複数の物理サイトを持つ組織における単一フォレストでの UM ダイヤル プラン

ダイヤル プランが動作するしくみ

Exchange 2010 コンピューターにユニファイド メッセージング サーバーの役割をインストールした後、呼び出しに応答するには、UM サーバーを少なくとも 1 つの UM ダイヤル プランと関連付ける必要があります。1 つの UM サーバーと複数の UM ダイヤル プランを関連付けることもできます。

UM サーバーと UM ダイヤル プランを関連付けた後、UM IP ゲートウェイを作成し、それを先に作成してある UM ダイヤル プランと関連付ける必要があります。

重要

EMC を使用して UM ダイヤル プランを作成するたびに、UM メールボックス ポリシーも作成されます。UM メールボックス ポリシーには、"<ダイヤル プラン名> の既定のポリシー" という名前が付けられます。

Active Directory で UM ダイヤル プランと UM サーバー オブジェクトを作成して関連付けることによって、UM サーバーが IP ゲートウェイまたは IP PBX からの呼び出しを受信し、UM ダイヤル プランに関連付けられているユーザーに対する着信呼び出しを処理できます。IP ゲートウェイや IP PBX に呼び出しが届くと、その IP ゲートウェイまたは IP PBX によって呼び出しが UM サーバーに転送され、UM サーバーによってユーザーの内線番号と関連付けられた UM ダイヤル プランが照合されます。ダイヤル プランは、着信呼び出しを受信するときに IP ゲートウェイまたは IP PBX によって送信されるパイロット番号から識別されます。PBX または IP PBX で構成されているパイロット番号は、UM ダイヤル プランでサブスクライバー アクセス番号として構成されていることもあります。詳細については、「ユニファイド メッセージング ダイヤル プランについて」を参照してください。

テレフォニー ネットワークとユニファイド メッセージングを統合する場合は、テレフォニー ネットワークと IP ベースのネットワークを接続する IP ゲートウェイまたは SIP が有効な IP PBX が少なくとも 1 台必要です。組織の個々の IP ゲートウェイまたは IP PBX は、Active Directory では UM IP ゲートウェイ オブジェクトによって表されます。

ユニファイド メッセージングの概要

UM メールボックス ポリシー

UM メールボックス ポリシーは、ユーザーに対してユニファイド メッセージングを有効にするときに必要です。UM が有効なユーザーに対して UM の構成設定を適用および標準化する場合に便利です。UM メールボックス ポリシーを作成し、UM が有効なメールボックスの集合に、ポリシーやセキュリティ設定の共通セットを適用します。ユニファイド メッセージング メールボックス ポリシーは、次のような UM 設定を UM が有効なユーザーに対して設定するために使用します。

  • PIN ポリシー

  • ダイヤルの制限

  • その他の一般的な UM メールボックス ポリシー プロパティ

たとえば、上級管理者などの UM が有効なユーザーの特定のグループについて、ユーザーをロックアウトするログオン失敗の最大回数を減らすことで、PIN セキュリティのレベルを高める、UM メールボックス ポリシーを作成できます。

UM メールボックス ポリシーは、Active Directory 内の [構成] コンテナーでシェルまたは EMC を使用して作成されます。既定では、UM ダイヤル プランを作成するたびに UM メールボックス ポリシーが 1 つ作成されます。新しい UM メールボックス ポリシーは UM ダイヤル プランと関連付けられ、ダイヤル プラン名の一部が UM メールボックス ポリシーの表示名で使用されます。ただし、組織のニーズに基づいて、追加の UM メールボックス ポリシーを作成できます。ユーザーのユニファイド メッセージングを有効にするために必要な UM メールボックス ポリシーは 1 つですが、追加の UM メールボックス ポリシーを作成し、共通のメールボックス ポリシー設定のセットを、他のユーザー グループに適用できます。

メールボックスに対してユニファイド メッセージを有効にするときには、UM が有効な各ユーザーのメールボックスが、単一の UM メールボックス ポリシーにリンクされている必要があります。UM メールボックス ポリシーを作成した後で、UM が有効な 1 つ以上のメールボックスをその UM メールボックス ポリシーにリンクします。これにより、その UM メールボックス ポリシーに関連付けられた UM が有効なユーザーに対して、PIN の最低桁数やログオンの最大試行回数などの PIN セキュリティ設定を制御できます。必要であれば、UM が有効なメールボックスの同じグループまたは異なるグループについて、メッセージ テキストの設定やダイヤルの制限などを制御することもできます。

UM が有効な複数のユーザーを、単一の UM メールボックス ポリシーにリンクできます。ただし、1 人のユーザーを関連付けることができる UM メールボックス ポリシーは 1 つだけです。新しい UM メールボックス ポリシーを作成してそれを UM ダイヤル プランにリンクすると、定義されている UM メールボックス ポリシーの設定が、UM が有効なユーザーに対して適用されます。UM ダイヤル プランおよび UM メールボックス ポリシーで定義されている設定は、UM メールボックス ポリシーに関連付けられている、すべての UM が有効なユーザーに適用されます。

次の図は、3 つの異なるグループに対するダイヤル制限および PIN セキュリティ設定を制御する、UM メールボックス ポリシーの作成方法を示しています。

UM メールボックス ポリシーの例

ユニファイド メッセージングの概要

UM IP ゲートウェイ

UM IP ゲートウェイは、ユニファイド メッセージングと相互運用できる物理 IP ゲートウェイ ハードウェア デバイス、IP PBX、または他の SIP サーバーを表す Active Directory オブジェクトです。IP ゲートウェイ、IP PBX、または SIP サーバーを UM 呼び出しの処理に使用するには、Active Directory でこれらが UM IP ゲートウェイ オブジェクトによって表されている必要があります。

PBX、IP ゲートウェイ、および IP PBX にはさまざまな種類があり、製造元も多く存在しますが、IP ゲートウェイ コンポーネントの構成は、基本的には以下の 2 種類となります。

  • IP PBX   単一のデバイス

  • PBX (レガシ) および IP ゲートウェイ   2 つの異なるコンポーネント

ユニファイド メッセージングをサポートするために、テレフォニー ネットワークをデータ ネットワークに接続する際に一方または両方の種類の IP デバイス構成が使用されます。

UM IP ゲートウェイは、1 つ以上の Active Directory UM ハント グループと関連付けられます。UM IP ゲートウェイ オブジェクトと UM ハント グループ オブジェクトの組み合わせにより、IP ゲートウェイ ハードウェア デバイスと UM ダイヤル プランの間のリンクが確立されます。

UM IP ゲートウェイの有効化と無効化

既定では、UM IP ゲートウェイは作成後、有効な状態のままとなっています。ただし、UM IP ゲートウェイを有効または無効にすることができます。UM IP ゲートウェイを無効にすると、2 つの無効モードのいずれかになります。最初の無効モードでは、関連付けられたすべての UM サーバーが既存の呼び出しを切断します。2 番目の無効モードでは、UM IP ゲートウェイと関連付けられた UM サーバーが、IP ゲートウェイからの新しい呼び出しの処理を停止します。

注意

IP ゲートウェイを使用して呼び出しを処理できるようにするには、UM IP ゲートウェイを 1 つ以上の UM ダイヤル プランと関連付ける必要があります。また、1 つ以上の UM サーバーを 1 つ以上の UM ダイヤル プランと関連付ける必要があります。UM IP ゲートウェイが削除されると、その UM IP ゲートウェイに関連付けられている UM サーバーは、IP ゲートウェイまたは IP PBX からの新しい呼び出し要求を受け付けたり処理したりすることができなくなります。

ユニファイド メッセージングの概要

UM ハント グループ

テレフォニー ネットワークにおいて、ハント グループは、1 つの単位としてグループ化された内線番号のセットであると定義されます。着信呼び出しが受信されると、PBX や IP PBX はハント グループを使用して、呼び出しの受信に使用できる利用可能もしくは空いている回線、内線、またはチャネルを "ハント" します。

ハント グループは、特定の単位で発着信される呼び出しを効率的に配信するために使用されます。たとえば、1 台の PBX または IP PBX を、営業部の 10 個の内線番号を処理するように構成することができます。10 個の営業の内線番号が、1 つのハント グループとして構成されます。

PBX や IP PBX での使用向けに、空いている回線、内線、またはチャネルの特定方法を定義する複数のアルゴリズムや方式が作成されています。これらには次のようなものがあります。

  • ラウンド ロビン

  • 最もアイドル時間が長い

  • 最小の番号から開始

PBX または IP PBX にハント グループを作成して定義すると、着信呼び出しの受信時に、電話をした呼び出し元がビジー信号を受け取る可能性を低くすることができます。

UM ハント グループについて

UM ハント グループは、着信呼び出しの発信元である PBX ハント グループまたは IP PBX ハント グループの定義に使用されるもので、UM システムの操作上非常に重要です。UM ハント グループは、既存の PBX ハント グループまたは IP PBX ハント グループを表します。UM ハント グループは、UM IP ゲートウェイと UM ダイヤル プランの間の接続またはリンクとして機能します。1 つの UM ハント グループは、少なくとも 1 つの UM IP ゲートウェイおよび 1 つの UM ダイヤル プランに関連付けられます。

物理的な PBX または IP PBX でハント グループに定義されるパイロット番号は、UM ハント グループにも定義される必要があります。パイロット番号は、ハント グループを指す電話番号であり、ユニファイド メッセージング サーバーにルーティングされる呼び出しの電話番号です。パイロット番号は、提供された情報と着信呼び出しを、メッセージの SIP ヘッダーを使用して照合するために使用されます。パイロット番号を使用すると、UM サーバーは、音声メッセージを正しくルーティングできるように、正しいダイヤル プランを使用して呼び出しを解釈できます。UM ハント グループで定義されているパイロット番号と正しく一致しない着信呼び出しは応答されず、着信呼び出しのルーティングが失敗するため、UM ハント グループを正しく構成することは非常に重要です。

UM ハント グループを作成する際に、UM ダイヤル プラン内で指定したすべての UM サーバーが IP ゲートウェイと通信できるようにしています。UM ハント グループを削除すると、関連付けられている IP ゲートウェイは、指定のパイロット番号を使用しての呼び出しを行わなくなります。UM ハント グループがなくなると、IP ゲートウェイは着信呼び出しを処理できなくなります。

UM 自動応答

ユニファイド メッセージングを使用すると、組織のニーズに応じて、1 つ以上の UM 自動応答を作成することができます。組織は、UM 自動応答を使用して、外部や内部から電話を掛けてきた発信者が、UM 自動応答メニュー システムを使用して社内のユーザーや組織内の部署を見つけて通話したり、呼び出しを転送したりできるような音声メニュー システムを作成することができます。

匿名や認証されていないユーザーが外線番号を呼び出したり、社内の発信者が定義済みの内線番号を呼び出したりした場合、目的の相手先と通話するための支援や、組織内のユーザーを見つけてからそのユーザーと通話するための支援となる一連の音声プロンプトが提供されます。UM 自動応答は、音声プロンプト、つまり .wav ファイルの集まりであり、ユニファイド メッセージングを備えた組織に電話を掛けてきた発信者に対しては、オペレーターではなくこの音声プロンプトが応答します。UM 自動応答によって、発信者はメニュー システムを操作したり、呼び出しを行ったり、DTMF や音声入力を使用してユーザーを見つけたりできます。ただし、自動音声認識 (ASR) または音声入力を使用するには、UM 自動応答で ASR を有効にしておく必要があります。

重要

一部 (特に東アジア地域) の会社では、事務所の電話の電話キーに文字が表示されていない場合があります。このため、キー マッピングの動作知識がないと、DTMF インターフェイスを使用する名前入力機能を使用することはほとんど不可能です。ユニファイド メッセージングでは、既定で E.161 キー マッピングが使用されます。たとえば、2=ABC、3=DEF、4=GHI、5=JKL、6=MNO、7=PQRS、8=TUV、9=WXYZ などです。"Mike1092" など、文字と数字の組み合わせが入力されると、数値の桁はそれ自体にマッピングされます。"Mike1092" という電子メール エイリアスを正確に入力するには、「64531092」と押す必要があります。また、電話には A ~ Z と 0 ~ 9 以外の文字に対応するボタンはありません。したがって、これらの文字は入力しないでください。たとえば、"mike.wilson" という電子メール エイリアスの場合、「6453945766」と入力します。このように、11 文字を入力する必要がある場合でも、ピリオド (.) に対応する数字がないため、10 桁の数字のみが入力されます。

UM 自動応答:

  • 企業の案内応答または通知案内応答を提供します。

  • メニュー オプションを別の自動応答にリンクして複数のレベルにできるよう、独自の企業案内メニューを提供します。

  • 発信者が組織のディレクトリで名前を検索できるようなディレクトリ検索機能を提供します。

  • 発信者は、組織のメンバーの電話に接続したり、目的の相手にメッセージを残したりすることができます。

Active Directory では、作成された各 UM 自動応答はオブジェクトとして表されます。Active Directory で作成できる UM 自動応答の数に制限はありません。各自動応答は、無制限の数の内線番号をサポートすることができます。UM 自動応答は、ただ 1 つの UM ダイヤル プランと関連付けられます。ただし、UM 自動応答は他の UM 自動応答を参照したり、他の UM 自動応答にリンクしたりすることができます。

外線番号または内線電話番号から受信した着信呼び出しは、UM サーバーによって処理され、作成された UM 自動応答に送信されます。UM 自動応答はシステム管理者によって、録音済みの音声 (.wav) ファイルを使用するよう構成されますが、発信者は電話口から再生されたその録音済みの音声 (.wav) ファイルの指示に従って、UM メニュー システムを操作できるようになっています。UM 自動応答を構成するときは、すべての .wav ファイルを組織のニーズを満たすようにカスタマイズすることができます。ユニファイド メッセージングでのカスタム プロンプトの詳細については、「ユニファイド メッセージング オーディオ プロンプトについて」を参照してください。

UM 自動応答のメッセージ フローの詳細については、「ユニファイド メッセージング自動応答の呼び出し処理」を参照してください。

ユニファイド メッセージングの概要

複数の言語を使用する自動応答

別の言語を使用する自動応答を発信者に提供する必要がある場合があります。UM 自動応答の言語設定を使用すると、自動応答のプロンプトに使用する既定の言語を構成できます。自動応答に既定のシステム プロンプトを使用している場合、自動応答が着信呼び出しに応答したときに発信者が聞くプロンプトには、既定のプロンプト言語が使用されます。この言語設定は、ユニファイド メッセージング サーバーの役割がインストールされている場合に聞こえる既定のシステム プロンプトのみに影響を与えます。この設定は、自動応答で構成されているカスタム プロンプトには影響を与えません。自動応答の既定の言語は、インストールされている Exchange 2010 のバージョンに基づいて選択されます。

英語 (米国) 版の Exchange 2010 をインストールした場合は、UM 自動応答に構成できる言語は英語 (米国) だけです。ただし、日本語版など、ローカライズ版の Exchange 2010 をインストールした場合は、既定の言語として日本語または英語 (米国) を使用するように、作成する自動応答を構成できます。UM サーバーに追加の UM 言語パックをインストールすると、自動応答で他の既定の言語オプションを使用できるようになります。

注意

その言語の .msi ファイルを使用して UM 言語パックをインストールすることはできません。

たとえば、米国を拠点とし、発信者に英語 (米国)、スペイン語、フランス語のオプションを提供するメニュー システムが必要なビジネスに携わっている場合は、必要な UM 言語パックを最初にインストールする必要があります。このようなケースでは、英語 (米国) 版の Exchange 2010 をインストールしていた場合、スペイン語とフランス語の UM 言語パックをインストールします。ただし、UM 自動応答は同時に複数の言語を扱うことはできないため、英語 (米国) を使用するように構成されたメインの自動応答を作成し、次に英語 (米国)、スペイン語、フランス語の各言語ごとに 1 つの自動応答を作成します。その後、各言語で作成した別の自動応答にアクセスするための適切なキー マッピングを持つメインの自動応答を構成します。この例では、メインの自動応答が着信呼び出しに応答し、"こちらは Contoso, Ltd です。英語の場合は、1 のボタンを押すか、「1」と言ってください。スペイン語の場合は 2 のボタンを押すか、「2」と言ってください。フランス語の場合は 3 のボタンを押すか、「3」と言ってください" という応答が発信者に聞こえます。

自動応答の例

次の例では、UM 自動応答をユニファイド メッセージングと一緒に使用する方法について示します。

  • 例 1 : Contoso, Ltd. という会社では、外部顧客が 3 つの外線番号425-555-0111 (コーポレート オフィス)、425-555-2222 (製品サポート)、および 425-555-3333 (営業) を使用できます。人事部、管理部、および経理部には内線電話番号があり、これらの番号へはコーポレート オフィス UM 自動応答からアクセスする必要があります。

    このシナリオをサポートする UM 自動応答構造を作成するためには、3 つの UM 自動応答を作成して構成します。それぞれに適切な外線番号を割り当てます。それら以外にも、コーポレート オフィス内に各部門用の 3 つの UM 自動応答をそれぞれ作成します。その後、各 UM 自動応答を、案内応答の種類やその他の操作案内情報など、各部門の要件に基づいて構成します。

    次の図は、例 1 では UM 自動応答をどのように利用できるかをグラフィカルに表したものです。

    複数の外線番号がある場合に複数の UM 自動応答を構成する方法

  • 例 2 : Contoso, Ltd. という企業では、外部の顧客はこの企業の 1 つの代表番号 (425-555-1000) を呼び出します。外部からの発信者が代表番号を呼び出すと、UM 自動応答が応答し、発信者に対して次のように案内します。「こちらは Contoso, Ltd. でございます。1 のボタンを押すか「1」と言うと、この電話は管理部門に接続されます。2 のボタンを押すか「2」と言うと、この電話は製品サポートに接続されます。3 のボタンを押すか「3」と言うと、この電話は企業案内情報に接続されます。0 のボタンを押すか「ゼロ」と言うと、この電話はオペレーターに接続されます。」このシナリオをサポートするような UM 自動応答構造を作成するには、呼び出しを適切な内線番号にルーティングするようにカスタマイズされた内線番号を持った UM 自動応答を作成します。

    次の図は、例 2 では UM 自動応答をどのように利用できるかをグラフィカルに表したものです。

    単一の外線番号がある場合に複数の UM 自動応答を構成する方法

ユニファイド メッセージングの概要

UM 通話応答

ここでは、ユニファイド メッセージングが、さまざまな着信呼び出しシナリオでメッセージ フローを処理するしくみについて説明します。

ユニファイド メッセージングは、次の種類の着信呼び出しを処理します。

  • 音声

  • Outlook Voice Access

  • 電話での再生

  • 自動応答

ユニファイド メッセージングは、Active Directory を使用して、着信呼び出しをルーティングします。通話応答が正しく動作するためには、UM が有効な各受信者の内線電話番号が Active Directory の一覧に記載されている必要があります。受信者の内線番号は、Active Directory に表示され、ユーザーの UM が有効な Exchange メールボックスに構成されている内線番号にマップされます。UM サーバーが呼び出しに応答すると、Active Directory 参照が実行され、UM が有効な適切な受信者が検索されて、メッセージはその受信者のメールボックスにルーティングされます。

メッセージ フロー

ユニファイド メッセージングのメッセージ フローとは、UM サーバーで受信されたメッセージが、Exchange 2010 組織内でルーティングされる処理のことです。

注意

以前のバージョンの Microsoft Exchange では、ブリッジヘッド サーバー間でメッセージをルーティングするために、ルーティング グループが使用されていました。Exchange 2007 および Exchange 2010 では、ブリッジヘッド サーバーはハブ トランスポート サーバーと呼ばれています。Exchange 2007 や Exchange 2010 には、ルーティング グループはありません。

たとえば、受信音声メッセージを含む着信呼び出しのシナリオでは、UM サーバーは SMTP トランスポートを使用して、音声メッセージをハブ トランスポート サーバーの役割がインストールされている Exchange 2010 サーバーに送信します。複数のハブ トランスポート サーバーを含むルーティング シナリオでは、受信ボイス メール メッセージは最初に最も近いハブ トランスポート サーバーに送信され、次に、UM が有効なメールボックスを含む適切なメールボックス サーバーにルーティングされます。

注意

すべての着信メッセージが UM が有効な受信者に転送され、配信されたことを確認するために、UM サーバーはスプーリングまたは再試行のアルゴリズムを使用します。UM サーバーは、30 秒ごとにハブ トランスポート サーバーへの接続を試行し、UM サーバーに格納されているすべてのメッセージを送信します。

ユニファイド メッセージングの概要

音声呼び出しの処理

Exchange 2010 組織に対しては、発信者が組織の内外いずれの場合でも、音声呼び出しを行うことができます。発信者が UM が有効なユーザーの内線電話番号を呼び出したときに、そのユーザーが呼び出しに応答できない場合は、PBX によって着信呼び出しが IP ゲートウェイに転送またはルーティングされ、続いて UM サーバーに転送またはルーティングされます。IP PBX を使用する UM システムでは、IP PBX が受信メッセージを UM サーバーに転送します。IP ゲートウェイまたは IP PBX は、受信オーディオ ストリームが音声メッセージの場合は RTP に変換します。続いて、IP データのストリームが UM サーバーに渡されます。UM サーバーは、呼び出しを受信した後、メッセージを処理してメッセージのルーティング方法を決定します。

次の図は、Exchange 2010 組織での音声による受信メッセージのメッセージ フローを示します。

Exchange 2010 組織での音声による受信メッセージのメッセージ フロー

この例では、呼び出しが PBX に到着し、UM パイロット番号に転送されます。パイロット番号は、IP ゲートウェイへのハント グループにマッピングされています。IP ゲートウェイは、UM サーバーに対する呼び出しを表しています。UM サーバーは、呼び出しの宛先、発信者、呼び出しがリダイレクトされた理由などの、SIP 招待ヘッダー情報を受信します。UM サーバーは、呼び出された番号を検索して、呼び出されたユーザーと、そのユーザーが属しているダイヤル プランを識別します。そこから、UM サーバーは Active Directory を見て、ユーザーに対してユニファイド メッセージングが有効になっているかどうかを確認します。ユーザーに対してユニファイド メッセージングが有効な場合、発信者はユーザーの案内応答を受け取ります。ユーザーの案内応答は、メールボックスに安全に格納されています。これにより、ユーザーは自分の案内応答を管理できます。発信者は、ユーザーのボイス メール案内応答に到達した後で、ユーザーのメールボックスに送信される音声メッセージを残すことができます。UM サーバーは、メッセージを記録し、ハブ トランスポート サーバーを探して、UM が有効なユーザーのメールボックスを含むメールボックス サーバーに音声メッセージを送信します。

UM 自動応答メッセージの処理

外部または匿名の発信者が、外線番号を使用して電話を掛けた場合、または内部の匿名の発信者が内線番号に電話を掛けた場合、UM メニュー システム内を移動するために役立つ音声プロンプトが提示されます。UM 自動応答は一連の音声プロンプト、つまり .wav ファイルであり、ユニファイド メッセージングを備えた組織に電話を掛けてきた発信者に対しては、人間のオペレーターや受付の代わりにこの音声プロンプトが応答します。ユニファイド メッセージングでは、組織のニーズに応じて 1 つまたは複数の自動応答を作成できます。

自動応答のメッセージ フロー

呼び出しが UM サーバーによって受信されると、UM サーバーはライトウェイト ディレクトリ アクセス プロトコル (LDAP) クエリを Active Directory ドメイン コントローラーに対して実行し、着信呼び出しを処理する方法を判断します。

次の図は、UM 自動応答が Exchange 2010 組織で使用されるときの、メッセージ フローを示したものです。

UM 自動応答のメッセージ フロー

組織に対して自動応答を作成して有効にし、UM ダイヤル プランと関連付けると、自動応答は呼び出しの処理を開始できます。自動応答に対する呼び出しは、受信されると、最初に IP ゲートウェイによって処理され、適切なハント グループにマッピングされます。その後、呼び出しは UM サーバーに送信されます。UM サーバーは、Active Directory で自動応答オブジェクトを検索し、呼び出しを処理するために適切な自動応答を提供します。

ユニファイド メッセージングの概要

UM での Outlook Voice Access 呼び出し処理

ユニファイド メッセージングを利用すると、UM が有効なユーザーは、標準のアナログ電話、デジタル電話、または携帯電話を使用して、自分の電子メール、ボイス メール、連絡先、予定表の情報にアクセスできます。UM が有効なユーザーは、Outlook Voice Access を使用して次の操作を行うことができます。

  • 新着および保存されている電子メール メッセージとボイス メール メッセージを聞く。

  • 電子メール メッセージおよびボイス メール メッセージの転送、応答、保存、および削除を行う。

  • 予定表を操作する。

  • グローバル アドレス一覧または個人用連絡先で人を探す。

  • 音声メッセージを送信する。

  • 自分の PIN、名前、または案内応答を変更する。

Outlook Voice Access のメッセージ フロー

UM サーバーによって受信された、Outlook Voice Access ユーザーからの着信呼び出しは、ユーザーがメールボックスにアクセスできるようにするため、メールボックス サーバーに対してのみルーティングされます。一方、会議のスケジュールの変更などのように、Outlook Voice Access を使用して送信されるメッセージの場合は、受信者のメールボックスにルーティングされる前に、UM サーバーと同じ Active Directory サイト内のハブ トランスポート サーバーに送信されます。

次の図は、Exchange 2010 組織での着信呼び出しおよびサブスクライバーまたは UM が有効なユーザーが行ったメッセージ送信のフローを示しています。

Exchange 2010 組織内の Outlook Voice Access メッセージ フロー

ユーザーが Outlook Voice Access を呼び出すと、PBX が UM の番号に対する呼び出しを受信し、IP ゲートウェイが UM サーバーに呼び出しを提示します。次に UM サーバーは Active Directory のユーザー アカウント情報を検索し、そのユーザーに関する情報を収集します。この情報には、ダイヤル プラン情報が含まれています。ユーザーが自分の内線から電話を掛けると、PIN の入力を求められます。UM サーバーはメールボックス サーバーにアクセスして、ユーザーを認証します。その後、UM サーバーとメールボックス サーバーは、要求に応じて、ユーザーに情報を返します。

ユニファイド メッセージング サービスとコンポーネントの概要

Exchange 2010 を実行しているコンピューターでユニファイド メッセージング (UM) サーバーの役割をインストールすると、UM 固有のコンポーネントおよびサービスがインストールされます。セットアップによってインストールされるユニファイド メッセージング サービスおよびコンポーネントによって、ユニファイド メッセージング サーバーは、着信音声呼び出しに応答して処理できるようになります。また、エンド ユーザーは Outlook Voice Access を使用したり、ユニファイド メッセージング システムを呼び出したときに UM 自動応答を聞いたりすることによって、ユニファイド メッセージング システムを操作できるようになります。

Exchange 2010 SP1 から、UM サーバーは Unified Communications Managed API v. 2.0 (UCMA) にその基盤となる SIP 信号とメディア、および音声処理を依存しています。この依存のため、Exchange 2010 UM SP1 のインストールまたはアップグレードの前に、UCMA プラットフォームおよび前提条件を UM サーバーにインストールする必要があります。

次の図は、ユニファイド メッセージングのコンポーネント間の関係を示しています。

ユニファイド メッセージングのアーキテクチャ

ユニファイド メッセージング サービス

Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスは、ネットワークにユニファイド メッセージング サービスを提供する 2 つのサービスのいずれかです。Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスは、以下の機能を実行します。

  • Active Directory からダイヤル プラン構成を取得する

  • Msexchangeum.config ファイルから、UM ワーカー プロセスを監視するための構成情報を読み込む

  • UM ワーカー プロセス マネージャーを初期化し、UM ワーカー プロセスを起動します。

  • SIP エンドポイントを登録します。

Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスは、最初にすべての着信接続を受け付けた後、その要求を着信要求を処理する UM ワーカー プロセスに再ルーティングします。さらに、Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスは、作成されたすべての UM ワーカー プロセスを監視し、UM ワーカー プロセスが正しく機能していることを確認します。UM ワーカー プロセスが応答しなくなると、Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスはその UM ワーカー プロセスを停止し、新しい UM ワーカー プロセスを作成して置き換えます。

注意

既定では、各 UM ワーカー プロセスは、7 日、つまり 604,800 秒ごとにリサイクルされます。この設定は、V14\bin\Msexchangeum.config ファイルにあります。

Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスと Microsoft Exchange 音声認識エンジン サービスとが連携することで、ユニファイド メッセージングのすべてのテレフォニー機能が実装されます。Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスは呼び出し制御を処理し、Unified Communications Managed API 2.0 と対話して Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスと IP ゲートウェイや IP PBX などの SIP が有効なテレフォニー デバイスとの間の SIP 信号情報でネゴシエートされた受信メディア ストリームを処理します。Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスによって着信呼び出しが開始されると、以下のイベントが発生します。

  1. Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスによって呼び出しセッションが開始されます。

  2. Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスは呼び出しを UM ワーカー プロセスにリダイレクトします。

  3. UM ワーカー プロセスは、Unified Communications Managed API 2.0 によるメディア セッションの確立を要求し、次に、UM ワーカー プロセスは呼び出し元にメディア情報を中継します。

  4. Unified Communications Managed API 2.0 は RTP ストリームに UDP ポートを提供します。

  5. UM ワーカー プロセスは、SIP 信号情報を使用して、Unified Communications Managed API に対して、RTP メディア ストリームが不要になったときに、呼び出しセッションを終了するように通知します。

UM ワーカー プロセス

UM ワーカー プロセスは、Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスの起動時に作成されるプロセスです。UM ワーカー プロセスは、Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスが受け取ったすべての着信要求と発信要求を処理します。

UM ワーカー プロセス マネージャーも、Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスのコンポーネントです。UM ワーカー プロセス マネージャーは、作成されるすべての UM ワーカー プロセスの作成および監視を処理します。UM ワーカー プロセス マネージャーは、Msexchangeum.config ファイルにある構成設定に基づいて UM ワーカー プロセスの新しいインスタンスを作成し、作成したプロセスの状態を監視します。新しい着信呼び出しが届くと、UM ワーカー プロセス マネージャーは、呼び出しのリダイレクト先として適切な UM ワーカー プロセスのインスタンスを決定します。次に、UM ワーカー プロセスは、Unified Communications Managed API 2.0 コンポーネントと対話して、着信要求および発信要求を正しく処理します。UM ワーカー プロセスは、以下の起動タスクを処理します。

  • 実行時管理オブジェクトの割り当て

  • Msexchangeum.config からのユニファイド メッセージング構成の読み込み

  • Unified Communications Managed API 2.0 でのプロセスの登録

  • 簡易メール転送プロトコル (SMTP) メッセージ送信の初期化

Unified Communications Managed API 2.0

Exchange 2010 SP1 から、ユニファイド メッセージング サーバーの役割は Microsoft Unified Communications Managed API v. 2.0 (UCMA) に依存しています。UCMA はユニファイド メッセージングのアーキテクチャを簡略化し、他の Windows ベースまたは Exchange ベースのサービスを必要としません。UCMA は、次の領域に分類できます。

  • SIP 信号   UCMA v. 2.0 での SIP 信号は、UCMA v. 1.0 での SIP 信号とよく似ています。

  • RTP メディア   UCMA は、RTP メディア ストリームへのアクセスを提供します。

  • コラボレーション   プレゼンスと会議のサポートを提供します。

UCMA v. 2.0 は、開発者が拡張プレゼンス情報、インスタント メッセージング、電話およびビデオ通話、ボイス メッセージング、音声ビデオ会議へのアクセスおよび制御を提供するアプリケーションを構築できるマネージ コード プラットフォームです。テキスト ベースおよび音声ベース (音声テクノロジに対応) の会話とコラボレーションの両方が可能です。UCMA v. 2.0 は、Microsoft Office Communicator 2007 R2、Office Communications Server 2007 R2、または Microsoft Lync Server 2010 (Office Communications Server の次世代製品) および Exchange 2010 を対象とする、サーバー側の中間層アプリケーション開発のサポートを目的としています。これには、SIP スタック、メディア スタック、自動音声認識 (ASR) と音声合成 (TTS) により生成された音声合成の両方に対応する強力な音声エンジンが含まれます。

UCMA v. 2.0 を使用して、ビジネス ソフトウェアおよびプロセスに通信機能を追加することができます。また、音声自動応答アプリケーションや自動エージェントなどの音声テクノロジに対応した受信アプリケーションだけでなく、警告、通知、調査などの送信アプリケーションを作成することもできます。UCMA v.2.0 は Communications Server 2007 R2 で使用可能なプレゼンス情報へのアクセスを提供し、Microsoft 拡張プレゼンス情報を使用してユーザー間の通信を効率化する役割エージェントの作成に使用できます。

UCMA v.2 は、スキルに基づくルーティングを行う自動着信分配などのアプリケーション、会議のアクセス制御などの会議サービス、他の通信ネットワークや他の音声自動応答プラットフォーム、Microsoft ASR および TTS エンジンを使用する音声認識サーバーなどとのインターフェイスとなるカスタム クライアント ゲートウェイに関する、より高度な開発者シナリオを可能にします。

UCMA プラットフォームは Microsoft Exchange 音声認識エンジン サービスおよび音声認識エンジン サービス ワーカー プロセス (SESWorker.exe) に置き換わるもので、次のことを制御します。

  • DTMF (タッチトーン) インターフェイス

  • ASR、これは Outlook Voice Access の音声ユーザー インターフェイス (VUI) で使用されます。

  • TTS エンジン、これは電子メール、ボイス メール、および予定表アイテムを読み上げ、発信者に対してメニュー プロンプトを再生します。

UCMA v. 2.0 はユニファイド メッセージングの次の機能もサポートします。

  • ASR による入力認識。

  • DTMF (タッチトーン) による入力認識。

  • TTS 変換処理。

  • 電子メール メッセージおよびボイス メール メッセージの録音。

  • ユーザーに対する電子メール メッセージおよびボイス メール メッセージの再生。

UCMA とユニファイド メッセージングの統合の結果、UM と Microsoft Lync Server 2010 を統合すると次のような利点があります。

  • ユニファイド メッセージングは QoE (Quality of Experience) データを Lync Server 2010 Quality of Experience Monitoring (QMS) サーバーに報告します。これは社内および社内外にまたがる統合環境の両方で使用可能です。

  • UM サーバーへの最初の呼び出しが、インターネットに接続しているエンタープライズ ボイス ユーザーから行われている場合は、UM が最初の着信呼び出しをドロップすることはありません。

以前のバージョンの Office Communications Server では、Office Communications Server プールに関連付けられた A/V エッジ リソースは、特定の呼び出しに対し特定の UM サーバーと通信しませんでした。これにより、メディア品質が最適とならない場合がありました。Exchange 2010 SP1 では、UM サーバーごとに、特定の UM サーバーとの間のすべての呼び出しに使用される必要のある、Office Communications Server プールおよび関連付けられた A/V エッジ サーバー リソースを設定することができます。

UCMA の前提条件

Exchange 2010 SP1 では、ユニファイド メッセージング サーバーの役割は次のものに依存し、SP1 のインストールの前にこれらをインストールする必要があります。

Windows リモート管理 (WinRM) 2.0 および Windows PowerShell V2 (Windows6.0-KB968930.msu) - Windows 管理フレームワークのコア パッケージ (Windows PowerShell 2.0 および WinRM 2.0)

UCMA の詳細については、「UCMA 2.0 コア アーキテクチャ」を参照してください。

ユニファイド メッセージングで使用される文章校正ファイルの詳細については、「自動音声認識のディレクトリ参照について」を参照してください。

サービス ポート

Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスおよび UM ワーカー プロセスは、複数の伝送制御プロトコル (TCP) およびユーザー データグラム プロトコル (UDP) のサービス ポートを使用して、IP ゲートウェイと通信します。Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスおよび UM ワーカー プロセスでは、TCP 上のセッション開始プロトコル (SIP) が使用されます。既定では、Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスは、セキュリティで保護されていないモードでは TCP ポート 5060 で接続要求を待機し、相互トランスポート層セキュリティ (相互 TLS) を使用する場合は TCP ポート 5061 で接続要求を待機します。作成された各 UM ワーカー プロセスは、ポート 5065 と 5067 (セキュリティで保護しない場合) および 5066 と 5068 (セキュリティで保護する場合) で接続要求を待機します。ただし、IP ゲートウェイまたは IP PBX がリアルタイム転送プロトコル (RTP) トラフィックを音声認識エンジン サービス ワーカー プロセスに送信するときには、IP ゲートウェイまたは IP PBX は 1024 ~ 65535 の範囲の有効な UDP ポートを使用します。

TCP 制御ポートは、ユニファイド メッセージング サーバーでも使用されます。UM ワーカー プロセスが作成されたときに、Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスは適切な構成オプションを UM ワーカー プロセスに渡します。送信される構成オプションには、Microsoft Exchange ユニファイド メッセージング サービスと UM ワーカー プロセスの間の通信で使用される TCP 制御ポート番号のパラメーターが含まれます。選択される TCP 制御ポートは、TCP ポート 16,000 ~ 17,000 の範囲です。

ユニファイド メッセージングの概要

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